Phinlodaのいつか読んだ本

実際に読んでみた本の寸評・奇評(笑)

キノの旅IX the Beautiful World

今日は「キノの旅」の9巻。このブログで8巻が飛んでますが、読むのは順不同で進めているので、だんだん順番が分からなくなってきました。

第三話「作家の旅」は、盗作で儲ける話です。このストーリーの条件だと原作者は何の損もしていないような気もしますが、著作権って一体何なの、というところから根本的に考え直す必要があるかもしれません。最後のオチのところで、

ラクリには気づいているに決まってるわよ
(p.66)

いわゆる大人のやり方というメソッドです。何かアヤシいと思っていても、儲かるのなら黙っているのが得策。知っていても口に出さないというスキルは基本ですが、学校では教えてくれません。

第六話「自然保護の国」は貴重な自然を保護しようとして逆に自然を滅ぼしているという話です。しかもやっている側は保護していると信じているから手に負えません。それも全部ひっくるめて自然だと思えば何事も全て自然の成り行きといえるかもしれません。

ところで、舗装道路というのはそろそろ法律で禁止した方がいいと思います。だって不自然ですから。

第八話「殺す国」は、自殺したがっている人達への対策として、

〝そんなに死にたいのなら国が死に場所を授けましょう〟計画
(p.193)

自殺者が死ねるように必ず負ける戦争に駆り出すというのは妙なソリューションです。うっかり勝ってしまったらどうするのでしょう。

みんなで死ねば怖くない
(p.194)

怖くないといってもかなり痛そうですが。面白いと思うのは、

でも連中、どうにも輝いているんですよね。顔も瞳も。これから死ぬ人間の目とはとても思えない。自殺が認められると、妙に嬉しそうなんです。
(p.196)

掲示板の投稿者の中にも「受験で失敗したら死にます」みたいな人が大勢いるようですが、同じように自殺を認めてあげたら喜ぶのでしょうか。どうもそんな気配は感じないです。

第十一話「説得力Ⅱ」。

自分を守るため、もしくは誰かを守るため、戦わなければならない時に一番重要なことは、常に頭に置いておくべきことは――〝不意打ちをする〟ことです。
(p.247)

これは確かに説得力があります。


キノの旅IX the Beautiful World
時雨沢 恵一 著
黒星 紅白 イラスト
電撃文庫
ISBN: 978-4840231725