今日はフィリップ・K・ディックさんの「アジャストメント」を紹介します。
SF短編集。大御所です。フィリップ・K・ディックさんといえば言わずと知れた「アンドロイドは電気羊の夢を見るか」が超有名。
時間もないので今日は一言だけ。
「コピーというのは、たんなる模写だ。創作というのがどんなことか、それは口では説明できない。あんたが自分でやって、さとるしかない。創作とコピーとは、まったくべつべつのものなんだよ」(p.160)
1958年に発表された「くずれてしまえ」(Pay for the Printer)という作品に出てくるセリフです。この世界線の地球にはビルトングという謎の生物が出てきます。ビルトングはオリジナルの「物」のコピーを作る能力を持っています。スキャナ内蔵…内臓というべきか?…の3Dプリンタみたいなものですね。
いろいろありまして、ビルトングが絶滅の危機に瀕してしまう。人類はビルトングがオリジナルをコピーする前提の社会に完全に依存してしまったために、物を創作する能力を忘れてしまって大パニック。みたいなストーリーです。
ナイフやコップを一から作る、みたいな話の中で先のセリフが出てくるのですが、案外単純なものでも、一人で作れといわれると困りますよね。例えばマッチとか。鏡とか。あなたは自分一人でマッチを作れますか? Dr. STONE みたいな人がいたら凄いのですが。まずは石を割ってナイフを作る所からでしょうか。
アジャストメント―ディック短篇傑作選
フィリップ・K・ディック 著
大森望 編集, 翻訳
浅倉久志 翻訳
ハヤカワ文庫 SF テ 1-20
ISBN: 978-4150118051