Phinlodaのいつか読んだ本

実際に読んでみた本の寸評・奇評(笑)

妖談しにん橋

風邪っぽくて死人のようでしたが、寝たらかなり回復した感じです。今日は耳袋秘帖の3作目、「妖談しにん橋」を紹介します。しにんというのは「死人」と「四人」をかけているのです。四人で渡ると1人だけ影がないことがある。その人は後で死ぬ、というコワイ話なのです。本の表紙もそういうイラストになっていますね。話から想像すると、このイラストで影がないのがお奉行様の根岸、残りが宮尾、椀田、梅次ということになりますが、身軽な服装なのは岡っ引きの梅次でしょう。残りの二人はどちらがどちらかよく分かりません。

根岸は作中で、こんなことを言ってます。

歩きながらのほうが頭も回る
(p.32)

脳科学的にも証明されているようですね、脳が活性化するとか。活性化って何ですか、と思った人は華麗にスルーしてください。実は私も歩く派でして、開発に行き詰ったときとか、散歩するといいソリューションが浮かんでくるものです。

ちなみに、根岸さんはこんな大岡裁きをしています。船が永代橋にぶつかって橋を壊した裁判です。橋の管理側が船の持ち主に修繕費を出せというのですが、

「船が橋を壊したのは確かだから、船の持ち主は橋を修理すべきである。しかし、船が砕けたのは橋があったからなので、橋の管理人は船の修理費用を負担すべきである」
(p.169)

かなり無理な判決のような気もしますが、最近似たような事故がありましたっけ。関空のあたりで。あれはどういう裁きになったのか記憶にありません。

今回チョイ役で出てくる「おちか」は、元女将。結構権力があるのですが、街並みをモダンにする計画に一人反対していて、苦しい立場です。とはいっても元女将の反対だけあって、対立相手もやり辛い。このおちかが、占いは信じるけど占い師は信じないというのですが、その理由、このセリフは面白いです。

仏さまは信じるけれど、坊主は信じないのと同じよ
(p.29)

分ったような分からないような。

 

妖談しにん橋
風野 真知雄
文春文庫
ISBN: 978-4167779030