Phinlodaのいつか読んだ本

実際に読んでみた本の寸評・奇評(笑)

さがしもの

「さがしもの」を読み終わった。先日紹介したように、本が出てくる本。短編が9作入っている。メディアファクトリーから出ていた「この本が、世界に存在することに」を改題した、と巻末に但し書きが付いている。

最初の話「旅する本」は、古本屋に売った本が何度も別のところで出てきて買い戻してしまう。そしてまた売る。夜は短し歩けよ乙女で、子供のときに持っていた絵本が戻ってくる話が出てくるが、私の場合、まだ売った本を再発見したことはない。

「引き出しの奥」という話にも古本が出てくる。こちらの古本は伝説の古本と呼ばれていて、

裏表紙に書きこみがいっぱいあるんだって
(p.129)

この書き込みが何かという議論になる。私は参考書を古本屋で買うことがあるが、安売りの参考書に書き込みがあることが多い。何でこんな所を間違えるんだというような所に書き込んであったりして面白い。

「ミツザワ書店」は昨日紹介した文が出てくる作品。文庫本の巻末の「解説――人間は本を読むために生まれてきた動物」(pp.230-236)を書かれている岡崎武志さんが、解説中で同じところを引用している。やはり「開くだけでどこへでも連れてってくれるもの」というフレーズの持つ共有感がそうさせたのだろう。

「さがしもの」は、余命短いおばあちゃんに頼まれて本を買いに行くが見つからないという作品。おばあちゃんは家族が急にやさしくなって、それに気が付いてしまう。でも気付いている素振りも見せないのが流石だ。

ねぇ、いがみあってたら最後の日まで人はいがみあってたほうがいいんだ。
(p.179)

これも日々是好日なのか。私は入院中のおばあちゃんに本を頼まれたことがあるので、それを思い出した。もっとも私の場合は、本は簡単に見つかったのだが。

 

さがしもの
角田 光代 著
新潮文庫
ISBN: 978-4101058245