Phinlodaのいつか読んだ本

実際に読んでみた本の寸評・奇評(笑)

レベル96少女、不穏な夏休み

今日は出屋敷市子シリーズから「レベル96少女、不穏な夏休み」です。もう夏休みどころか秋アニメが始まりますけどね。

4つの短編が入っています。最初の話「「地獄の窯の蓋が開く」とは「鬼だって盆は休む」という意味である」は「ひろパー」という遊戯施設に行く話ですが、この施設のオリジナルは「ひらかたパーク」でしょうか。私はひらかたパークに行ったことがあるのかどうか、よく覚えていません。もし行ったとしたら50年は経過していますが。

で、アトラクションとは無関係の蛍の話から。

そもそも蛍の幼虫の食べ物は川の貝で、川の貝は人間によくない寄生虫がいるので必死で駆除した歴史があり、蛍を放って卵を産ませても食べるものがないから育たない
(p.14)

蛍の幼虫って何食べるんだろ、と思って調べてみたら、カワニナを食べるとのこと。昔は寄生虫といえばサナダムシとかジストマ(?)が有名でしたが、最近はアニサキスしか聞かないですね。エキノコックスという名前は割と見るような気もしますが、患者はどの程度発生しているのでしょうか。

で、お化け屋敷に入るのですが、

まさかの本物襲来。
(p.24)

(笑)

これは怖い。見えないものが見えるというのは考えものです。 この世のものではないものを見ると目が潰れるから注意した方がいいそうです。具体的にどうするか。

「私は、まずいと思ったら目をつむる」
(p.49)

なるほど、見ないという条件を成立させるためには確実な方法です。心眼で見えてしまいそうですが、そこまでは責任持てません。ていうか、私が般若を見た時はメガネをかけてなかったのに綺麗に見えました。

2つ目の「正体を知らなくても恋愛はできる」は、ヘビのみずちのコイバナです。ただし相手はタルパ、使い魔です。化物語シリーズの斧乃木余接ちゃんみたいなものか。で、正体を知らなくてもというタイトルになるわけですが、

公正世界仮説という奴ですな。因果応報、努力は必ず報われ、不幸には必ず理由があると信じる前向きな者、
(p.104)

この説は知りませんでした。この後の説明が面白いのですが伏せておきます。サイコロを投げると一様に全部の目が出るらしいので、その意味では確率的に世界は公正なのかもしれません。

この話で市子は相手を折檻しますが、

私ごとき細腕で殴られて文句を言うな。私だって手が痛い
(p.111)

何か霊力がこもっていて痛そうなんですけど。

上位種という話が出てきます。ネットではやたらマウントという言葉が出てくるし、あまつさえマウントしたいと考えている人多数、しかもそれを公言して全く恥じる気配もない、という今の世の中がどうもよく分かりません。昔の感覚だと自慢するのは悪、マウントするというのは下劣な人間の行為だったのですが、最近はそういう考え方をしないのでしょうか。

〝こいつなぞいつでも殺せる〟と思えば簡単に他人より偉くなった気分になれる
(p.114)

実際は殺すと犯罪になるのでダメですが、このメソッドは思うだけでいいお手軽なもののようです。ヒドい上司のいるサラリーマンは使える技かもしれません。

まだ半分あるので、ここで区切ります。今日のいい言葉。

人間は生まれつき人間なのではない。人間になるとは大変なことなのだ。
(p.26)

(つづく)


レベル96少女、不穏な夏休み
汀 こるもの 著
講談社ノベルス
ISBN: 978-4062990882