Phinlodaのいつか読んだ本

実際に読んでみた本の寸評・奇評(笑)

人形になる

今日の本は矢口敦子さんの「人形になる」。

「人形になる」「二重螺旋を超えて」の2つの作品が入っています。いずれも思いがけないタイミングで人が死にます。そこに人生の深淵を覗くことが…といううのは考えすぎかもしれませんが、やはり人が死ぬということにはインパクトがあります。

「人形になる」の主人公は夏生。人工呼吸器がないと生きていられない、車椅子に乗るのも一人ではできない、という状況で病院で出会った双一郎さんに恋をします。しかし双一郎さんには同棲している恋人がいるのです。

ソウイチロウといえばめぞん一刻の響子さんを思い出すのですが、あちらは惣一郎ですが。

「二重螺旋を超えて」は母子の確執の話。母からの強制に子は抵抗しますが逃れることはできない、というパターンです。、

ミトコンドリアという細胞内小器官のもつDNAが、完全にママ譲りのものだということを知っておくべきよ。悲しいことに、子供は連綿と母親を伝えていくのよ
(p.178)

それが「悲しいこと」だということに悲しさを感じるわけです。主人公は今日子ちゃん。響子ではありません。この今日子が見る夢がかなり怖いです。


人形になる
矢口 敦子 著
徳間文庫
ISBN: 978-4198928414