Phinlodaのいつか読んだ本

実際に読んでみた本の寸評・奇評(笑)

アウトブレイク―感染

新型コロナウイルスは依然として流行中、ということで今日は「アウトブレイク」を読み直してみました。

作者はロビン・クックさん。パタリロ…いや、何でもありません。ストーリーは1976年の回顧譚から始まります。

百十四人の村民と共に、病院職員十七人のうち十一人が死亡し、病院も運営できる健康状態のものがいないから閉鎖している
(p.12)

エボラ出血熱です。

これがずっと後になっていきなりアメリカで感染が始まるというストーリー。最後の方は感染ホラーというよりサスペンスになっていきますが、全米が感染するわけではなく、発病ごとに交通封鎖して何とか封じ込めます。今回のコロナは封じ込めは間に合わなくてパンデミックになっていますが、このリアルと比べるとストーリーはどうも甘い感じがします。エボラは感染力が強すぎて、感染を広げる前に患者が死んでしまう、ということはよく言われていますが。

この話のヒロインはマリッサ。疫病管理センターのウイルス専門医です。上司のダブチェックから、こんなことを言われます。

疫学者というものは、同じデータでも臨床医とはちがった見方をするものだということを肝に銘じておきたまえ。そうすれば、ひとつのデータが別な意味を持ってくるかもしれん。臨床医はひとりひとりの患者を個別に見ておるが、君はそれを全体像として見るのだ。
(pp.60-61)

そこでどこに目を付けるかというと、感染ルートです。どこで誰から伝染したか。また、

どうしてリクター医師の患者のあるものは病気にかかり、あるものはかからなかったのか、それを知りたいと思った。
(p.72)

リクターは初期に感染して死んでしまう医師です。マリッサは感染経路に違和感を持つのです。

日本のコロナ対策に関しては、感染源不明の患者が多すぎるような気がします。この話では聴き取り調査で感染源を特定していくのですが、今はスマホの位置情報のような情報があるので、もっと細かい動きが分かるはずなのですが。

コロナ対策でもう一つ気になるのが、重篤になる人と、軽い症状だけで直ってしまう人がなぜいるのか。そこが分かれば何か効果的な予防ができるような気がするのですが。


アウトブレイク―感染
林 克己 著
ロビン・クック
ハヤカワ文庫NV