今日の本は万城目学さんの「かのこちゃんとマドレーヌ夫人」です。このタイトルだと何が何だか分かりませんが、かのこちゃんというのは小学一年生で、
マドレーヌ夫人は猫である。
(p.11)
だそうです。読者層は小学生高学年あたりを想定しているのでしょうか、ジュニア小説です。
人間の子どもは、学校に行くと急に知恵がつくみたいだからね。
(p.17)
学校はそのために行くのですからね。知恵がつく、という言い方がいいです。
ちなみに、かのこという名前は「鹿の子」のかのこで、名前を付けるときにかのこちゃんの父親が鹿に「かのこという名前にしろ」と言われたので「かのこ」にしたそうです。流石は万城目さんですね、鹿語が分かるのでしょう。あをによし。猫又なんか出てくる所も何か和風でいい感じです。
かのこちゃんは難しい言葉に興味があって、それ繋がりで、すずちゃんという友達ができます。話の中では「刎頚の友」という言葉がよく出てきます。小学生の使う言葉じゃないのですが、なぜか気に入ったようです。ていうか、
「どういう意味?」
「とても仲のいい友達、という意味だよ」
「最初から〝仲のいい友達〟って使ったら駄目なの?」
「別に構わないけど、あえて難しい言葉を使ったほうが格好よかったり、言いたいことがよく伝わったりすることもあるんだよ」
(p.41)
そうでないこともありますけどね。ということで、かのこちゃんは「ふんけー」という言葉が気に入ったのですが、すずちゃんは、こんなことを叫びます。
「わたしも立ったのトイレで。ウンコ柱!」
(p.70)
あまり縁起がいい感じはしませんね。それなに、というのはこの本を読めば分かりますが、分からなくていいと思います。ヒントは、茶柱と関係あります。
茶柱といえば、かのこちゃん、すずちゃんをお茶会に誘うシーンがあります。本格的なお茶会ではないですが、茶室があったので、なぜか武士のような言葉でお茶会をします。
「人間のやることは、何もかも変わってるよ」
(>p.90)
これはマドレーヌ夫人の主人の玄三郎の言葉。ちなみに玄三郎はイヌです。なぜ猫の主人がイヌなのか、あまり考えない方がいいです。
お祭りの夜店のシーンで。
二人はしばらく呆気に取られた様子で、手元の細長いものを見つめていたが、口につけて息を吹き込むと、笛の音とともに、先端のかたつむりのように巻かれた紙が勢いよく伸びた。
(p.182)
これは吹き戻しですね。
かのこちゃんとマドレーヌ夫人
万城目 学 著
ちくまプリマー新書
ISBN: 978-4480688262