今日はアガサ・クリスティさんの「オリエント急行の殺人」。いろんな出版社から出ていますが、今回は 1959年発行の創元推理文庫版です。
超有名な作品なので、説明するまでもないと思いますが、ネタバレするのも何なので一応全部伏せておきます…ということでは話にならないので少しだけ。ポワロはある男とすれ違ったときに、このような感想を言います。
悪魔がすぐそばを通ったのだという感じが、どうしても抜け切れません
(p.28)
このラチェットという男が殺されるという事件です。この後、ラチェットはポワロに警護を依頼するのですが、
「個人的なことで失礼ですが――私はあなたの顔が気に入らないのです」
(p.43)
といって断ってしまうのです。その後ラチェットは殺されてしまい、密室となったオリエント急行の車内で犯人を推理するというストーリーです。
もちろん本格推理小説ですから、犯人を特定するためのヒントがあちこちに隠れています。しかも伏線がたくさんあります。例えば、
私は、最後の瞬間まで、だれもかれをも疑っている主義なのですよ。
(p.74)
ポワロだからそうなのか、と自然に思い込んでしまうのですが、二度目に読み返すとこんなことが書いてあったのかと気付いて驚くわけです。
この作品は後半の容疑者との面接シーンが面白い。まず全員と話をした後、二度目に話をするときに嘘がどんどん暴かれていくのです。この時に、かなり高圧的な態度で問い詰めたりするのですが、
嘘をついている人間には、ぐいと事実を突きつけてやるのです。すると、たいていぺしゃんこになるものですよ
(pp.277-278)
それも作戦なのですね。
さて、ポワロはこのミステリーの謎を2通りに解いて、どちらが正しいか判断を委ねたところ、責任者は、
私の意見では、あなたがわれわれに示された第一の解決が正しいものとおもわれます
(p.318)
これがクライマックスです。この解決方法でいいのか、という気もしますが、エラリー・クイーンさんの「Yの悲劇」をちょっと思い出しました。