Phinlodaのいつか読んだ本

実際に読んでみた本の寸評・奇評(笑)

雑記

今日はテンペストを紹介する予定でしたが、いろいろ疲れたのでお休みです。一応読破はしているのですが…。

ということで雑記モード。今シーズン、2021年の冬アニメで毎回観ているのを紹介してみると、「俺だけ入れる隠しダンジョン」、「蜘蛛ですが、なにか?」、「無職転生 ~異世界行ったら本気だす~」、「たとえばラストダンジョン前の村の少年が序盤の街で暮らすような物語」、あとは「転スラ」「リゼロ」だから、何か今期はファンタジーとか転生モノばかり観ています。

「隠し」と「本気」がちょっとエッチ系で、「たとえば」は最強系。リゼロは最初から観ているから付いていけますが、これは今期から見たら訳が分からないのでは。

「蜘蛛ですが、なにか?」はED曲を「いつか聴いた曲」に紹介しましたが、転生してバグというのはやっぱりプログラマー的には嫌ですね。いや、案外理想なのか。

絶園のテンペスト

昨日ちょっと話題に出したけどまだ紹介していなかったので、今日はアニメで「絶園のテンペスト」。2012年10月から2013年3月まで放映されました。オリジナルのマンガは原作が城平京さん、構成が左有秀さん、作画が彩崎廉さん。

テンペストというのはシェイクスピアの作品ですが、ヒロインの鎖部葉風 (くさりべ はかぜ)が地位を奪われて孤島に幽閉されているところからタイトルになったのではないかと思います。ストーリーの中にもテンペストが出てきます。

ジャンルはファンタジーですが、舞台はほぼ現代の日本です。時空を超えるあたりはSFですが。

ミステリー的な要素もあって、前半に出てくる問答のシーンはなかなか緊迫感があります。愛花の恋人が吉野だということに皆が気付かないのはちょっと違和感がありましたが。

地球幼年期の終わり

このブログも4年になるようですが、思ったより長く続いていますね。今日の本は、アーサー・C・クラークさんの名作、「地球幼年期の終わり」です。

超あらすじを紹介すると、地球に宇宙人がやってきて、核戦争による人類の絶滅を回避させて、統治して、進化させて、新人類を回収したらなんと人類は滅亡しました、みたいな話です。

地球人と対話する宇宙人の名前はカレレン。ちなみに宇宙人は〈上主〉と表現します。地球側の交渉役は国連事務総長のストルムグレンです。完全に〈上主〉と人類の板挟みになって残念な役です。どちらかというと〈上主〉は寛大なので、人類に攻撃される役ですね。

絶対的な力を持つ〈上主〉の技術力によって、

昔の標準からすれば、まさにユートピアの時代が訪れている。無知、疾病、貧困、恐怖は事実上姿を消した。戦争の記憶は、暁が追払う悪夢のように、過去に没し去ろうとしていた。
(p.119)

という理想的な世界が実現します。しかしその理想というのが曲者なのです。

「絶縁のテンペスト」というアニメでは、始まりの木という超生命体が出て来て世界中から戦争がなくなってしまう、というシーンがありますが、人間がヒエラルキーの頂点から降ろされると戦争どころではなくなってしまうようです。しかし、人類は、支配された平和で安全な世界よりも、自ら支配権を持つ争いの世界でありたいのです。

また、先日紹介した「呪われた村」のように、この話にも共感覚のような考え方が出てきます。

人間一人一人の心を島と考えていただきたい。四方は海に囲まれている。それぞれの島が孤立しているように見えるのだが、現実にはすべてが根もとの岩盤でつながっていて、そこから生えているだけだ。
(p.288)

各人の心はスタンドアローンで存在しているように見えますが、実は根っこで接続されているわけです。


地球幼年期の終わり【新版】
アーサー・C・クラーク
渡邊 利道 その他
沼沢 洽治 翻訳
創元SF文庫
ISBN: 978-4488611040

まほろまてぃっく

今日はアニメで「まほろまてぃっく」。2001年の秋アニメです。マンガは原作が中山文十郎さん、絵がぢたま(某)さん。

100日後に死ぬワ…じゃなくて、398日後に停止するアンドロイドとして日常生活を始めたまほろをヒロインとするラブコメSFです。戦闘用のアンドロイドなので派手なバトルシーンもありますが、アニメ制作がガイナックスさん、シャフトさんというコンビでいい動きをしています。ちなみにオープニングアニメの絵コンテは庵野秀明さん。

敵役のイケメン戦士リューガが案外いい奴なのが不思議な感じです。主人公の美里優は中二という設定なのですが、それにしてはしっかりした感じです。

式条沙織という滅茶苦茶な先生が出てきますが、こういう先生はぜひ実在して欲しいですね。とか書いたら女性蔑視とか言われそうなので深入りはやめときます。

dアニメでは今月末で配信終了なので、観たい方はお早目に。

呪われた村

今日の本はジョン・ウインダムさんの「呪われた村」。

ミドウィッチという村で、あらゆる生物が眠ってしまうという不思議な現象が発生します。

男も女も馬も牛も羊も豚も鶏も雲雀ももぐらも鼠もみんな寝ていたのだ。
(p.30)

眠れる森の美女のようですが、原因は魔法ではなく、現象発生地域の中心に出現している謎の円盤のせいなのです。もぐらだけ平仮名になっていますが土竜ですよね。

強制睡眠エリアは限定的ですが、とある境界の中に入った瞬間に眠ります。つまり、エリアに向かって歩いて行くと、境界を超えた所でばったり倒れるわけです。しかし、その人をエリア外に引きずり出してやると目を覚まして、何事もなかったかのように正常な状態に戻ります。不可思議です。

一体どういう原理なのか分からないまま24時間が経過すると、いつの間にか円盤の姿はなく、住民は全員、何事もなかったかのように目覚めます。ハッと気付いたら1日経過していた、というような状況。ただし暖炉の火は消えているし、

停電で冷蔵庫が止まったために牛乳が腐敗した
(p.58)

微生物の時間は止まらなかったようですね。

さて、物語はここからが本番です。

その後、村の出産可能な女性が全員妊娠していることが分かります。しかし当の女性には思い当たるコトがない。空白の一日に何かあったとしか思えないわけです。そして、妊娠した女性は、金色の瞳を持つ子供を生みます。

この子供達は、普通の人間にはない二つの特別な能力を持っています。まず、30人の男子と28人の女子は同性の間で共有感覚を持っています。例えばある一人の男子が何か字を覚えたら、他の男子も一斉にそれを覚えた状態になります。しかし女子にはその情報は伝わりません。女子も女子同士で思考を共有しています。

もう一つは、他の人間に強制力を働かせることができるという能力です。他人の意識に干渉して、思ったことをさせるのです。これが後の悲劇の原因になるのですが、後半の急展開はなかなかのものです。

ということで、気に入った一言を。

鳩が鷹を怖れるのは臆病だからではない。賢いからなのだ。
(p.204)


呪われた村
ジョン・ウィンダム
林 克己 翻訳
ハヤカワ文庫 SF 286
ISBN: 978-4150102869

人形になる

今日の本は矢口敦子さんの「人形になる」。

「人形になる」「二重螺旋を超えて」の2つの作品が入っています。いずれも思いがけないタイミングで人が死にます。そこに人生の深淵を覗くことが…といううのは考えすぎかもしれませんが、やはり人が死ぬということにはインパクトがあります。

「人形になる」の主人公は夏生。人工呼吸器がないと生きていられない、車椅子に乗るのも一人ではできない、という状況で病院で出会った双一郎さんに恋をします。しかし双一郎さんには同棲している恋人がいるのです。

ソウイチロウといえばめぞん一刻の響子さんを思い出すのですが、あちらは惣一郎ですが。

「二重螺旋を超えて」は母子の確執の話。母からの強制に子は抵抗しますが逃れることはできない、というパターンです。、

ミトコンドリアという細胞内小器官のもつDNAが、完全にママ譲りのものだということを知っておくべきよ。悲しいことに、子供は連綿と母親を伝えていくのよ
(p.178)

それが「悲しいこと」だということに悲しさを感じるわけです。主人公は今日子ちゃん。響子ではありません。この今日子が見る夢がかなり怖いです。


人形になる
矢口 敦子 著
徳間文庫
ISBN: 978-4198928414

秒速5センチメートル

今日はアニメで「秒速5センチメートル」。原作・監督は新海誠さん。2007年の作品です。

「桜花抄」、「コスモナウト」、「秒速5センチメートル」の3つの短編による連作です。それぞれ、主人公の遠野貴樹の小学校時代、高校時代、社会人時代が舞台になっています。マンガはどこかで読んだような気がするのですが…。

「桜花抄」の、大雪で電車が遅れていくシーンは、中央線で似たようなことを経験しているのでリアルに分かります。東京の都心で暮らしていると電車はぴったりに来るのが当たり前の感覚なのですが、少し東京から離れてしまうと、10分遅れは当たり前みたいな所もあるのです。今もそうなのかな。

小田急線は割と使っていたのですが、豪徳寺は殆ど降りたこともないと思います。小田急線は高架化する前後でかなり雰囲気が変わりましたから、個人的にはちょっとピンと来ないところがありますが。

秒速5センチメートル」のラストシーンは「君の名は。」のシーンと何となく被ります。