Phinlodaのいつか読んだ本

実際に読んでみた本の寸評・奇評(笑)

新装版 日本人を考える 司馬遼太郎対談集 (3)

今日は司馬遼太郎さんの「日本人を考える」から紹介する。2021年4月7日に「(つづく)」と書いたきり放置していた続きだ。

今回の対談の相手は犬養道子さんで、タイトルは「〝あっけらかん民族〟の強さ」。1969年12月の対談である。

個人的には強く共感しているのだが、日本という国は相対的だという。

ですから、私自身、絶対的なものを信じている人には異邦人を感じてしまう。
(p.42、司馬)

知恵袋や2ちゃんねるで大学の序列を捏造して拡散させようとしている人たちを見れば成程と合点がいく。推しの大学があると、それより低い大学を並べてマウントを取ろうとする。悪質なものは順位を捏造してくるから油断できない。

次の誤訳の件はちょっと面白い。安政仮条約の批准の時の話。日本は正使、副使、お目付の最低三人で行く慣習があって、

お目付とは何かといわれて、スパイと翻訳したらしい(笑)。向こうじゃ、日本人はスパイをつれてきやがった(笑)。お目付というのは源平の時代からあるんです。
(p.45、司馬)

正しい訳はどうなんだ。今はスパイと言われたら SPY×FAMILY の印象が強くて、ちょっとイメージが変わった。そういえば昨日スーパーでアーニャカレーを売ってたような気がするが。今日はアーニャアメを食べた。

宗教が軽く浅く受け入れられている現実に対して、

つまり日本人には、どうしようもなくあっけらかんとしたところがある。面白い民族ですな。日本人というのは。
(p.54、司馬)

この感想も分かる。ハロウィンとクリスマスの後、年が明けると神社に参拝して、お盆にはお坊さんを呼んだりして平気なのだ。

軍事に関しては、当時と今ではちょっと変化があるのかもしれない。そういえば先の日曜日も新宿で誰かが反戦的な演説をしていた。

武装をやるには逆に国民皆兵になる、老若とも簡単な軍事訓練をうけなきゃいけないし、全国津々浦々まで国を守る意識で満たさなきゃいけない。
(p.56)

今のウクライナのような状況になる。有事の際に誰も守ってくれないから自分で守らないといけない。他国が攻めてきたら無条件に降伏して好きに略奪させて殲滅されても構わない、という考え方もあることはあるが。

新宿の人も、武力行使ではなく対話で解決しろと力説していた。ミサイルが飛んできた時に話せばミサイルは分かってくれるのだろうか。

明治以後の国内騒乱は、みんな外交問題ばかりですね。(略) いま歴史の中にそれをふりかえってみると、衆愚というのはしょうがないわいという感じだけでしょう。
(p.58、司馬)

これはポーツマス条約の話。いい落としどころで終戦させたのに、日本国民が勝ったのに取り分が少ないといって騒ぎになったのである。最初から相手はマウント取ってくるから、なかなか外交は難しい。

ヨーロッパには、建て前を説明する建て前もあるわけで(笑)、それをまた聞くという建て前もあるわけですよ。だから、談義のプロセスを大切にする議会制度の政治が根づく下地があったともいえる。ところが日本人は十七文字かなんかでパッとわかっちゃうでしょう。そういうところ、議会政治や外交なんかで弱みになるんですね。
(p.63、犬養)

建前がメタなのが面白い。何か違うけど分かるような気がする。続けていいのかどうかよく分からないが、とりあえず…

(つづく)


新装版 日本人を考える 司馬遼太郎対談集
司馬 遼太郎 著
文春文庫
ISBN: 978-4167901257