Phinlodaのいつか読んだ本

実際に読んでみた本の寸評・奇評(笑)

銀河鉄道の夜

先日紹介した「銀河鉄道の夜」。今回は、ますむらひろしさんがコミックにしたものを紹介します。

【honto 電子書籍】銀河鉄道の夜

この本には、本編だけでなく、ちくま書房版に出ている第三次稿をマンガにしたブルカニロ博士篇がも収録されています。宮沢賢治さんは第三次稿の後に第四次稿を書きましたが、ますむらさんは逆でブルカニロ博士篇を後から書いたという順序の逆転があるので、最初に書いたマンガと何が違っているかを見比べてみるのも面白いです。

このマンガでは、登場人物がになっている以外は、基本的に極めて忠実に原作通りに描かれています。特に言葉については、宮沢賢治さんの表現をその通りに使っている箇所が多く、このため現代日本語に比べると違和感があるのですが、かえってそれがファンタジックな不思議な世界を作り上げています。

あとがきにありますが、最初のマンガを描いたときには三角標の意味が分からず、想像で描いたら、読者から、

それは三角測量をする時、山中などで測量の際、丸太を組みあげたもののことです。
(p.322)

という指摘があったそうです。ブルカニロ博士篇では、三角標がこの形になっています。

ところで、前回紹介した賛美歌の番号が欠落している件ですが、最初の話では306番(p.77)、ブルカニロ博士篇では249番(p.228)となっています(第21刷)。この歌はマンガの中では「主よみもとに」となっています。この歌は物語中では船が沈没するエピソードで描かれていますが、タイタニック沈没のときに演奏されたことで有名です。「主よみもとに」は賛美歌320番で、アニメ「フランダースの犬」の最終回でネロが天国に行くときのBGMにも使われています。賛美歌というとクリスマスのイメージがあるかもしれませんが、この賛美歌は死ぬときに歌う歌なのです。


銀河鉄道の夜 (ますむら・ひろし賢治シリーズ)
ますむら ひろし 著
宮沢 賢治 原作
扶桑社文庫
ISBN: 978-4594016982