Phinlodaのいつか読んだ本

実際に読んでみた本の寸評・奇評(笑)

うずまき猫のみつけかた

今日は唐突ですが、「うずまき猫のみつけかた」です。うずまき猫って何ですかね。泣き声も想像できませんが。読んでみたら、マラソンと映画の話のようでした。村上春樹さんはフルマラソンを走れるのですね。日頃のトレーニングも欠かさないようです。この本の舞台はアメリカなのですが、

ニューヨークのセントラル・パークを走る女性は昼間でもレイプに気をつけていなくてはならないし(これはかなりしょっちゅう起こっている)、少し都会を離れると今度はクーガーやらグリズリーやらにも気をつけなくちゃいけないし、
(p.42)

しょっちゅうというのはアメリカっぽいですが、マジですかね。

教訓的な話もたくさん出てきますが、一味違います。

労苦や苦痛というのは、それが他人の身にふりかかっている限り、人には正確に理解できないものだし、とくに一般的な種類の労苦、苦痛でない場合には、その傾向はいっそう顕著なものになる。
(p.58)

これは村上さんが中華料理アレルギーであるという労苦の話なのですが、普通なら前半で終わってしまいそうなものを、後半の補足でさらに強化するあたりが流石です。よほど中華料理が駄目らしい。

さて、村上さんはこの時アメリカに住んでいるわけですが、アメリカで小説を書くとアメリカンな作品ができるのかというと、そうでもないようです。

人間というのは、とくに僕くらいの年齢になると、生き方にせよ書き方にせよ、よくも悪くも、場所によってがらっと大幅に変われるものではないからだ。
(p.104)

歳によるのでしょうか。若いときなら違うのかもしれませんね。私の場合、スタバでプログラムを書くとちょっとノリノリになりますが。

タイトルが猫だけに、猫ネタや、猫の写真が結構出てきますが、猫の喜ぶビデオというのが面白いです。

半信半疑で猫の権威である日本の知人のところに送って実験してもらったところ、「猫はものすごくものすごく喜んだ」という驚くべき結果が得られた
(p.166)

でも人間が観てもちっとも面白くないそうです。そりゃ猫と人間は違いますから、当たり前といえば当たり前なんですが。

この本はだいたい時系列になっているようですが、村上さんは2回、ボストンマラソンを走り切っています。ただ、2回目はかなりキツかったようです。

調子の悪いときは悪いなりに、自分のペースを冷静に的確につかんで、その範囲でなんとかベストを尽くしてやっていくというのも、大事な能力のひとつであろうと思う。
(p.196)

確かにその通りです。プログラマーは寝ながらコードが書ければ一人前です【嘘】。

 

村上朝日堂ジャーナル うずまき猫のみつけかた
村上 春樹 著
新潮文庫
ISBN: 978-4101001463