今日は忘却探偵シリーズから「掟上今日子の備忘録」です。順番滅茶苦茶で紹介してきましたが、これがシリーズ最初の作品ですね。
すでに誰が誰とか紹介してしまったような気がするので、忘れましたが、あえて繰り返しません。この巻を読めばだいたいのことが分かるようです。5つの短編が入っています。
第一話 初めまして、今日子さん
第二話 紹介します、今日子さん
第三話 お暇ですか、今日子さん
第四話 失礼します、今日子さん
第五話 さようなら、今日子さん
第一話は、
犯人を罠にひっかけるようなやりかたは禁じ手にしている
(p.62)
というような禁じ手で犯人を特定しているので、まあ反則みたいなものですな。
第二話は
「お前の百万円は預かった。返して欲しければ一億円用意しろ」
(p.74)
という謎の脅迫事件なのですが、個人的に、どうして百万円で一億円を要求できるのか、という最大の謎が読んでいる途中で解けてしまったので、ミステリー的にはいまいちなのでしょうか。ただ、ネットバンキングを使わないというのは、単純に足が付かないようにするため、という理由がありそうなので、そこはどうかと思いました。
で、気を取り直して、第三話なのですが、これがまた、
作品の原稿枚数は、およそ120分あれば読めるくらい。
(p.170)
これでピンと来てしまったので、これまたいまいちなのか。しかし、今時の若い人は120分といわれてもピンとこないでしょ。私の世代だとピンと来てしまうのですよ。それより、この話は次の箇所。
忘れているものだ。そして、覚えているものだ。なるほど、新しい知識を知り、新しい体験をするというのは快感だが、同様に、忘れている知識や体験を思い出すという行為も快感である――気持ちいい。
(p.161)
確かに何十年も前のことを再認識することはあります。しかし、完全に忘れていたり、誤解が定着してしまった記憶もあるものです。
第四話、第五話は、第三話からの連作で、第三作に出てきた須永昼兵衛という小説家が不審死した事件のネタです。
作家にとって自殺というのは、お前が考えているほど不名誉な最期ではない。
(p.211)
これに関して、その後いろいろ反論とか交えて出てくるのですが、個人的には、作家だろうがそうでなかろうが、自殺と名誉はあまり関係ないと思っていますけど。キリスト教の世界だと自殺は超絶悪であり、武士だと切腹は名誉を守る行為なんですよね。ややこしい。