Phinlodaのいつか読んだ本

実際に読んでみた本の寸評・奇評(笑)

ホルモー六景

今日は万城目学さんの「ホルモー六景」です。先日紹介した「鴨川ホルモー」の登場人物も出てきます。

6つの短編が入っています。ホルモーのルールは本作では詳しい話が出てこないのですが、そこは拘らなくてもストーリーにはあまり関係ないかな、と。

個人的に気に入ったのは、第三景の「もっちゃん」と、第六景の「長持の恋」ですね。3の倍数です。第二景の「ローマ風の休日」に出てくるトポロジーの話も捨てがたいですが、

トポロジーの世界では、ドーナツとコーヒーカップが同じ意味を持ち、トポロジーを研究する学者の両手にそれらを持たせると、両者の違いがわからず、コーヒーカップを食べてしまうことがある
(p.100)

いやそれはない。

基本的に京都ローカルの話で地名が続出します。京都の土地勘があれば二倍オイシイです。ちなみに大学生が主人公の小説なので、飲酒シーンはたくさん出てくるのですが、四条通に出てくる、

和風居酒屋ダイニング「焼酎納言」
(p.44)

この店は実在するのでしょうか。実在しそうで怖い。中納言はイセエビですけどね。

あるいは、この話。

祇園の南のあたりに、閻魔大王のいる冥土につながっていると古くから言い伝えられる井戸があるらしい。
(p.85)

昨年紹介した「魔界京都放浪記」に同じような話が出てきます。この井戸は何となく実在しそうですが。

鴨川ホルモーのメインの舞台は京大。京大といえば吉田寮という有名な学生寮があるのですが、あれ、今もあるのかな?

一度、寮をのぞきに行ったことがある。妙な臭いはするわ、入り口で誰かが叫んでいるわ、誰もが半裸で生活しているわ、廊下を犬が走っているわ
(p.116)

文化遺産みたいですね。

今回は同志社大学も出てきます。同志社大学が舞台になるのが「もっちゃん」です。もっちゃんは、

「音は色なんだ」
(p.117)

という独特なセンスを持っています。その後、書店に檸檬を置いてきたことで有名になる人ですが、まあそれは置いといて、音といえば波なので色と相性がいい。

もっちゃんが恋をした相手は、我々が日頃、同女と呼んでいた同志社大学の隣に立つ女子高の学生だった。
(p.119)

ということで、そのあたりが舞台です。ん、女子高? というのがポイント。時代が分かりますね。

もっちゃんは、「言葉を外国語のように聞く」という技を持っています。

敢えて間違った節で区切って聞き取る
(p.127)

これは私もよく使うテクだし、いろんな人が使っているようです。ちなみに、先日紹介した「100万分の1回のねこ」に出て来た「合間妹子」という人命は、曖昧模糊(あいまい・もこ)を「あいま・いもこ」と区切って作られた名前なのです。


ホルモー六景
万城目 学 著
角川文庫
ISBN: 978-4043939022