Phinlodaのいつか読んだ本

実際に読んでみた本の寸評・奇評(笑)

くらもちふさこ デビュー45周年記念 ときめきの最前線

今日はマンガの特集本で、「くらもちふさこ デビュー45周年記念 ときめきの最前線」。

昔はこの種の本としては「ぱふ」が有名でしたが、その種の本は絶滅したのでしょうか。ユリイカがたまに漫画家の特集をしていることがあるようですが、今回の本は、たまたま書店に並んでいたのを見つけて手にしたわけです。

インタビューが意表をついていて、結構面白いです。例えば SPECIAL Q&A というコーナーですが、

Q49 いつまでも乙女心を失わない秘訣は?
いつまでも大人になれないだけです。
(p.015)

また、今の少女マンガは読まれているかという質問に対して、

読むのは男性の作品が多いですね。『へうげもの』(山田芳裕)とか。
(p.083)

少女マンガとは対極な感じですね。絵柄もネタも。

漫画家さんからの寄稿もあって、これも面白いです。

くらもちさんは色彩センスがいつも抜群で、見るたびに「さすがに武蔵野美術大学出身は~」と言ってたら、中退だとおっしゃるので、ということは生まれつきのセンスか、とますます感心したのでした。
(p.018、特別寄稿 萩尾望都)

微妙な褒め方のような気も…。文章だけでなく、漫画的な寄稿もあります。

全作品中から、アンケートで1位になったセリフはこれだそうです。

麻子はシチューが得意です
(p.085)

「いつもポケットにショパン」から、麻子の母の須江愛子のセリフ。「先生のお子さんにはそんなこと(包丁を使った料理を作ること)させられますか?」と問われて、返事をするシーンのセリフです。ピアニストやギタリストは指に傷がつかないように、危険を極限まで避けるといわれていますが、麻子のシチューというのは何となく味も想像できる気がします。肉には筋がありそうですね。

 

くらもちふさこ デビュー45周年記念 ときめきの最前線
くらもちふさこ
文藝別冊
ISBN: 978-4309979144

散歩するネコ れんげ荘物語

今日はれんげ荘シリーズの第四弾、「散歩するネコ」です。今回は文庫本ではなく単行本。

前回倒れたキョウコの母は記憶喪失になっています。ただ、キョウコとしては、ケンカせずに済むので、それがかえって都合がいいようです。キョウコの母の性格を、キョウコは、

彼女には他人の役に立つとか、そういった考えはみじんもなく、すべて自分中心でしか物事を考えられない。
(p.44)

てな感じで考えています。そういうのは子供に伝染しそうなものですが、どこでおかしくなったのか、いまいちわかりません。働く気がまるでないというのを除くと、キョウコはかなりありふれた人間なんですけどね。今、森茉莉さんの「贅沢貧乏」を読んでいるのですが、これもスゴイ本なので、そのあたりから何かヒントがあったのかもしれませんが。

今回の本のタイトルですが、ある日散歩に出かけると、小型犬を連れて散歩している人がいたので近付いてみると、

そのリードをつけて地べたをゆうゆうと歩いてきたのはネコだった。
(p.48)

このネコがぶっちゃん、キョウコの部屋にたまに遊びに来ていたネコなのです。というわけで「散歩するネコ」というタイトルになるのです。散歩させていたのはネコの飼い主で、部屋飼いにしているのに逃げ出して、キョウコの部屋には来ていたのです。

今作は、クマガイさんのお言葉が光っています。例えば。

「誰も明日はわからないのよ。だから享楽的という意味ではなく、なるべく自分が楽しく過ごせるように過ごしましょうということよね」
(p.65)

刹那主義でもないし、なにか大悟したような感じがしますね。

生きているうちは、心が痛むけどいわなくちゃいけないことが何度かあるのよ。
(p.130)

これもクマガイさんのお言葉です。人生経験者的な重みがあります。

キョウコさんは今回、コナツさんに振り回されるのですが、キョウコさんが身に付けている処世術として、テキトーに受け流すという技があります。どんなのかというと、

相手の言葉をいつも真正面からとらえずに、腹の中で、
(あー、はいはい、またはじまった)
と受け流すとか、
(p.86)

一流企業の戦士には必要なスキルですね。チユキさんもなかなか深いことを言います。

やっぱり歳を取らないとわからないことってあるんですね
(p.112)

歳を取っても分からないこともありますけどね。


散歩するネコ れんげ荘物語
群ようこ
角川春樹事務所
ISBN: 978-4758413312

幸腹な百貨店 デパ地下おにぎり騒動

今日は「幸腹な百貨店 デパ地下おにぎり騒動」。シリーズ2作目。

誠に勝手ながら、十一月末日をもって営業を終了させていただきました。
(p.7)

いきなりこんな張り紙で始まるから百貨店が潰れたのかと思いましたが、これは別の店の話。肉豆腐が美味い店です。とはいえ、今回も堀内百貨店はピンチで、飲食部門にテコ入れすることになります。

茶店のマスターの新田は、こんなことを言います。

専門店として客を惹き付けるなにかが必要。でも、そのなにかは不明。
(p.53)

どの店にもありそうな最優先課題ですね。新田はいろいろ工夫してコーヒーを出そうとするのですが決定打にならないようで、工夫をすると今までに満足していた客には不興だったりするのでややこしい。

さて、今回はタイトルにもありますが、おにぎり屋の話です。がんこオヤジのいる「米よし」と、おばあさんが作る「おかず屋はる」です。実は米よしは「おかず屋はる」の息子がやっている店なので、おにぎりはそっくりのものが出てくるのですが、お惣菜や売り方にこだわりがあるわけですね。

そういえば近所におにぎりを売っている米屋があります。周囲の店が次々と閉店する中、とうとう最後の店になりそうな感じですが、小売店というのはどこも厳しい状況なのでしょうか。

この「おかず屋はる」が百貨店に進出するのですが、「おかず屋はる」の清司が、新規オープンのフードコートを立ち上げるときにリーダーとして大活躍します。

「卒業後、ずっと都市計画とは無縁の場所にいたから、一生机上の空論で終わると思っていたけど、使う機会があってよかった。
(p.336)

都市計画のノウハウがフードコートの店舗配置に活かせたとか、大学で学んだ知識が思わぬところで役に立ったわけですね。応用力というのは重要なのです。


幸腹な百貨店 デパ地下おにぎり騒動
秋川 滝美 著
講談社文庫

10代のための疲れた心がラクになる本

今日は紀伊國屋書店では心理学コーナーに置いてあった本で、「10代のための疲れた心がラクになる本」。高校生がターゲットで、とても読みやすいです。

個人的には、ストレスフルなプログラマーにオススメではないかと。

ストレスは、ほどほどにはあったほうがいいのです。
(p.34)

ストレスフルもダメだけど、ストレスレスだと抵抗力が付かないとか、伸びなくなったりするようですね。

私は小学生の頃に2度転校したせいか、ぼっちが平気な性格になってしまったのですが、最近の生徒は人間関係が大変らしいです。スマホで LINE とか SNS を使うようになると、コミュニケーションが下手な生徒はどんどん病んでいきます。

自我がうまく形成されないケースがあるというのですが、その原因は、

一番目は、過保護、過干渉で育ったケース。
二番目は、幼いときに心に深い傷を負うようなトラウマ体験(虐待、ネグレクトなど)をしていて、それを引きずっているケース。
三番目は、もともと気質的に敏感で人の気持ちを読みとりやすいというケース。
(p.105)

相手に合わせた行動がデフォルトになってしまって、自分が何をしたいか分からなくなるというのです。ネットでも「夢がない」とか「大学に行きたいけど目的がない」という、わけの分からない質問がたくさんあります。そのような人達が社会に出たら一体どうなるのか、不安ですね。

自律神経失調症を治すのには、背中のコリをほぐすといいという説があります。

では、ガチガチに固まった背中のコリをほぐすと、どうなるか。
(p.123)

まず背筋が伸びるという話から風桶理論的に展開して、最終的に気分が明るくなるというのですが、本当かな。理屈は合っていそうですが、そう上手くいくのか。とはいえ、背筋を伸ばすと何かいいことがありそうな気は猛烈にしますね。

最近(そうでもない?)、ネットでよく見かける表現「ムカつく」に関して、なぜそのような表現を多用するのか調べてみると、

「ムカつく」とはどういうことを指すのか、その子自身わかっていないで使っていたのです。
(p.150)

表現を知らないから、「くやしい」とか「がっかり」とか、嫌な感情が全部「ムカつく」という表現になってしまうのですね。ウザいや死ねという言葉も同じ原因で使われているのではないかと指摘しています。「ウザい」という言葉しか知らないと、ウザいと表現するしかないですからね。


10代のための疲れた心がラクになる本: 「敏感すぎる」「傷つきやすい」自分を好きになる方法
長沼 睦雄 著
誠文堂新光社
ISBN: 978-4416519387

お前ら全員めんどくさい! (10)

あはは、もうネタがない。雑記しかないか。と思いきや、このマンガ出ていたので買ってしまいました。

この巻で完結です。個人的にはこのオチは期待外れですが。#48 に出てくるクリームソーダ、今時ああいうクリームソーダを出してくれる店はあるのでしょうか。新宿に一軒、思い当たる店があったのですが、その店が今もあるのか…という所に自信がありません。後日確認してみます。

個人的には、このメンバーだとやはり榎本さんがいいですね。


お前ら全員めんどくさい! (10)
TOBI 著
フレックスコミックス
ISBN: 978-4866750972

幸腹な百貨店

図書館に本を借りに行ったら、今はカウンターしか開いてなくて、アニメに出てくる裏世界のカウンターみたいになっていました。ラウンジの照明とか落としているので雰囲気も最高です。そろそろネタがなくなってきたけど、今日は「幸腹な百貨店」。シリーズ3作目を最近紹介しましたが、その1作目です。

あらすじをざっくり紹介すると、落ち目になったデパートを復活させる話です。主人公は高橋伝治。本作では事業部長かな。社員の花村瑠衣と、他の百貨店勤務の古谷、この3人でメシを食いながら作戦会議をしますが、その会話が途切れたところで料理を持ってきます。

会話が途切れたまさにそのタイミングで料理を運び、間を持たせるように説明を加えたのだ。
(p.80)

蕗の煮染めが話の途中で出てきます。

かすかに醤油味を感じ取れるものの、それより遥かに蕗そのものの味が感じられた。
(p.141)

つい最近、フキノトウを採ってきて味噌汁に入れて食べたのですが、フキの主張が半端なかったです。

話は全体的には昔の人と若い人とのディスコミュニケーションをどうやって解決していくか、というパターンなのですが、最近の若い者は酒が飲めない、というのが面白い。

酒の吞み方なんて、学校では教えない。昔はサークルや部活の呑み会で先輩から教わることもあったが、今はそういった場の飲酒自体が制限される傾向が強いらしい。
(pp.102-103)

私は酒の吞み方はどちらかというと入社してから先輩に教わったような気がします。もっとも、当時は中卒の時点で皆、ビールとか飲んでましたけど。

幸腹な百貨店
秋川 滝美 著
講談社文庫
ISBN: 978-4062939034

ネコと昼寝 れんげ荘物語

今日は、れんげ荘シリーズの3作目。「ネコと昼寝」。

猫が出てきますけど、大したことはないです。キョウコは相変わらずぼーっと生きています。平和そのものですが、自分から隠者になったようなものですから、

しかし他人は、中年女が赤い口紅をつけていようがいまいが、そんなことなど気にしていないのだ。
(p.73)

他人も気にしないわけです。まあ大抵の人は自意識過剰で、世間は自分が思っているほど他人に興味を持っていないものです。個人的にはいつでも図書館に行ける生活というのは夢のような生活ですけど、最近は図書館の書架がコロナ対策で閉鎖されていますから、とんでもない時代になりましたね。ところで、

また気が向いたら来てくれるかもしれないと期待しつつ、『贅沢貧乏』を手に取ったが、一時間おきに窓の外を確認し、読書には身が入らなかった。
(p.90)

そんな本、本当にあるのかなと思っていたら、森茉莉さんの本ですね。読んだことはないので今度読んでみます。キョウコと付き合っていたオオバという男が面倒くさすぎてなかなか面白いのですが、

キョウコが別れを切り出すと、
「おれと別れると一生後悔するぞ」
といわれ、どういう意味かと首をかしげたが、未だにわからない。
(p.104)

んなの何も考えなくても、相手も何も考えてないでしょ。意味はないはずです。

お隣のチユキさんによれば、掃除のコツは、習慣にすることだそうです。

溜めるとあとが面倒くさいですからね。
(p.117)

まあ確かに。disk full になったら swap で処理できなくなりますから作業しようにも身動きが取れなくなるわけです。しかしこの3作目、凄い終わり方になっていますが。


ネコと昼寝 れんげ荘物語
群ようこ
ハルキ文庫
ISBN: 978-4758441957