今日の本は、隈研吾さんの「自然な建築」。
最初に読み始めた時に、文章がとても読みやすいことに気付きました。文章の設計の妙というのでしょうか、あるいはバランス感覚なのかもしれません。
隈さんといえば国立競技場が有名です。独特な外観も凄いですが、個人的には、ランダムに彩られた座席のおかげでコロナ禍で無観客で行われた競技が空席感がない光景に変化していたのは印象的でした。
隈さんは木を使った建築という印象が強いような気かしますが、本書には石、壁、竹、のような様々な素材が出てきます。現代建築といえばコンクリートなのですが、コンクリートにテクスチャを張り付けるという工法について、
人間には表面しか見えていないという世界観が、この施工方法の背後に控えていた
(p.45、石の美術館)
これを批判的に捉えているようです。ちょっと哲学的なニュアンスが入っていますね。
本書には、建築中の逸話もいろいろ出てきます。そこでのノウハウが面白いので、いくつか教訓的な話を紹介してみます。
相手の主張への配慮が、建築を実現するという行為には最も大事なのである。
(p.112)
相手からの批判にも、必ず一理がある。
(p.112)
大切なのは、欠陥を認め、欠陥に開き直らないことである。まず欠陥を認めて、最大限の努力をし、あきらめずに研究を続け解決策をさぐることである。
(p.113)
相手が乗り気になって、向こうから提案がでてくるようになったらしめたもの
(p.128)
このような話は実際に現場に携わってこそだと思います。
ところで、和紙で家を建てるという話の中で、コンニャクの話が出てきます。なぜコンニャク?
コンニャクをお湯でといてドロドロにし、ハケで和紙に塗り付ける
(p.182)
これで和紙の耐久性が各段に上がるというのです。どの位上がるかというと。
「このやり方は、風船爆弾に使われていたんだ」
(p.183)
最近は気球ブームのようですが、風船爆弾はコンニャクで強化された和紙で作られていたんですね。コンニャクで接着していたことは、アメリカの技術では分析できなかったのだそうです。
自然な建築
隈 研吾 著
岩波新書
ISBN: 978-4004311607