Phinlodaのいつか読んだ本

実際に読んでみた本の寸評・奇評(笑)

クリスマスに少女は還る

マロリーシリーズを何作か紹介しました、キャロル・オコンネルさんの作品です。これはミステリーと言っていいのでしょうか。

サディ・グリーンとグヴェン・ハブルの2人の少女が行方不明になります。この事件に挑むのが刑事のルージュ・ケンダル。なかなかの名探偵ぶりです。この探偵に絡んでくるのが、顔に傷のある女、アリ・クレイ。小児性愛専門の法心理学者です。

ロシアで小児性愛に対する量刑が重くなったときには、いっそう多くの子供たちが変態どもに殺されたのよ。
(p.396)

量刑が重くなれば抑止力が強化されて犯罪が減る、というのが期待されたパターンなのでしょう。ところが変態に常識は通用しなかった、ということなのでしょうか。

最初にアリがルージュに近づくシーンで、ルージュがこんなことを考えます。

ほう、この女、刻一刻とおもしろくなってくるぞ。
(p.31)

最初から面白いですけどね。ちなみに最後まで面白いです。

少女が通っていた聖ウルスラ学園は、ルージュの母校でもあります。聖ウルスラ学園のカラザーズ園長は、一癖も二癖もありそうな侮れない人物。怪しい気配も満載です。

美しい子供が優れた知性まで持っていたら、少しうっとうしいだろう。
(p.107)

こんなことを言う人物なのです。園長としてどうかと思いますが、この園長とルージュとの対決がなかなかの見ものです。ルージュが園長を圧倒した後で、園長がやっと気づきます。

ウルスラ学園には平凡な子供はいない――そしてルージュは、かつてそのなかのひとりだったのである。
(p.271)

ストーリーで特に非凡なのは行方不明になる少女、サディです。はっきりいって無茶苦茶です。7歳のときに書いた絵本がありますが、

派手な色づかいのすさまじい絵がつぎつぎと現れる。奇怪なキャラクターたちはみな、相手をむごたらしく殺すことにかけては、画期的なアイデアでいっぱいのようだった。
(p.117)

どういう育て方をしたらそんな子供になるのか謎ではありますが、このストーリーにはホラー映画がたくさん出てきます。巻末に17の映画の解説がありますが、ホラー映画を見て育つとそのような子供になるというのは、何となく説得力はあります。ただ、実際にそういう育て方をする親がいるのか、というところが気になりますね。

 

クリスマスに少女は還る
キャロル オコンネル 著
Carol O'Connell 原著
務台 夏子 翻訳
創元推理文庫
ISBN: 978-4488195052