Phinlodaのいつか読んだ本

実際に読んでみた本の寸評・奇評(笑)

記憶の果ての旅

今日の本は「記憶の果ての旅」。

ファンタジーということになっていますが、最近だとファンタジーというのは剣と魔法の物語的なイメージが強い…と勝手に思っているので、個人的にはこれはファンタジーというよりメルヘンです。何が違うのと言われても分かりません(笑)。具体的にといわれて最初に思い浮かぶのは宮沢賢治さんの作品です。

この作品は、仲間を見つけながら旅をするという構造になっています。仲間は手を合わせたら青い丸が浮かんでくるので判断できる、というのですが、青ということでまず思い浮かぶのはメーテルリンクさんの「青い鳥」。青い鳥は幸せの象徴で、それを探す旅の途中でいろんな国に立ち寄るというモチーフが、この作品にオーバーラップします。

内容的にはどこか作為的、教訓的、禅的なものを感じます。例えば、こんなフレーズが出てきます。

いま考えてもしょうがないというのは、そのとおりね。
(p.66)
こいつはこういうやつなんだと思えば、景色を見る邪魔にはならない。
(p.73)
本物の仲間といると、いまみたいに、わからないことのイメージが、つかまえやすくなるんじゃないかな。
(p.89)

このような考え方は、普段の生活に活かせると思うのですが、うまく埋め込まれているので、サラっと読んでいると気付かずに頭から消えて行って深層心理の中に定着するのではないかと思います。

たくさん歩いたあとで、うとうとするのは、気持ちいいだろうな
(p.112)

感覚は相対的ですから、疲れた後の休憩が一番気持ちいい、というのは理屈に合っています。

今日の一言は、

つらいことがあっても、苦しいことがあっても、生きていてよかったと思えるような、楽しいこともうれしいこともあった。
(p.243)

清原なつのさんのマンガに、似たようなセリフが出てきたと思います。


記憶の果ての旅
沢村凜
角川文庫
ISBN: 978-4041128305