今日は猛烈に調子が悪い。かかったかな、と思ったらコンタックだっけ。それはどうでもよくて、流石に書評どころではないような気がするが、先日読んだ何だっけ、アレに出てきた本で「ロード・ジム」を読んでいるので、上巻から紹介してみる。
あらすじ。ジムという船乗りが嵐にあって船が沈みそうになる。船長たちとジムは乗客を置いて逃げ出してしまう。しかし船は沈まなかった。裁判が終わってジムはいろんな船を転々とする。
ジムはなぜ逃げたのか。死を恐れたのか。
ただできなかったのだ――それだけのことだ。彼はおそらく死を恐れてはいなかった。
(p.123)
乗客を助けることができなかっただけだ、というのだが、裁判のシーンの描写は読んでいてだんだんクラクラしてくる。
ジムは船の上で船長が話をしているのを聞いて、
奴らが人に何を信じさせようと、ぼくにとってそれが変わるわけじゃない。ぼくは奴が喋り、論じ、喋り、論ずるままにしておいた。
(p.173)
ところがジムは裁判が終わって各地を転々とするときには、他人の言葉に敏感に反応して逃げ回るようになってしまう。
ある種の状況が重なれば、必ず恐怖が出てきます。忌まわしい恐怖が。
(p.203)
船が事故にあうシーンも、裁判で弁明するときも、この小説は心理戦である。それもホラーというか、狂気に近い描写と対面することになる。乗客は助かっているのに同じく助かった乗員が精神的に助からないのだ。という感じで下巻に続く。
(つづく)
ロード・ジム(上)
ジョゼフ・コンラッド 著
鈴木 建三 翻訳
講談社文芸文庫
ISBN: 978-4061982291