Phinlodaのいつか読んだ本

実際に読んでみた本の寸評・奇評(笑)

ビッグデータと人工知能 - 可能性と罠を見極める

テレビのニュースで新型コロナの感染警告用のスマホアプリを紹介していた。インストールしておくと、移動経路がデータとして蓄積されて、感染者が判明したときに、その人と接触した可能性のある人に警告が表示されるという。使うデータは個人が特定できないようにしておくので、プライバシーの問題はないというのだが。

今日紹介するのは「ビッグデータ人工知能」。

内容としては、ビッグデータ人工知能の基本的な知識の解説、入門書、あるいはネタ本といった感じである。AIに関しては今流行中の機械学習、深層学習から、シンギュラリティのような未来のネタまで紹介している。

ビッグデータに関しては、プライバシーの問題についても触れている。

とりわけ、プライバシーに関連したセキュリティ上の難問がある。いわゆる「プロファイリング」とむすびついた個人の社会的監視だ。
(p.159)

新型コロナ対応のアプリにも、これに近い問題が発生する。コロナに感染した人の動線データを持つだけなら大丈夫のように見えるが、それが個人データを関連付いた瞬間にとてもヤバい問題に直面することになる。

ビッグデータの情報を個人と関連付けるのは、おそらく殆どの人が考えているよりはるかに簡単である。個人は殆どの場面で自分の素性を隠すことなど微塵も考えずに行動している。あちこちにサインしながら歩いているようなものである。

ビッグデータを人間がどう使うかというのは倫理の問題で片付くが、機械がどう使うかというのは人間の意志とは関係ないところで決まる。その時の行動は、最終的には人間の行動を参考にするのではないかと思う。今のままではコンピュータは他人を騙し、攻撃し、奪うような方向に発展するだろう。その善悪はさておき、人間がそうしているのだから、妥当な結果だと言っていいのだ。

 

ビッグデータ人工知能 - 可能性と罠を見極める
西垣 通 著
中公新書
ISBN: 978-4121023841