今日は西遊記の「下」です。
これで完結なのですが、完訳を読んでの感想をいくつかまとめてみると、
・三蔵法師が案外情けない
坊主なので食事とか貞操みたいなのはガチガチなのですが、すぐに泣きごとを言うし、悟空の言うことは信用しない。妖怪に騙される。何度も同じ失敗をします。よくこんな人間がお経を取りに行けたものです。マンガ「最遊記」の三蔵はタバコ吸って麻雀打ちますからね。
・天上界は結構杜撰
地上で悪さをする妖怪が大抵、天上界から逃げ出した家来とか妖精とかで、しかも逃げたことに気付いていないとか、
八百里の獅駝山という険阻な山に、獅駝洞というのがあった。一の大王・二の大王・三の大王。あわせて三人組の妖怪が巣ごもっていた。
(p.159)
この妖怪というのが強敵で悟空ですらなかなか勝てないのですが、
一の大王は、文殊ぼさつの乗り物の青獅子。二の大王は、普賢ぼさつの乗り物の白象。どちらも七日(地上の数年)前に、ぼさつの隙をうかがい、娑婆におりた。
(p.182)
三の大王はもっと強敵の大鵬で、如来が取り押さえに行って一件落着となるのです。7日も放置というのが酷い話で、何かとしろと言いたくなります。神様はいい加減だというのは化物語でも指摘がありましたが、わざとやってるんじゃないかと思う位デタラメです。ま、それでないと話にならないのですが。
・騙すのは悪くない
基本戦略は騙し討ちです。誠意も何もあったものではない。中国の古典は大抵そうですが、相手を騙して勝てばそれが正義で、汚い勝ち方なんてものはありません。もっとも、正攻法で勝てなければ奇襲しかないので、仕方ないといえば仕方ない。
最後は孫悟空、猪八戒、沙悟浄に仏号を与え、めでたしめでたし、なのですが、何とも釈然としない話です。