Phinlodaのいつか読んだ本

実際に読んでみた本の寸評・奇評(笑)

28才大学生

どこかで紹介したような記憶もあるのだが、検索しても出てこないので書いてみる。

ノンフィクション。著者のこすげまさゆきさんが28才で大学に入り、新卒で就活するまでの話。マンガ形式なので5分で読める。その歳で会社辞めて大学に入るというところで既に有り得ないような話だが、実話。カバーには、

17歳の時に原因不明の病気に冒され、2年半寝たきり生活を経て社会復帰する。その後、28才で大学入学に挑戦し横浜市立大学に入学後、5万人に1人の難病にかかり入院するも奇跡的に完治する。

と書いてあって、これだけでもレアケースどころではないことが分かるが、2浪が限界といわれている新卒採用、32才で本当に採ってもらえるのか?

まず大学に入って、すぐに就職課に相談したところ、

「僕は卒業するとき32才です」
「卒業したときに就職先はありますか?」
おじさんは一言こう言った
「君はないな」

なかなか厳しい。エントリーしてみたら意外と面接できたのはよいが、二次面接でいきなり

「君はいらないよ」

と言われたりして大変。だったら二次面接に通すなよと思うわけだが、この会社は採用になったようだ。

とてもレアな人のようだし、この人ができたから私もできると勘違いしない方がいいと思うが、だとしても、最初から諦めてはいけない。それも心に刻んでおくべきだと思う。最後のページに書いてある、

心の声を聞け

というのが泣かせる。

 

28才大学生
こすげまさゆき 作
よこたちさ 画
かんよう出版
ISBN: 978-4906902767

一流の頭脳

今日は先日ちらっと紹介していた「一流の頭脳」

読んでみて、結局この本は「運動すれば脳が活性化する」ということが書かれている、それだけの本だった(笑)。以上、で閉めてしまってもいいのだが、具体的にいくつか紹介してみると、

運動によって選択的注意力と集中力が改善することがわかった。
(p.98)
運動は集中力の改善にすぐれた効き目を発揮する、副作用のまったくない薬だ。
(p.117)
毎日20~30分ほど歩くことで、うつ病を予防できて気持ちが晴れやかになる
(p.169)
週に数回ほど早足で歩いたり走ったりするだけで脳の老化が食い止められ、むしろ若返り、おまけに記憶力まで強化できる。
(p.180)
運動すると、すぐに記憶力が上がる
(p.184)
運動しながら(あるいはしてから)暗記すると、何もせずに暗記した人よりも、覚えられた単語が20%増えた
(p.185)

こんな感じで、とにかく運動すれば脳が活性化する、って茂木先生が言ってることと同じだ。運動するととにかくナイスなのだ。ただしこの本には科学的な裏づけがそれぞれちゃんと書いてあって、ニューロンがどうだとか BDNF の影響が云々、みたいな話がわんさか出てくる。しかし懐疑的な私としては、そこまで書かれると何か逆に騙されているような気分になってしまう。

とはいっても、運動すれば記憶力が上がるというのは、多くの勉強法の本で紹介されているネタであり、個人的にも体験しているので(私は受験のときに英単語を歩きながら暗記していた)、特に否定する気もない。

運動の種類によって効果が違うというのも面白い。

「暗記の能力」は筋力トレーニングではなくランニングによって高められる
(p.204)
「連想記憶」は筋力トレーニングで高まる
(p.204)

このような差があるらしい。筋トレの方が負荷が高いということと、何か関係があるのだろうか。

最後に、モーツァルトの逸話。一般にはモーツァルトは天才と認識されていて、作曲したメロディが頭の中に入っているイメージだが、

あるゆる資料は、彼が仕事とじっくり向き合い、既存の作曲法や音楽理論を取り入れて曲づくりを行ったことを伝えている。
(p.223)

確かにそういわれてみればそうだ。ちなみに、なぜ唐突にモーツァルトなのかというと、天才といわれている人でもそれ位努力しないと結果が出せないのだと言いたいようだ。凡人はもっと努力しろ、そのかわり、努力すればチャンスはやってくるのだ、という話。


一流の頭脳
アンダース・ハンセン 著
御舩由美子 翻訳
サンマーク出版
ISBN: 978-4763136732

ナイン・ストーリーズ

ちょっとトラブルがありまして、ハッと気付いたらこんな時間だ。ということで【なにが】、今日は J.D.サリンジャーさんの、ナイン・ストーリーズ

何かのビデオに出てきたという話を書いたけど、KANA-BOON さんの「桜の詩」という歌だった。この本にはタイトルの通り、9つの短編が入っている。ちょっと面白いと思ったところをいくつか。

いいかい、尼さんやなんかになるんならともかく、さもなきゃ人間、笑ってるほうがいいんだよ
(p.51)

コネティカットのひょこひょこおじさん、という作品。話はエロイーズとメアリ・ジェーンの会話で怒涛のように進んでいく。引用はエロイーズの言葉。笑っていた方が幸せになれるというのは心理学的にも実験で検証されているらしい。笑いながらマンガを読むと面白く感じるとか。

ささっと何作か飛ばして、エズミに捧ぐ、という作品から。「――愛と汚辱のうちに」というサブタイトルが付いている。

小鳥ちゃんだって、あのきれいな歌を歌うときには、小ちゃなお口を、大きく大きく大きくあけて歌うでしょう?
(p.141)

小さいといえば小さいが、小鳥だから仕方ない。雛鳥がエサをもらうときは大口開けると思うけど、歌うときも大きな口を開けているのだろうか。見たことがないので分からない。このストーリーは謎の兵士Xとエズミという少女の会話がメインで、少女の感覚がズレているのが面白い。

ラジオでジャズを歌うんです。そして、どっさりお金を儲けるんです。それから、三十になったら引退して、オハイオ州の農場に住むんです
(p.146)

オハイオというところまで限定しなくてもいいような気もするが、オハイオには少女を引き寄せる何かがあるのだろう。

ユーモアのセンスがないかから人生に太刀打ちできない
(p.153)

これを言ったのは少女の父親で、つまりこの少女にはユーモアのセンスがないというのだが、それ自体なかなか面白いギャグではないか。とはいっても少女はユーモアで面白いことを言っているのではなくて、単なる天然なのか。

次のセリフは「愛らしき口もと目は緑」から。

一人前の女だと! あんた、正気か? あいつは一人前の子供だよ!
(p.190)

真夜中に電話がかかってくる。あまり話をしたくない相手ではないのだが仕方なく応対していると猛烈な長電話になってしまって寝かせてくれない。セリフは電話の相手の男が言ったのだが、こんな話を一晩中聞かされたらたまったものではない。ちなみに一人前の子供が電車に乗ったら料金は子供でいのかな。

もう1つ紹介して終わりにする。「ド・ドーミエ=スミスの青の時代」から。

要するに彼には人にくれてやろうにもそんな才能の持ち合せがないのだ。
(p.220)

ドーミエ=スミスというのは主人公が使った偽名。仕事にありつくためにテキトーな名前を使って経歴もデタラメで絵の先生として就職しようと企む。しっかり採用されるが、そこの先生がどうもおかしい。才能の出し惜しみなのか、というところで先のセリフにつながる。まあ世の中そうだよね、みたいな妙にリアルな話だ。

それにしても、KANA-BOON さんの歌のビデオが気になる。この本に出てくる話のどれかに関係があるのだろうか。読んでみてもよく分からない。


ナイン・ストーリーズ
サリンジャー
野崎 孝 翻訳
新潮文庫
ISBN: 978-4102057018

雑記

今日は忙しかったが移動中にサリンジャーさんの「ナイン・ストーリーズ」を読んでいた。最近、何かの歌のビデオにこの本が出てきたような気がしたのだが、何だっけ?

と書きつつ、紹介するのは全然違う本。マンガ。

スウェーデン出身ということで、文化の違いが半端じゃない。

 

北欧女子オーサが見つけた日本の不思議
オーサ・イェークストロム
KADOKAWA/メディアファクトリー
ISBN: 978-4040674230

 

雑記

今日は書店にいって何冊かパラパラとネタに使えそうな本を物色してみたのだが、この本はどうだろう。「一流の頭脳」。

ストレスを解消する方法とか、やる気の出し方とか、暗記力の高め方とか、なかなか面白そうな感じがした。知恵袋でブツブツ言っている受験生が読めばいいんじゃないかな。

 

一流の頭脳
アンダース・ハンセン 著
御舩由美子 翻訳
サンマーク出版
ISBN: 978-4763136732

日本政治思想史研究

何故こんな本を今更読んでいるのかというと、「夜は短し歩けよ乙女」の中でコムズカシイ本の例として出てきたからなのだが、「日本政治思想史研究」を読み終わった。どんな本かというと、

本書は私が大学卒業後、東大法学部研究室で日本の政治思想史の勉強を始めて以後発表した論文の中から、徳川時代を対象としたものを選んで一冊に纏めたものである。
(p.三六五)

とのことである。政治そのものではなく政治思想というところがポイントで、儒学朱子学の知識を前提として書かれていて、特に徂徠学が全編にわたって頻出する。このあたりを理解していないと手も足も出ない。

ということで、私には手も足も出ないということになるが、超ざっくり概要を述べるなら、江戸時代の飢饉のような危機的状態での身分制度の破綻や、江戸末期に開国を迫られた状況下での幕府の生ぬるい対応等についての傾向と対策的な話を中心に書かれている。このあたりが今の日本を見ているようで実に興味深い。もっとも現在の日本に当時のような身分階級制度はないし、今対応で四苦八苦しているのは開国ではなくグローバル化しすぎて混乱しつつある国内政策かもしれないが、共通点として絶対にありそうなのが、政治家が状況を全然把握できていない、ということだろう。

今日は眠いので細かい話は次回以降に書きたい。

 

日本政治思想史研究
丸山 眞男 著
東京大学出版会
新装版 (1983/6/1)
ISBN: 978-4130300056