Phinlodaのいつか読んだ本

実際に読んでみた本の寸評・奇評(笑)

向日葵の咲かない夏

ミステリです。解説の千街晶之さんは「好き嫌いの分かれる小説」と評していますが、同感です。しかも私は好きでもないし嫌いでもない派であります。

主人公のミチオは小学4年生。友人のS君に夏休みのプリントを届けに行くのですが、S君の家に行ったら、S君は首をつって死んでいました。その死体が消えてしまって、話が大展開していきます。

登場人物がかなり個性的、というかヤバいです。目を離したら崖から飛び降りそうな感じの人がわんさか出てきます。ミチオもそれはそれで危ない感じがしますが。

何かをずっと覚えておくというのは大変なことだ。しかし、何かをわざと忘れることに比べると、大したことはない。
(p.93)

犬や猫の死体が発見されるという伏線がでてきますが、死体の関節が逆方向に曲げられていること、口に石鹸が押し込まれていること、その理由が最後にちゃんと出てきます。一応納得はできますが、石鹸というのはなかなか面白いアイテムですね。

次に紹介するのはS君の言葉ですが、そうそう、S君は話の最初にいきなり自殺しているわけですが、それが途中で輪廻して蜘蛛の姿になって出てきます。生まれ変わりというのが一つのテーマのようです。

人間、一度こうだと思い込んでしまったら、なかなかその考えを変えることはできないからね。
(p.123)

だから人を信用するな、という話になりますが、思考が硬直するとなかなかコリが取れない。誰にでも経験がありそうなことです。生まれ変わりというテーマは、読んでいる途中では結構騙されてしまうのが面白いです。

向日葵の咲かない夏
道尾 秀介 著
新潮文庫
ISBN: 978-4101355511