Phinlodaのいつか読んだ本

実際に読んでみた本の寸評・奇評(笑)

飛鳥昔語り

今日はマンガ、清原なつのさんの「飛鳥昔語り」。1975年から1982年に「りぼん」などに掲載された7作品と、「飛鳥昔語り」を描いた頃の自分紹介のエッセイ漫画が描きおろしで入っています。

この中で一番印象に残っているのは「桜の森の満開の下」。坂口安吾さんの同名の小説とはまるで関係ないのですが、あるとしたら桜の森の花の下を通ると気が狂うという設定と、本作に出てくる兄が変態というのが共通【どこが】ということでしょうか。

主な登場人物は、桜の森高等学校生徒会長の優秀な兄と、アホなその妹、そして妹の友達のイオナです。兄はイオナと初対面のときにイオナの髪に触ろうとしてひっぱたかれて、しかもその場でプロポーズして嫌われます。なぜ触ろうとしたのか。

とても
挑発的に
風になびいて
いたんだよ
(p.161)、

意味が分かりませんが、イオナも悩んでしまいます。

髪の毛
ダケが
愛されているのか
髪の毛コミで
愛されているのか
(p.185)

この兄は自宅では破天荒な変態、学校では品行方正な生徒会長を演じ分けていますが、イオナに、

二重人格の
変態!
(p.164)

と罵られて悩んでしまい、

二重人格に
分裂している
この性格を…
ひとつに
まとめれば
よいのか?
(p.168)

と悩んで出した結論が、家でやっている変態を学校でやればいいのだということに。

目先の東大より
一生の女
(p.168)

短絡的も度を越してしまえば何の話か分からなくなってきますが、本編でテーマになっているのは外見と内面の乖離、日常生活の演出に対する批判、というところでしょうか。誰もが何かを演じながら生きている、だかそれはいいことなのだろうか、みたいな。少女漫画っぽいテーマなのかどうかよくわかりませんね。

二重人格をやめて、家の外でも変態になった兄をイオナが見て、どうしたのかと尋ねたら、

変態に
徹することに
しました
(p.176)

このセリフは落っこちた川(堀?)の中から言うのですが、泳いでいるところに The Beatles の曲のタイトルが並んでいます。何のことか分かりません。

収録されている他の作品では、「飾り窓のあかね姉さん」とか、この複雑な人間関係のストーリーをよく「りぼん」に載せたものだと思います。

ところで、書きおろしの「飛鳥昔語りの頃の事」では、清原さんが大学の実験室で試験管を洗っているコマがありますが、一体何の実験だったのでしょうね。


飛鳥昔語り
清原 なつの 著
ハヤカワコミック文庫 (JA843)
ISBN: 978-4150308438