Phinlodaのいつか読んだ本

実際に読んでみた本の寸評・奇評(笑)

菜根譚 (10)

今日は菜根譚から「動中の静、苦中の楽」。

静中静非真静。動処静得来、纔是性天之真境。楽処楽非真楽。苦中楽得来、纔見心体之真機。
(p.126)

前半は現代語訳が絶妙なのでまず紹介する。

静かな環境の中で心を静かに保つことができたとしても、それはほんとうの静かな心ではない。
(p.127)

この後、「わずらわしい環境」の中でも心を静かに保つことが出来たら本物、という話に続くわけだが、ここでは性天の真境という表現がいい。真の境地ということだ。静かなところで冷静でいられるのは当たり前で、他の人がパニクるような場面でも冷静でいてこそ冷静なのである。

ここまでは直感的に分かるのではないかと思うが、後半は難しい。苦中楽というのは何だろう。

苦しい環境の中にあっても、心が楽しむことができれば、
(p.127)

そう言われたら、心が楽しめるのならもはや苦しい環境とはいえないのではないか、という疑問もわいてくる。心頭滅却すれば火も涼しいというが、熱いものは熱いし、痛いものは痛い。痛いのが楽しいと思えるようになったら変態だ。

静と動、苦と楽というのは相対的だ。億万長者が今日は取引に失敗して1億円しか儲からなかったと苦しんでいる。貧乏な人がポケットから10円出てきたので喜ぶ。比べてみると真機が見えてくる。

 

菜根譚
講談社学術文庫
中村 璋八 翻訳
石川 力山 翻訳
ISBN: 978-4061587427