Phinlodaのいつか読んだ本

実際に読んでみた本の寸評・奇評(笑)

あなたの人生の意味 上 (2)

最近は雑記ばかりでそろそろ「このブログは何なの?」、という感じになっているような気もするので、今日は、先日紹介した「あなたの人生の意味」に戻って、前回「(つづく)」と書いてしまったので、その続きを書きたい。

この本は第二章から後は偉人の紹介になっている。ストーリーはそちらを読んでもらうとして、興味のあった箇所を紹介していくことにする。

第二章はフランシス・パーキンズ (Frances Perkins) さん。1933年から1945年までのアメリカの第4代労働長官。労働環境の向上で有名だ。

パーキンズさんは猛烈なストレスに耐えるメンタルを持っていたのだが、それをどうやって身に付けたかというエピソードが面白い。

ラテン語の教師、エスター・ヴァン・ディーマンは、パーキンズには怠惰で自分に甘いところがあると考えた。そこで、彼女を勤勉な人間にすべく、先生はラテン語文法を利用することにした。
(p.75)

これはスパルタだ。つまり苦手で嫌なことを意図的にやらせているのだ。今の日本だといじめとかパワハラ認定されるかもしれないが、ディーマンさんはこれを嫌がらせやいじめのつもりでやったのではなく、パーキンズさんの能力を向上させようとしてやったのだ。パーキンズさんは後日それに感謝し、

「私はあの時はじめて自分の性格、人格というものを明確に意識するようになったのだと思う」
(p.75)

と言っている。もしかすると今の日本の若い人たちは、何に感謝しているのか理解できないかもしれないが。

もう一つ、化学に関する逸話が出てくる。

パーキンズは歴史や文学には関心があり、熱心に勉強したが、苦しんだのが化学だった。にもかかわらず、化学教師のネリー・ゴールドスウェイトは、化学を専攻するよう彼女をしつこく説得した。もし、最も苦手な科目を専攻し、試練を乗り越えて見事に卒業を果たすことができたなら、彼女はその先の人生でどれほど辛い目に遭っても耐えられるに違いない。
(p.75)

無茶苦茶な話のような気がする人が多いのではないか。今の日本の学生のように競争を強いられる世界に生きていると、わざわざ苦手な科目を選択するとそれだけで詰んでしまう。そこを克服することで自分を変えようという所まで考える余裕はない。

「学部生の頃の私は、苦手だった化学の勉強にとにかく神経を集中させた。本来苦手なことなので、短気を起こしそうになる自分を必死になだめなくては集中などできない。これによって私の精神は鍛えられ、磨きをかけられた。その後、何に取り組む時にもそれが役立ったと思う」
(p.76)

つまり根性が身に付いたのだ。現在の教育の流れだと、嫌なことを強制するよりも、得意な分野を伸ばすことに集中している。その結果失っていることがたくさんあるのではないか。

大学はまず、彼女に、生来の欠点を直視させた。いったん、自分がだめな人間であると自覚させたのだ。その上で、自分を磨き、向上させるように仕向けた。そして、向上した自分の力で外の世界にはたらきかけるよう仕向けた。
(p.80)

好きなこと、得意なことを伸ばすだけでは手に入らないものがあるのだ。STAP細胞ではないけど、人間はストレスで変わる要素も持っているのである。

今日の一言は、とても現実的なアドバイスになるかもしれないこれを。

薄汚れた世界では、正しく無垢な人間よりも、薄汚れた人間の方が役に立つ
(p.88)

(つづく)


あなたの人生の意味 上
デイヴィッド ブルックス
David Brooks その他
夏目 大 翻訳
ハヤカワ文庫NF
ISBN: 978-4150505264