コロヨシ!!、の続編。コロヨシ!! はどんな話か、というと、どこかに感想を書いたはずなのですが現在行方不明なんですよね。謎です。
掃除という架空の武道がテーマになっています。コロヨシ!! でいい成績を出した掃除部は、これで部の予算も増えると思ったのですが、
「少し注目されたぐらいで、何もかもが自由になると思ったら大間違いだ。分をわきまえよ!」
(p.26)
校長はこんな感じで、全然話になりません。主人公の樹はトホホです。さらに特訓と称して、思った通りの動きをするための秘密兵器がワケのわからないものです。
この機械から照射される光線が、先輩の動きの『シンクロ率』を測ります
(p.71)
昔、フィギュアスケートにコンパルソリーという種目があったけど、最近はそのような動きの正確性を競う競技はありましたっけ。演舞みたいなのはそうなのかな。しかしシンクロ率といわれると、どちらかというとエヴァ的なイメージがします。
シンクロ率が全然上がらないので、樹は集中力を高めるためにゲームを始めます。ゲーセンでゲームが得意な鳴海に、これはどんなゲームなのか質問すると、
「見てわからないなら、聞いてもわからないっスよ」
(p.137)
なかなかツレナイ言葉ですが、ま、それは確かにそうかも。そのアーケードゲームを、
反射神経を極限まで研ぎ澄まして、敵の猛攻すべてをかわし、最低限のアタックで敵を撃破することに心血を注いだ。
(p.159)
という感じで特訓に使います。ゲームは最近はeスポーツと言うらしいですが、確かにある種のゲームはスポーツっぽいです。樹はゲーセンを神経反応の強化ツールとして使ったわけです。掃除のレベルアップにはこれだけでは対応できないというので、運動能力の強化に道場も使って、動きに磨きをかけます。
動きを柔軟にする、という考え方ではない。蛇の動きに改めて「柔軟だ!」と感心する者がいないように。柔軟であることを自らの自然として「知る」ということだ。
(p.160)
攻撃も防御も自由自在に連携するというのは、柳生新陰流の神髄のような感じがしますね。
この物語は国家権力の情報操作とか出てきます。何を風刺しているのか謎ですが、ヤバい社会なんです。新聞記者の日登美さんの言葉。
情報ってのは、操作されたものしか入ってこない。この巧妙に管理された社会ではね。
(p.146)
風刺というより、今の日本だってそんな感じはしますね。
こんな言葉も気になります。
「信じていれば、それが真実です。疑えば、それが嘘になります」
(p.248)
逆にいえば、真実とか虚構というのはその程度の差でしかないということです。社会は何が真実なのかそうでないのか曖昧な世界になっているのです。この言葉を言ったのは、高倉偲。樹は高倉に昔会った記憶があるのですが、それは本当にあったことなのか、後から作られた記憶なのか、と疑っているのです。
結局、樹はアレコレややこしい話に全部、どんどん巻き込まれていくのですが、
興味を持とうが、持つまいが、否応なくあなたは巻き込まれます。
(p.273)
小説の主人公だから仕方ないですね。
決起! コロヨシ!! (2)
角川文庫
三崎 亜記 著
ISBN: 978-4041023143