Phinlodaのいつか読んだ本

実際に読んでみた本の寸評・奇評(笑)

東大首席弁護士が教える超速「7回読み」勉強法

今日のの本は「東大首席弁護士が教える超速「7回読み」勉強法」。受験生には有名な「7回読み勉強法」について発案者の山口真由さんが書いた本だ。

この本は、7回読みとは具体的にどうするのかを確認したくて買ったのだが、読んでみたら7回読み以外について書かれたページの方が多い。そして、そちらの方が面白い、という意表を突いた本だった。

勉強法の本を書いている人は大勢いるが、だいたい同じような内容だ。しかし、7回読みというアイデアは山口さんオリジナルで他には見たことがない。ちなみに安河内さんは覚えたかったら100回読めと書いている(笑)。

ネットを見た感じでは、7回読んだら何でも暗記できてしまう超能力か魔法、みたいな印象を持っている人が多いような気がする。ところが山口さん自身は7回という回数にあまりこだわっていない。

文章は、一見どんなに難解なものでも、意味がありさえすれば、必ず理解できるものです。7回でダメなら10回、10回でダメなら20回読めばいつかはわかります。
(p.38)
「7回」という数にこだわる必要はありません。7回でわからない難しい内容は、さらに何回か読み足すのが、私の方法です。
(p.130)

7回でダメなこともあるのだ。つまり7回というのは単なる目安で、回数に拘らず柔軟に対応するメソッドなのである。一応突っ込んておくが、本当に「必ず理解できるもの」なのか、と疑問を持つ人がいるかもしれない。これは雨乞いの法則といって、分かるまで回数無制限で読めば必ず理解できる、という単純な話なのだ。もっとも読書百遍というから、100回読めば本当に分かるという説もある。

話を戻して、7回読みというのは、どういう読み方をするのか。

7回読みは、1回1回が流し読みです。
(p.129)

一般に、速読というのは高速で正確に全文を読む。流し読みはそうではない。文章をきちんと読むのではなく、目に付いた単語だけ拾って流していくような読み方をするのである。精読するのではないという特徴は重要だ。速読ではないので、原理的には速読スキルがなくても対応できるのである。

勉強法の本を読んでみると、勉強には音読と主張している人が多い。音読の効果は脳科学的にも説明され、実証もされている。にもかかわらず山口さんが流し読みに拘る理由は、こうだ。

人が話す言葉を聞くより、書かれた文章を読むほうが、圧倒的に速い
(p.63)

これは速読ができる人なら当然のことである。ただ、最近気付いたのだが、世の中には黙読も脳内音読している人が案外多い。そのような読み方だと「圧倒的に速い」スピードで読むことはできないので注意が必要だ。

実際に読むスピードは、

私の場合、300ページ程度の本を、1回30分程度で読んでしまいます。
(p.133)

1分で10ページのペースなので、6秒で1ページを読むことになる。速読にしては精読している感じの速さだ。これで何日で7回読むのかというと、

「一日以内」に読めれば理想的です。
(p.134)

いやそれキツいだろ。30分が7回は不可能ではないが、かなりの集中が3時間30分続く、というのは常人に耐えられるのだろうか。

ちなみに、7回の読み方は7回とも同じわけではない。

1回目から3回目までかけて行った全体像の把握は、言わば輪郭線を書くようなもの。4回目と5回目で行ったキーワードの把握によって、輪郭線の内側に大まかな絵を描きます。さらに6回目と7回目の内容把握で、輪郭線の内側の絵を詳細にしていくのです。
(p.155)

最初はざっくりイメージを感じておいて、だんだん細かい所を仕上げていくのである。最後は暗記していることを確認するような読み方になる。

さて、7回読みはそんな感じで、他のエピソードを紹介しておくと、まず驚いたのは1日19時間の勉強をしたという話。これは司法試験の前にやったというのだが、

一日に勉強すること、なんと19時間半。そしてそれを2週間続けたのです。
 一日24時間のうち、食事は各20分×3でトータル1時間。入浴に20分。毎晩母に電話をかけるのに10分。そして睡眠は3時間。
(pp.84-85)

その結果、幻聴が聞こえるようになったというからスゴい。私の場合、1日17時間の仕事を半年程度続けたことがあるが、幻聴には至らなかった。

もう一つエピソードを。大学の授業はMDに録音したというのだが、

家に帰って、そのMDを2倍速で聞きながら、さらにパソコンで記録しているノートを補充する
(p.70)

倍速というのがポイント。私はアニメは常に2倍速で再生して見ているので、通常の速度だと物凄く間延びした感じに見えてしまう。倍速で聞くことで思考速度が倍になるとも思えないのだが、倍速は慣れると案外対応できるのである。

最後に。山口さんは大学卒業後、官僚となったのだが、

1か月のトータルの勤務時間ではなく、残業時間だけで300時間です。信じられます?
(p.106)

もちろん。

プログラマーも昔は残業200時間は当たり前みたいな感じだった。だから100時間で過労死とか「ちょっと何言ってるかわからない」世界のような気がしてしまう。この後、山口さんはなぜそうなるかを解説しているのだが、ソフト開発も似たような側面がある。納品したら動かない、という謎のサイクルが発生するのだ。そして帰宅できなくなる。

最後に、今回の一言。

勉強する目標がある人生は、つらいことがあるからこそ、楽しいことがある。勉強をする目標がない人生の場合には、つらいこともない反面、楽しいこともないのでは、と。
(p.72)

光あるところに影あり、みたいな。


東大首席弁護士が教える超速「7回読み」勉強法
山口真由 著
PHP研究所
ISBN: 978-4569819303