今日は昨日紹介した「レベル96少女、不穏な夏休み」の続きです。
3つ目の短編「大切なものは目に見えないというのは簡単だけど」は、芹香が神様に取り付かれて(憑かれて?)しまい、史郎坊と何とかするという話。
やっちゃえバーサーカーができるのはイリヤスフィールの特権じゃ。
(p.128)
Fate/stay night ですか。いや、 kaleid liner の方か。このシリーズはこの話に限らず、アニメとかサブカル系の知識がそれなりにないと分からないことがよくあります。
霊山におなごが踏み入ってはならぬのは、主に石長比売の機嫌を損ねるからということになっておる。
(p.136)
男女平等とか言って霊山に入っていく女性が増えているような気がしますが、大丈夫でしょうか。ちゃんと理由があって男女不平等になっている場合があるので、そこを無視すると酷いことになります。
この話には怖い鬼が出てきます。缶ビールで交渉するというのが面白い。
言葉で欺くのは妖物には難しい。
(p.148)
やはり怖いのは人間、ということでしょうか。マニフェストとか政策とか信用してはいけません。ところで、
今どき未成年に酒を売ったら、店だってネットに晒されて炎上してしまう。
(p.172)
未成年に酒を売るだけでは罪にはならないのですが。
日本の法律では「未成年者が飲むことを知りながら酒類を販売・提供してはならない」と定められています。使い魔の未成年者に酒を売る行為は100%合法です。一体いつから「未成年者に売ってはいけない」という誤った風潮が広まったのでしょうか。
4作目の「貴方の人生は私のものではないのか」がこの本の中では秀逸です。この作品はオスカーワイルドの「幸福な王子」が背景になっています。
「ツバメはどうして死んでしまったの?」
(p.186)
ツバメは凍死していますが、王子を無視して南国に渡れば死なずに済んだよね、ということです。王子は幸福でいいのかもしれませんが、ツバメはどうよ、ということです。そもそも「幸福な王子」という話なんですから、ツバメはどうでもいいというシナリオで矛盾はありません。何なら「悲惨なツバメ」というタイトルでも構わない。
ツバメは王子様が好きなのに、王子様は困っている貧しい人のことばかり気にしてツバメのことなんかまるで見てくれない
(p.186-187)
そんな解釈もあるのか。まだまだ世の中には知らないことが多いようです。
この話では市子が虐待【謎】されます。
何だかんだ人間にひどい目に遭わされたことはないんだろう
(p.191)
宮様と言われてあがめたてまつられていますから。しかし今回は食事も与えられずただ働きさせられて、最後は勝手に結婚させられそうになって助けを求めてくる話です。ツバメ役です。しかし市子は洗脳された状態で、
「世の中には飢えた子供がたくさんいる、私のような者が空腹を訴えたりするのはみっともない……」
「あんたが飢えた子供だよ!」
(p.228)
市子のレベルでも簡単にこうなるものなのでしょうか。まあ子供って設定だし。
市子の担任の先生が何だかありがちなのが面白いです。
見た目こそぽっちゃりしていて眼鏡で温厚そうだが、いじめと聞いても「うちの生徒に限ってまさかそんな」と笑ってごまかすタイプ
(p.233)
図体のイメージ的にはスラムダンクの安西先生みたいな感じでしょうか。諦めたらそこで program は終了だよ。
ご飯を食べられなくて苦労するなんて、しょうもない。
(p.243)
古代の類人猿ならともかく、今の時代、科学が進歩しすぎて、もしかすると働かなくても誰でも食えるような時代になってますからね。実際は飢餓で困っている人達が世界中に大勢いますが、それは食べるものがないのではなく、人間がそういう社会にしているからです。全員が2人分食える社会になっているのに、富裕国の国民が1人で3人分食うから足りなくなる感じ? もしかすると2人分食って1人分捨ててさらにダイエットしている。
ツバメは王子を愛していて王子の願いを叶えてやりたかった――動物である上に同性愛です。本来、キリストの定める天国に入る資格がありません。
(p.245)
同性愛はともかく、天国に動物はいないのでしょうか?
レベル96少女、不穏な夏休み
汀 こるもの 著
講談社ノベルス
ISBN: 978-4062990882