Phinlodaのいつか読んだ本

実際に読んでみた本の寸評・奇評(笑)

七つの時計

またかと言われそうですが、気にしないでアガサ・クリスティさんの作品から、「七つの時計」。

ポワロもマープルも出てきません。チムニーズ館の住人が殺されるという事件が発生します。探偵役を演じるのはアイリーンという女性。館のオーナーの娘で、作品中はバンドルという名前で呼ばれています。ロンドン警視庁のバトル警視と協力して犯人を捜すことになります。もっとも、バトル警視はバンドルに手を出すなと何度も警告するのですが、全然言うことをききません。あちこち情報収集に飛び回ります。

タイトルの七つの時計というのは、どうしても朝に起きてこない人を起こすために八個の目覚まし時計を買ってきて仕掛ける、というイタズラから来ているのですが、仕掛けた部屋の住人が死んでしまった後になぜか7つしかないのです。

さて、最近は女性の議員も増えたようですが。

そもそもあたしとしては、女性が議会に出るのはあまり賛成できないんだけどね。もっと女らしいやりかたで、影響力を及ぼすことだっていくらでもできるんだから
(p.139)

マーシャ伯母さまの言葉です。年寄りらしいステロタイプの発想かと思ったら、裏からコントロールするってことですよね、恐ろしい。クリスティさんの小説は会話の奥が深いですな。

ちょっと時間がないので今日はこれで。もう一言、奥が深い言葉を紹介しておきましょう。

大物というのは、もとめられないかぎり、釈明はいっさいしないほうがいいということをつねに心得ているものですよ。
(p.229)

 

七つの時計
ハヤカワ・ミステリ文庫
アガサ・クリスティー
深町 真理子 翻訳
ISBN: 4150700605

 

数学の問題を うまく きれいに解く秘訣

数学が苦手で、教科書に出てきたり参考書で分かった問題なら解けるが、初見の問題が解けない人がいる。解法がうまく理解できなくて、問題と解答を覚えてしまうからだ。もう少し頑張れば解法を覚えて初見の問題も何とか解けるようになる。しかしキレイに解くのは難しい。この本は、そのあたりのレベルの人に役に立つかもしれない。

解法集のような本はあるが、この本はもう少し上位レベルの、解法がどのような視点で作られているのかを解説している。

とりあえず、問題。

問題 6.4
1/(x+5) = 4 のとき、1/(x+6) の値を求めよ.
(p.99)

まあ計算すれば解けますよね。しかしこの本は「うまく きれいに」解くことを目標としている。エレガントに解くにはどうするかというノウハウ本。具体的には、10種類のストラテジーが紹介されていて、

論理的に推論する
パターンを認識する
逆向きに考える
視点を変える
極端な場合を考える
純化した問題を解く
データを整理する
図で視覚的に表現する
すべての可能性を網羅する
知的に推測し検証する

それぞれについて、問題に続いて「ありがちなアプローチ」と「エレガントな解法」が紹介されている。個人的には、この「ありがちなアプローチ」が本当にありがちで面白い。

ところで、

問題 3.1
2つの非負の整数があり、それらの和は2で、籍は5である。このような2つの数の逆数の和を求めよ.
(p.35)

そんな非負の整数はない。本文中にも i+2i、1-2i という解が出てくるので翻訳時のミスではないかと思う。

ちなみに、最初に紹介した問題のエレガントな解き方だが、まず両辺の逆数をとって、

x+5 = 1/4

両辺に1を足すと、

x+6 = 5/4

また逆数をとって、

1/(x+6) = 4/5

これが答になる。


数学の問題を うまく きれいに解く秘訣
ルフレッド・S. ポザメンティア、クルリック,スティーヴン 著
桐木 由美 訳
桐木 紳 監訳
共立出版
ISBN: 978-4320113213

雑記

今日は本当に何も読んでいないので書くことがない。厳密にいえば、4ページ程度読んだ本がある。もっと細かいことをいえば、古本屋に行って何冊かパラパラと眺める感じで読んだ(笑)。どんな本かというとタイトルも覚えてないのだが、ITとかビジネストレンドとか、SNS活用とか、そんな感じの本。

もっと厳密なことをいえば、プログラムに手を入れるときにプログラム系の本を何冊か調べた。結局、何も読んでない日でも結構読んでいるみたいだ。

 

雑記

朝日新聞に、ピースの又吉さん、というより作家の又吉直樹さんと言うべきか。吉祥寺のコラムが掲載されていた。猫語で唄うおじさんというのが面白い。にゃんですかそれは。

吉祥寺は社会と自分との距離を正確に教えてくれる厳しさと優しさがあった。
(朝日新聞、2017年11月4日、又吉直樹のいつか見る風景)

私は一時期下北沢にいたのだが、下北沢が若者の街だとしたら、吉祥寺はモダンで少しオサレな感じのする街だった。たまにしか行ったことはないはずなのだが、確かに優しさはあったと思う。ただ、下北沢のごちゃごちゃした雰囲気に慣れていた私には、疎外感もあったと思う。数年前に行ったときに何となく昔と同じ空気があったので驚いたことがある。どこか懐かしさもあった。店もビルも激変したはずなのに空気が残るという感じがするのは奇妙なことである。

嵐が丘

てなわけで、一通り読みました、嵐が丘。中途半端だとどうも落ち着かないし、読めば読むほど暗くなるのは仕方ないですね。

ざっとメインキャストを紹介しておきますと、アーンショウ家とリントン家が舞台となります。主人公はヒースクリフ。アーンショウ氏に拾われてきた子供です。アーンショウ家の娘キャサリンと一緒に育ちますが、アーンショウ氏が亡くなると使用人扱いをされることになります。キャサリンはリントン家のエドガーと結婚、ヒースクリフはリントン家のイザベラと結婚することになります。

キャサリンの兄のヒンドリーはバクチ好きでどうしようもない男になり、エドガーは他人とは一切かかわらない小者になってしまうのですが、二人を比較する場面があります。まず、どうしようもないヒンドリー。

この船長は、自分の船が座礁すると任務を放棄しました。そして乗員たちは船を救おうとするどころか、自分たちの不運な船を見棄てて反乱と混乱に陥ったのです。
(下巻、p.71)

エドガーに対しては、

彼は神を信じました。すると神は彼を慰めてくださったのです。
(下巻、p.71)

それにしては悲惨な死に方なんですけどね。もっとも、この小説の中では幸せな方です。キャサリンは錯乱状態になり、子供を産んですぐに死んでしまいます。イザベラはヒースクリフから逃亡した先で肺病で死んでしまい、ヒンドリーもエドガーもよく分かりませんが死んでしまい、両家の財産を手に入れて復讐を果たしたヒースクリフは土砂降りの雨の日に部屋の中でずぶ濡れになって死んでしまいます。殺人事件みたいな死に方ですな。

 引用文からも雰囲気が出ていますが、クリスチャンの一家らしき描写がたくさん出てきます。聖書の引用もたくさんありますが、それにしては危ない人間が多すぎます。宗教は人間を救うとは限らないという感じがします。

 

嵐が丘
E・ブロンテ 著
小野寺健
光文社古典新訳文庫
ISBN:9784334751999, 978-4334752002

死の猟犬

本当はハロウィンに合わせて紹介しようかと思ったのですが、何かタイミングを逃してしまったので今頃、今更です。アガサ・クリスティさんの短編集、推理小説というよりホラーっぽい12作品が入っています。

この中で一番好きなのは「翼の呼ぶ声」、牧師と大金持ちの話です。金持ちは意外と現実主義者。

よく金じゃ買えないものもあるって世間じゃ言うけど。なるほどそれはそうだ。しかしわたしの欲しいものは何でも買えるんでね……だからわたしは満足してるのさ。
(p.262)

ページ数はミステリ文庫のものです。この金持ちのボロウ氏、買えるものだけでいい、というには金を持ちすぎているのですが、ある日ボロウ氏の目の前でルンペンがバスに轢かれて死んでしまいます。それを見て、自分が死を怖がっていることに気付いてしまい、あれこれ悩むことになります。そして、

彼をがんじがらめに縛っていたのは、彼の持っている金だったのだ……
(p.277)

飛躍しているような気もしますが、とにかく、そして、最後に思い切った行動に出ます。聖書には、金持ちが神の国に入るよりもラクダが針の穴を通る方がやさしい、と書いてあるようですが。

タイトルになっている「死の猟犬」に出てくるシスターや、「最後の交霊会」に出てくる霊媒師、「ジプシー」に出てくるジプシーの女、地味に怖い人達が続々と出てきます。「検察側の証人」の最後のどんでん返しも面白いです。さて、「ジプシー」に出てくる美女アステリアの言葉から。

割り算にはいろいろ方法があるでしょう。長さ、高さ、幅……でも、時間で割るのはいちばんへたな方法ですわ
(p.114)

 

死の猟犬
アガサ・クリスティー
小倉 多加志 翻訳
ハヤカワ・ミステリー文庫 HM 1-46
ISBN: なし