Phinlodaのいつか読んだ本

実際に読んでみた本の寸評・奇評(笑)

琴浦さん

一冊紹介する予定だったのですが、何か読みかけの本ばかりで片付かない感じなので、今日もアニメです。2013年の冬アニメで、「琴浦さん」。原作はマンガで、作者はえのきづさん。

ジャンルはラブコメ。ちょっとSF入っています。ヒロインの琴浦さんは、他人の心を読めます。ていうか、無意識に読んでしまいます。それでうっかり口を滑らしたりして、ハブられてしまいます。実の親にも嫌われて、逃げられてしまうのです。

そして、転校した高校で出会った真鍋くんが、琴浦さんに興味津々。普通は心を読まれたりするのは嫌だと思うのですが、琴浦さんの目の前でも平気でエロい想像をするという暴挙に出ます。心を読まれる前提でそういうことを考えるというのは、妄想ハラスメントというべきか。

琴浦さんは ESP研究会に、無理矢理メンバーにされてしまいます。本物のエスパーですからね。このESP研究会の副部長の室戸が、キャラとしていい味出しています。

ESP研で超能力占いをするシーンがありますが、占い師が相手の心を読めるというのは最強です。ちなみに、今読んでいる本に出てくるナンシー・スプリンガーさんの「化身」という短編に、「あててみようか男」が出てきます。この男も本当に相手の考えていることが読めるので、当たります(笑)。

アニメのシーンで説得力があったのはカラオケ。琴浦さんが超絶音痴なのがよく表現されています。こういうのは声優さんも大変そうです。あえて音痴に歌うのって、歌が上手い人だと難しそう。

アニメの公式サイトでキャラクターの確認をしようとしたら、Flash のサポートが終了したとかいわれて参照できない…というのは困ったものですが。

 

ひなろじ ~from Luck & Logic~

今日はアニメで「ひなろじ ~from Luck & Logic~」。2017年夏アニメです。

先日紹介した「ラクエンロジック」の続編。といっても殆ど話に連続性はないので、本編だけで楽しめます。ちょっと年齢低い女の子たちが出てきます。Fate シリーズの Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ、みたいな感じ。変身シーンとかちゃんと出てくるし、世界観はラクエンロジックを引き継いでいますが、本編はかなり魔法少女ものになっています。

女子寮に露天風呂があるというのは、日本では日本経済大学の福岡キャンパスに実在するようですが、お風呂シーンとか出てくるのはお約束ということで。

ひなろじで面白いのが次回予告。大人たちが夜の居酒屋でグチったりダベっているシーンになっています。第1話は YouTubeBANDAI NAMCO Arts Channel で公開されているので、興味のある方はぜひ 23:40 あたりからの会話を。

 

アステリズムに花束を 百合SFアンソロジー

2月最初に紹介する本は、「アステリズムに花束を」。表紙には百合SFアンソロジーと書いてありますが、そんなに百合していないので、そっち方向を期待したら少しがっかりするかもです。9つの作品が収録されています。

森田季節さんの「四十九日恋文」は、死んだ人と49日だけメールで、1日1回やりとりできる、という謎の設定が面白いです。その発想はなかった。しかも最初は49文字使えるのがだんだん少なくなっていって、最後に1文字しか送れないというのがいい。1文字になった時に何とメールすればいいか、というのは自分で考えてみると超絶難しいことですね。

途中に出てくる、コレが面白かった。

出社前に栞の墓掃除した。私って善人
偽善者さんこんにちは。ただの石やで
(p.53)

死んだ本人にそう言われてしまったらどうしようもありません。

草野原々さんの「幽世知能」は、次の発想がいい。

あらゆる物理系は、情報処理能力を持ったコンピュータだといえる。
(p.81)

そこであの世(幽世)を計算機として使おうということになります。この本はSFなのですが、昔に比べるとAI・人工知能、さらに発展した知的情報体ネタが増えているような気がします。以前紹介した、小川一水さんの「天冥の標」もそうですね。

落ちていく……。落ちていく……。
(p.103)

鬼滅の刃の例のCM、受験シーズンになったら放送しなくなったような。

陸秋槎さんの「色のない緑」は情報科学SF。computer science fiction です。タイトルの元ネタはチョムスキーの「Colorless green ideas sleep furiously.」です。チョムスキーは大学で習ったのですが、懐かしいな。この英文の情報科学的な意味もちゃんと本文中に解説されているのでご安心を。ちなみにこのストーリーには退色した元緑色のペンダントが出てきます。


アステリズムに花束を 百合SFアンソロジー
ハヤカワ文庫JA
S‐Fマガジン編集部 編集
ISBN: 978-4150313838

ラクエンロジック

今日はアニメで「ラクエンロジック」。2016年の冬アニメです。

ジャンルは異世界SF美少女バトルアクション。そんなジャンルあるのか…

人間がテトラヘヴンという異世界からやってきた神と合体して合理体に変身して、使者(フォーリナー)と戦います。使者の強さはパラドクスレベルといい、数値が大きいほど強敵です。終盤に出てくるルシフェルはパラドクスレベル9.8。まあ普通に戦えば勝ち目のない無敵レベルです。

主人公は剣美親(つるぎよしちか)。アテナと合体して戦います。他にも合体して戦うペアがいますが、女性と女性のペア。魔法少女モノではお約束の変身シーンもちゃんとあります。

タイトルにロジックという言葉が出てきますが、神と合体できる人間をロジカリストと呼びます。このあたりは科学的な設定というより、言葉遊び感があります。深く考える必要はないです(笑)。カワイイ女の子がたくさん出てくるのでそれでok。ちなみにラクエンロジックというのは Luck and Logic らしい。

最終的には神と人の共存する世界を模索する、というテーマらしきものが見えてきますが、そこは何かを風刺する意図があるのかもしれません。このアニメの見所としては、ALCAという組織の一員であるロジカリストが、とにかく独走する。指示に従わない(笑)。こんなのでやっていけるのか、というと微妙にやり辛い感じで、アニメなのでそれでも何とかなっていますが、現実世界でこれだと内乱が起きるのではないかと。

 

100万分の1回のねこ

ベストセラー絵本、「100万回生きたねこ」には7回分の生きたエピソードが出てきます。7回目は白いねこと暮らす最終回ですが、その他のエピソードは6回だけ。流石に100万回全てを書かれたら読み切れなりそうですが、残る 99万9993回は一体どんなことがあったのか、絵本には描かれていません。

今回紹介するのは、そこをいろんな作家が書いてみたという、「100万分の1回のねこ」です。著者は、江國 香織 さん、岩瀬 成子 さん、くどう なおこ さん、井上 荒野 さん、角田 光代 さん、町田 康 さん、今江 祥智 さん、唯野 未歩子 さん、山田 詠美 さん、綿矢 りさ さん、川上 弘美 さん、広瀬 弦 さん、谷川 俊太郎 さんの13名。

前提条件として、出てくるねこは同じねこのはずなのですが、作家によって微妙というか、場合によっては激変している感じがして面白いものです。もちろん、ねこよりも飼い主の方がさらに面白い。いろんな人が出てくるのです。

読んだことのある本しか、あたしは読まない。もう知っていることしか知りたくない。
(p.63、ある古本屋の妻の話、井上荒野)

私なんかだと逆で、まだ読んだことのない本をどんどん読みたいのです。読書は趣味ですから、今まで結構な数の本を読んだとは思っていますが、この本みたいな面白い本に偶然出会うことがまだあるのです。

誰かが、40歳になったら新しい本は読まない方がいい、というような主張をしていたような記憶がありますが、その人は、40歳になれば、読んだ知識を活かす番だと言いたいのだと思います。

昔、百万男というTV番組がありましたが、「百万円もらった男」は実に悲惨です。

ああ、腹が減った。動くと腹が減るのでじっとしていたら、腹が減りすぎて動けなくなってしまった。
(p.117、百万円もらった男、町田康)

これはもらう前の話ですが、この男、自分の才能を百万円で売ってしまうのです。そこからのセコイ贅沢は妙にリアルで実に面白い。例えば、

普段から行きたくて行きたくてたまらないのだけれども高いから行けず、いずれ出世したら絶対に行ってやろうと思っていた焼き肉店
(p.125)

で食いすぎて気持ち悪くなります。まあ人生そんなものかも。私もそういう店はたくさんありますね、昼のランチ1000円超だと、ほぼ躊躇します。

関係ありませんが、町田さんの話には面白い人が出てきます。

画面に大写しになっていたのは間違いなく合間妹子。
(p.150)

私はプログラムのテストでユーザーを作る時に合間妹子という名前を使うことがあるのですが、そんなに曖昧な人が本当に出てくるとは思いませんでした。実在しない人物を考え直さないと。ていうか小説なんだから実在しないのか。ちょっと小野妹子みたいでレトロ感のある名前でしょ。

ところで、卵か鶏かという話になりますが、オリジナルの「100万回生きたねこ」を次のように紹介している箇所があります。

百万回も死んで百万回も生きた「ねこ」という猫の話。
(p.193、100万回殺したいハニー、スウィート、ダーリン、山田詠美

時系列的には、百万回生きて百万回死んだ、ということの方が適切だと思うのだが、いやまて、死なないと生きていたことにならないから死んで生きた、ということになるのかな…、とか考え出すと奥が深いです。


100万分の1回のねこ
講談社文庫
ISBN: 978-4065139981

一瞬と永遠と

今日は萩尾望都さんの「一瞬と永遠と」。マンガではありません。挿絵すら出てきません。

モー様のエッセイを集めた本です。いろんなネタが出てきますが、手塚治虫さんのマンガのエッセイが案外多くて、やはり影響力が凄いのだな、と思い知らされました。

視点も何かヘン、いや天才的です。クックロビンといえば個人的にはパタリロのイメージなんですが。

「そんなに多くの鳥たちに殺されなければならなかったなんて、クック・ロビンてやつは一体何をしでかしたんだ?」
(p.061)

ま、確かにマザーグースは肝心な所が謎なんですよね。

ヘンではありませんが、河合隼雄さんの「青春の夢と遊び」へのエッセイでは、こんな話が出てきます。

人生相談では司会者が「ああしなさい、こうしなさい」とアドバイスと説教をくりかえしているが、心理学もカウンセリングもまったくそういうものではない。
(p.082)

最近は心理学を学ぶとメンタリストになれると信じている人が多いような気がしますね。

寺山修司さんに関しては、このような感想が。

大の男に少女感覚が読み取れるというのは、たいそうまれな才能だ
(p.106)

個人的には、つんく♂さんとか凄いと思います。個人的には萩尾望都さんのマンガはジェンダーレス感があるんですけどね。

面白いという感覚に二重性が出てくるのは、基本といえば基本なのですが。

スシリーエフの「白鳥」の、国王が実は悪魔だという二重性はおもしろい。
(p.210)

読者がこうだろうと思って先入観で接していて裏切られる、というのがやはりポイントなのです。国王なんていうと最初から善人か悪人か分かるパターンが多いと思うのですが、悪人だと思っていたら実は真の悪と戦っていたとか、そういうパターンも案外定番なのかも。吾妻ひでおさんに「実は私が宇宙人」というネタがありますが…


一瞬と永遠と
萩尾 望都 著
幻戯書房
ISBN: 978-4901998758

装神少女まとい

今日はアニメで「装神少女まとい」。2016年の秋アニメです。

いわゆる魔法少女モノ。ギャグを交えた感じの正統派魔法少女【謎】です。ヒロインは皇(すめらぎ)まとい。いかにも神様っぽい名前です。

タイトルにあるように、変身して神の衣を纏った状態になるのですが、変身する時に服が神衣に変化し、変身が解けるとそれがどこかに行ってしまい、結局裸になるので大変。変身する度に服がどんどん消えていくので着るものに困るというのはリアルな話なのかギャグなのか。

まといと一緒に戦う「ゆま」が狐の神と狸の神を纏えるというのが和風で面白いです。狸を纏った時はやたら強いし。

敵はナイツと呼ばれる高次元の生命体です。戦う時に普段の次元よりも高次元の世界に移動して戦うというシナリオです。高次元を2次元のアニメでどう表現するんだ(笑)という大問題があるはずなんですが、うまく誤魔化しているようです。次元というよりレイヤーでしょうか。もっとアバンギャルドな世界でもいいような気はしますが、やりすぎると訳が分からなくなるのかも。

キャラが個性的でカワイイので、割と安心して観ることができると思います。