Phinlodaのいつか読んだ本

実際に読んでみた本の寸評・奇評(笑)

変数人間

今日はフィリップ・K・ディックさんの「変数人間」を紹介します。

短編が10作品収録されています。文庫本のタイトルとなっている「変数人間」は、過去からやってきたトマス・コールというエンジニアが主人公。この時代の地球はケンタウルスと星間戦争をしています。

どちらが勝つか、コンピュータが予測するのですが、最初はケンタウルスが有利で徐々に地球が追い上げていきます。ところが途中からコンピュータが予測できない状況に陥ります。その原因となったのがトマス・コール。過去からやってきたこのエンジニアの行動が戦局にどのように影響するか不明ということで、コンピュータは予測不可能になってしまうのです。

どうやら彼は、機械について、物事がどんなふうに動くかについて、一種の直観を備えているらしい。その直観は、彼の頭の中でなく、彼の指先にある。画家やピアニストのような芸術家だ。科学者ではない。
(p.483)

指先で触ってフィーリングで機械を直してしまうのです。このスキルは現代【謎】では誰も持っていない、ロストテクノロジーです。プログラミングも長い間やっていると知らないうちに次に使う機能が実装されていたりしますが…

1953年当時のコンピュータが今のようなデータ処理というより計算機っぽいイメージであることが分かって面白いです。

 

変数人間
フィリップ・K. ディック 著
大森 望 編集
Philip K. Dick 原著
ハヤカワ文庫SF
ISBN:   978-4150119294