なぜ「3と1/2さつめ」、という中途半端なナンバリングかというと、あとがきに、
「浜村渚と刑事たちがテロ組織と戦う」という本筋からはちょっと離れた内容なので
(p.369)
と書いてありました。なるほど。意味不明ですが。今回は殺人事件。クイーンのように読者への挑戦状とか出てきます。私は無視して推理せずに読んでしまいましたが、推理すると面白いかもしれません。
タイトルに「ふえるま島」という名前が出てくるることからも推測できるように、本編は、フェルマーの最終定理がメインの伏線【謎】になっています。フェルマーの最終定理は有名なので今更説明する必要はないと思いますが、要するに余白が足りないと証明を書くことができないという定理です【嘘】。
他にもいろいろ数学ネタが出てきますが、例えば双子素数 (p.54)、ニコラ・ブルバキ (p.76)、フェルマー数 (p.79)、パスカルの三角形 (p.98)、クラインの壺 (p.125)、無限降下法 (p.207)、岩澤理論 (p.347)など、数学マニアになじみ深い言葉が出てきます。ミステリ的には殆ど関係ないので安心です。
パズル・クイズ的なネタも出てきます。これも有名だと思いますが、天秤クイズ。
「この8枚の金貨の中に、1枚たけ、偽物が混じっています」
「偽物は他の7枚より、ほんの少しだけ軽いのです。さて、確実に1マイの偽物を見つけるのに、最低この天秤を何回使えばいいでしょう?」
(p.58)
このクイズのバリエーションとしては、重いか軽いか分からない前提の問題もありますね、もう一つ、こちらも割と有名なクイズだと思うのですが、
「私の遺した23の飲食店の店舗について、長男には全体の1/2、次男には全体の1/3、三男には全体の1/8を分け与えるものとする」
(p.178)
同じ解法を使う問題を別のブログで紹介したことがあります。
ジュースを50本飲むには何本買えばいいか: Phinloda の裏の裏ページ
浜村渚の計算ノート 3と1/2さつめ ふえるま島の最終定理
青柳 碧人 著
講談社文庫
ISBN: 978-4062773010