Phinlodaのいつか読んだ本

実際に読んでみた本の寸評・奇評(笑)

キノの旅XIII the Beautiful World

今日は「キノの旅」の13巻。8巻と間違えて投稿してしまった(笑)。ところでこのシリーズ、文庫本に2種類あるのですが、旧版と新版って何が変わっているのでしょうか。謎ですが確かめる気力はありません。

巻頭カラーページの「嫌いな国」。

全員ができるのなら、やっても誰も褒めてくれないでしょ?

褒めて欲しいからやる、褒めてくれないのでヤル気をなくした、みたいな話は Yahoo!知恵袋では猛烈にたくさん出てくるのですが、最近の若い人の、親が褒めてくれないから大学に行く気がしない、みたいなのは何なのか…私の理解を超えています。そういえば、若い社員が「上司が褒めてくれないのでヤル気がしない」というのもあったような。だったら上司はホメてやればいいだけなので楽なのかも。

豚もおだてりゃ木に登ると言いますが…

第三話「違法な国」。

小説の中に犯罪行為があると出版を禁止するという国です。犯罪行為が書いてあると、読者がそれをやってもいいことだと思ってしまう、という論理です。どこかで見たような。

このロジックの欠点は、小説に犯罪行為が出てくることで満足して、実世界でやらなくてもおなかいっぱい、という人の存在を忘れていることです。これを極めると実世界は面白くないので仮想世界にハマる、みたいな。

そういえばとある国では日本のアニメや漫画の表現、特に女児への性行為の表現は社会に悪影響を与えるので害悪だ、ということで禁止していたと思います。ちなみにその国の少年少女への性犯罪発生率は、日本の10倍程度だったと思いますが、小説や漫画で性行為の描写はアリだが実社会での性犯罪は少ない日本と、小説や漫画の描写はナシだが実社会での性犯罪が多いその国。一体どちらが望ましい世界なのでしょう。

第四話「旅人の国」。

移民は、たった一人でも認めてしまったら次が断れなくなる。
(p.105)

そういえば、最近、不法入国の両親が日本で産んだ子供に関する判決があったような。

第四話はそれよりも、

両親と兄弟がいたのですが、どこへ行ってもやがて身元がばれて白眼視されるのに疲れ、ある日家に火をつけて心中してしまいました。
(p.125)

というシーンに、あるあると思ってしまいました。

第五話「必要な国」。

さぼるとすぐ下手になるから、毎日少しずつでもいいから体を動かせ
(p.153)

これはあらゆる仕事、いや、作業に関して言えることだと思います。三日やらないと全てを忘れるのは鶏だけではありません。

スペシャル収録「いろいろな話」に出てくるこの国って…

車輪も、鉄器も、科学も、文化も、全てのものは我が国が創ったのです!
(p.220)

いや、何でもありません。ちなみに、その証拠はと問うと、

これらの記録は、世界の歴史を記した〝全世界大歴史事典〟と、世界の発明・発見を記した〝全世界大達明発見辞典〟にしっかり記されています! それらに書かれていることで、全ては一片の疑問も挟むこともなく証明されているのです!
(p.221)

教科書に書いたから事実だという論理は国際的にも通用するようですが。

最後に、「あとがき」のインタビュー、時雨沢さんのコレ。

思いついたことは必ずメモを取る
(p.252)

これは私もそういう方針で生活しています。ちなみに私が今の時点で最後に書いたメモには「替え芯の一撃」と書いてあります。意味は問わないでください。


キノの旅XIII the Beautiful World
時雨沢 恵一 著
黒星 紅白 イラスト
電撃文庫
ISBN: 978-4048680684