Phinlodaのいつか読んだ本

実際に読んでみた本の寸評・奇評(笑)

キノの旅XI the Beautiful World

今日は「キノの旅」の11巻です。

第一話「つながっている国」は、一人だけ残して他の国民は全て他の国に引っ越してしまったという話です。 残された人は病気で隔離されていて、外に出ることができません。 しかも、その国でしか使えないネットを通じて他の人とchatできているので、今も他の人が国内にいると信じているのです。実際は、chat が国外からも使えるように機能拡張されているようですが、どうすればそれを隔離者に納得してもらえるでしょうか。案外哲学的です。

その人が幸せになれれば――、つまり、〝自分たちは幸せだと思うことができれば〟恐らくそれでいい
(p.21)

これが正解なのでしょう。

第三話の「アジン・ダー及び(途中略)及びワコフ・ヤーの国」はタイトルを引用してやろうかと思いましたが、それは作者の策にハマるような気がしたのでやめました。ワープロがない時代の小説ならスゴい、と感動したかもしれませんが、IT時代の作品としては、コピペすればいいので…。この話、個人的には、

とても平和に長閑に暮らしている
(p.96)

長閑という漢字を覚えるという収穫がありました。

第四話「国境のない国」は、仕組みがよく分かりません。エリアを持つことを認めない、つまり土地や部屋を所有・占有できないという国なのですが、モノは占有できているのでしょうか。だったらソレの取り合いで戦争になりそうな気がするのです。

全てオープンスペースなら「そこに置くな」ということはできませんが、そこにあるものを勝手にどかせて別のモノを置くことはできますよね。トイレもオープンなので、入って出てこない、という人がいたらどうなるのでしょう。いろいろ悩んでしまいます。

第六話「道の話」では、国を亡ぼす目的のために国を豊かにする、そのために道を作ろう、という話です。個人的には、方向性としては間違っていないと思います。ただ、道をつくれば国が豊かになるというような単純なことはないです。道があると敵が攻めてくるので。

第七話「戦う人達の話」はバトルシーン満載でどんでん返しもあって、実写化するといい感じになりそうな気がします。


キノの旅XI the Beautiful World
時雨沢 恵一 著
黒星 紅白 イラスト
電撃文庫
ISBN: 978-4840240253

キノの旅X the Beautiful World

今日は「キノの旅」の10巻。Amazon の表紙が手元のものと違うのですが、気にしない。

カラーページの「ペットの国」は笑っちゃいました。笑っていいのかな。今までの流れだったらウサギもアリのような気がしますが、そういえばニワトリをペットとして飼っている人はいるのでしょうかね。都会だとウルサイので雄鶏は飼えないという説もあります。

第一話の「インタビューの国」は、インタビューの内容と記事の内容を比較して笑う話。

食べられそうな動物を見つけるとすぐに撃ち殺して解体します。兎や鳥が多いです。
(pp.27-28)

というのが、記事になると、こうなります。

食べられそうな果物を見つけるとすぐに飛びつきます(笑)
(p.21)

第七話「歌姫のいる国」は10巻の半分以上を占める、短編というより中編です。最後に、歌姫を殺す依頼を受けたキノと、歌姫をつれて逃げる少年、この追いかけっこがなかなかスリリングです。最後にキノが取った行動は、何となくらしくないですが、ちょっといい一言を。

行動するときは、正しい情報を元に冷静に動け。〝勇気〟なんてものはいらない。俺に言わせれば、それは〝無謀〟と同じだ
(p.132)

言っているのはユアンという悪い奴ですが、いいことを言う。関係ないですが、個人的には「急ぐ時は慌てない」というのがプチ座右の銘です。でも「座右の銘は何ですか」と訊かれたときは、最近は「棚から牡丹餅」と答えることにしています。


キノの旅X the Beautiful World
時雨沢 恵一 著
黒星 紅白 イラスト
電撃文庫
ISBN: 978-4840235808

キノの旅IX the Beautiful World

今日は「キノの旅」の9巻。このブログで8巻が飛んでますが、読むのは順不同で進めているので、だんだん順番が分からなくなってきました。

第三話「作家の旅」は、盗作で儲ける話です。このストーリーの条件だと原作者は何の損もしていないような気もしますが、著作権って一体何なの、というところから根本的に考え直す必要があるかもしれません。最後のオチのところで、

ラクリには気づいているに決まってるわよ
(p.66)

いわゆる大人のやり方というメソッドです。何かアヤシいと思っていても、儲かるのなら黙っているのが得策。知っていても口に出さないというスキルは基本ですが、学校では教えてくれません。

第六話「自然保護の国」は貴重な自然を保護しようとして逆に自然を滅ぼしているという話です。しかもやっている側は保護していると信じているから手に負えません。それも全部ひっくるめて自然だと思えば何事も全て自然の成り行きといえるかもしれません。

ところで、舗装道路というのはそろそろ法律で禁止した方がいいと思います。だって不自然ですから。

第八話「殺す国」は、自殺したがっている人達への対策として、

〝そんなに死にたいのなら国が死に場所を授けましょう〟計画
(p.193)

自殺者が死ねるように必ず負ける戦争に駆り出すというのは妙なソリューションです。うっかり勝ってしまったらどうするのでしょう。

みんなで死ねば怖くない
(p.194)

怖くないといってもかなり痛そうですが。面白いと思うのは、

でも連中、どうにも輝いているんですよね。顔も瞳も。これから死ぬ人間の目とはとても思えない。自殺が認められると、妙に嬉しそうなんです。
(p.196)

掲示板の投稿者の中にも「受験で失敗したら死にます」みたいな人が大勢いるようですが、同じように自殺を認めてあげたら喜ぶのでしょうか。どうもそんな気配は感じないです。

第十一話「説得力Ⅱ」。

自分を守るため、もしくは誰かを守るため、戦わなければならない時に一番重要なことは、常に頭に置いておくべきことは――〝不意打ちをする〟ことです。
(p.247)

これは確かに説得力があります。


キノの旅IX the Beautiful World
時雨沢 恵一 著
黒星 紅白 イラスト
電撃文庫
ISBN: 978-4840231725

クズの本懐

今日はアニメで「クズの本懐」。原作はコミックで作者は横槍メンゴさん。2017年の冬アニメです。このアニメは放送時に毎週観ていましたが、先日見直しました。

ストーリーは説明するのがアレな位ドロドロしていてナニですが、最後まで納得がいかない話には快感というか、リアルでよろしいと思いました。不快感が心地よい系です。微妙にエロいシーンがありますが、何かと中断したりしてモヤモヤ感が残ります。ヒロインの花火が自虐的なのですが、個人的には、クズというほどクズじゃなくて案外マトモな感性のような気がします。

アニメの描写としては、ブチキレるシーンの後に、でもできないみたいな流れになっていることが結構あって、そういう所は何かリアルな感じがしました。

 

キノの旅XIII the Beautiful World

今日は「キノの旅」の13巻。8巻と間違えて投稿してしまった(笑)。ところでこのシリーズ、文庫本に2種類あるのですが、旧版と新版って何が変わっているのでしょうか。謎ですが確かめる気力はありません。

巻頭カラーページの「嫌いな国」。

全員ができるのなら、やっても誰も褒めてくれないでしょ?

褒めて欲しいからやる、褒めてくれないのでヤル気をなくした、みたいな話は Yahoo!知恵袋では猛烈にたくさん出てくるのですが、最近の若い人の、親が褒めてくれないから大学に行く気がしない、みたいなのは何なのか…私の理解を超えています。そういえば、若い社員が「上司が褒めてくれないのでヤル気がしない」というのもあったような。だったら上司はホメてやればいいだけなので楽なのかも。

豚もおだてりゃ木に登ると言いますが…

第三話「違法な国」。

小説の中に犯罪行為があると出版を禁止するという国です。犯罪行為が書いてあると、読者がそれをやってもいいことだと思ってしまう、という論理です。どこかで見たような。

このロジックの欠点は、小説に犯罪行為が出てくることで満足して、実世界でやらなくてもおなかいっぱい、という人の存在を忘れていることです。これを極めると実世界は面白くないので仮想世界にハマる、みたいな。

そういえばとある国では日本のアニメや漫画の表現、特に女児への性行為の表現は社会に悪影響を与えるので害悪だ、ということで禁止していたと思います。ちなみにその国の少年少女への性犯罪発生率は、日本の10倍程度だったと思いますが、小説や漫画で性行為の描写はアリだが実社会での性犯罪は少ない日本と、小説や漫画の描写はナシだが実社会での性犯罪が多いその国。一体どちらが望ましい世界なのでしょう。

第四話「旅人の国」。

移民は、たった一人でも認めてしまったら次が断れなくなる。
(p.105)

そういえば、最近、不法入国の両親が日本で産んだ子供に関する判決があったような。

第四話はそれよりも、

両親と兄弟がいたのですが、どこへ行ってもやがて身元がばれて白眼視されるのに疲れ、ある日家に火をつけて心中してしまいました。
(p.125)

というシーンに、あるあると思ってしまいました。

第五話「必要な国」。

さぼるとすぐ下手になるから、毎日少しずつでもいいから体を動かせ
(p.153)

これはあらゆる仕事、いや、作業に関して言えることだと思います。三日やらないと全てを忘れるのは鶏だけではありません。

スペシャル収録「いろいろな話」に出てくるこの国って…

車輪も、鉄器も、科学も、文化も、全てのものは我が国が創ったのです!
(p.220)

いや、何でもありません。ちなみに、その証拠はと問うと、

これらの記録は、世界の歴史を記した〝全世界大歴史事典〟と、世界の発明・発見を記した〝全世界大達明発見辞典〟にしっかり記されています! それらに書かれていることで、全ては一片の疑問も挟むこともなく証明されているのです!
(p.221)

教科書に書いたから事実だという論理は国際的にも通用するようですが。

最後に、「あとがき」のインタビュー、時雨沢さんのコレ。

思いついたことは必ずメモを取る
(p.252)

これは私もそういう方針で生活しています。ちなみに私が今の時点で最後に書いたメモには「替え芯の一撃」と書いてあります。意味は問わないでください。


キノの旅XIII the Beautiful World
時雨沢 恵一 著
黒星 紅白 イラスト
電撃文庫
ISBN: 978-4048680684

キノの旅VII the Beautiful World

今日は「キノの旅」の7巻です。

第一話「迷惑な国」は、国がまるごと移動する話。ひょっこりひょうたん島なら海上なので割といい感じかもしれませんが、この国は陸上を移動するのでマジ迷惑です。

人が歩けば足跡は残ります。これだけは仕方がないと割り切り、またこの土の上に新しい緑が逞しく育ってくれることを願っています
(p.52)

種をまく程度はしてもいいと思うわけです。

どんな人間でも、どんな国でも、ある程度他人や他国に迷惑をかけながら存在しているのですよ
(p.53)

まあそうですが、その場合は当然、相手からも迷惑をかけられることを許容することになります。それに、普通は迷惑だけでなく、親切とか余計なお世話という行為も行うべきものです。

第二話「ある愛の国」。これは…何といっていいかよく分からない話ですが、

本人達がいいって言えば、たぶん何でもいいのでしょう
(p.69)

それが本心からのものであれば。ちなみにこのストーリーの批判的視線は、羊の気持ちが一切考慮されていない所に向くはずです。

第四話「冬の話」。ある種の宗教への批判でしょうか。教義が独特です。

けがも病気も、一切他人は手を出さない。自分だけで治す。
(p.94)

治療行為は悪なのです。もちろん安楽死もダメなのですが、

戦争に備えた教義として、異教徒に殺された者は、問答無用で天国に行けることになっていた。
(p.94)

キノは異教徒として死にたい人を安楽死させてやる、という仕事をします。報酬は希望者の家族が支払います。異教徒の旅人が殺人を犯すと国外退去処分になりますが、再入国は禁止しないというザル法です。とりあえず、うまく回る系のルールです。

ここにやってきたのが他の国で安楽死をやって殺人犯となり、国外追放された医師のディス。

患者がどんな状態でも、いくら本人が望んでも、安楽死は医師による殺人である〟
(p.104)

ディスはこの国で治療行為をやろうとします。その罰則もユニークなのですが、それは読者へのお楽しみということで。ただ、個人的にはこういうオチはどうかと思います。宗教的に。

エピローグの「何かをするために・a」

「この国で、〝正当防衛〟は罪にはならないよ。そして〝自殺の幇助〟は、それほど軽い罪ではない。」
(p.221)

私はこの話は本で読む前にアニメで観たのですが(キノの旅 何かをするために - Life goes on -)、その時点では老人が自殺するためにキノを使ったということが分かりませんでした。


キノの旅VII the Beautiful World
時雨沢 恵一 著
黒星 紅白 イラスト
電撃文庫
ISBN: 978-4048666299

アンゴルモア元寇合戦記

今日はアニメで「アンゴルモア元寇合戦記」。dアニメの配信が今月末で終了になるので急いで観ました。

原作はマンガで、作者はたかぎ七彦さん。そちらは読んでません。

元寇の時の対馬での戦いが元ネタです。多勢に無勢でどんどん死んでいって最後に壮絶にほぼ全滅するので見ていてとても辛いですが、主人公は無敵だとか、それでも信用されなかったりとか、いい所で裏切りがあるとか、アニメとしてはアルアル系【謎】なのですが、ほぼバトルしまくりなのでアッという間に12回終了って感じでした。

主人公の朽井迅三郎が海に落ちるシーンは、普通アレは死ぬだろ、と思いましたが(笑)。一所懸命というのはいい言葉です。