Phinlodaのいつか読んだ本

実際に読んでみた本の寸評・奇評(笑)

メカ・サムライ・エンパイア

今日の本は「メカ・サムライ・エンパイア」。先日紹介した「ユナイテッド・ステイツ・オブ・ジャパン」の続編となる。

前回の評では、韓国生まれの米国人の作者に対して、日本が舞台のストーリーが書けるのかという疑問を呈したのだが、本編のあとがきには、さらに、影響を受けた作品が具体的に紹介されている。

『マイクタイソン・パンチアウト』『新世紀エヴァンゲリオン』『はじめの一歩』『機動警察パトレイバー the Movie(1、2)』『ファンタシースター 千年紀の終りに』『仁義なき戦い』『悪魔城ドラキュラX 月下の夜想曲』『ヘルツォーク・ツヴァイ』『ヒットラーの復活 TOP SECRET』『ゼルダの伝説 ムジュラの仮面』『スーパーマリオブラザーズ3』『真・女神転生』シリーズと『ペルソナ』シリーズ、『バトル・ロワイアル』『野良犬』『天国と地獄』『博徒外人部隊』『零 紅い蝶』『デアデビル 第一八一巻』『ロックマン2 Dr.ワイリーの謎』『ファイナルファンタジー(VI、VII)』『天地創造』『忍者龍剣伝 (NES版』『クロノ・トリガー』『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』『高い城の男』、コードウェイナー・スミスの諸作品など。
(下、p.326)

Yes、分かった。マインドは間違いなく日本人だ。スラムの様子が妙にFF7っぽい感じがしていたのはそのせいだな。

今回は1994年から1996年頃が舞台になっている。主人公は不二本誠。メカパイロットになるのが夢だが成績が悪い。得意なのはゲームだけ。模擬戦試験で高得点を取ってBEMA(バークリー陸軍士官学校)に入学しようと企むが失敗。その後実戦で結果を出したことで入学できたのだが、とにかく大波乱だ。

もう一人のキーマン、いや、キーウーマンになるのがドイツ人のグリゼルダ。この作品は第二次世界大戦で日本・ドイツが勝つシナリオだから日本とドイツは同盟国なのだが、今のアメリカとロシアのように、要するに勝ったら勝ったで勝った国同士が主導権争いをしていて、現場ではいざこざも多発しているのだ。日独が敵対している中で誠とグリゼリダは仲が良いので、お互い母国から裏切り者呼ばわりされてエラいことになる。

そして本作品にも最強のパイロット、久地樂が出てきて活躍する。アニメだと最強パイロットはイケメンという暗黙の了解があるのだが、どうもこのキャラは違う。むしろ秋葉で典型的なオタクをやってそうな感じだ。でも強いのだ。

さて、今回のテーマは友情物語。でいいのかな。大人の社会の汚さとかドロドロ感の描写もスゴいが、最後はいい奴が残ってそれなりにホッとするオチになっている。

ところで、こんな記述がある。

空中庭園は古代の偉大な建築物だが、現代では実在が疑われている。歴史とはそういうものだ。人は忘れやすい。過去を異なる形で話しはじめてしばらくすると、それが真実としてあつかわれるようになる。
(下、p.112)

ここだけは言っておきたいが、それは韓国の歴史観だ。日本は違う。日本では真実はあくまで真実でなければならないのだ。作者にはそのことは一生理解できないような気がする。

本作から印象に残った一言。

失うものがないから戦えるのよ
(下、p.213)

リゼルダの言葉。しかし、守るものがなくても戦えるのかな。


メカ・サムライ・エンパイア 上
ピーター・トライアス
John Liberto イラスト
中原 尚哉 翻訳
ハヤカワ文庫SF
ISBN: 978-4150121792

メカ・サムライ・エンパイア 下
ISBN: 978-4150121808