Phinlodaのいつか読んだ本

実際に読んでみた本の寸評・奇評(笑)

雑記

今日は殆ど本を読んでませんが、昨日殆ど読み切って最後だけ読んだのがこの本。

これはなかなか時代物としては凄いというか、どんどん死んで行くので最後全滅するのではないかと思った位です。話が始まるところでいきなりわんさか死にますし、本当の戦というのはそういうものなのかもしれませんが。

 

剣風の結衣
集英社文庫
天野 純希 著
ISBN: 978-4087458626

天使の帰郷

天使の帰郷

原題は FLIGHT OF THE STONE ANGEL なので結構端折りましたね、STONE ANGEL というのは彫刻が出てくるのです。もちろんマロリーのことでしょう、いや、微妙なのかな。

このストーリーでぶっ飛んでいるキャラは、老婦人のオーガスタです。あのマロリーに薬を盛るあたりは老人というよりも魔女って感じです。「氷の天使」でも老人たちが出てきますが、このシリーズ、子供だけでなく老人の描写が結構ポイント高いです。作者のキャロル・オコンネルさんは1947年生まれ。この作品は1998年なので、まだ老人と呼ぶには早いですが。たくさん取材したのでしょうか。関係ないですが、実は私は老人の話を聞くのが好きです。

オーガスタとライカー刑事とのやりとりも凄いです。ライカーはニューヨークという危険な街から来たことをアピールするのですが、オーガスタはこの土地はもっと危険だといいます。

「ここには五種類の毒蛇と、危険な蜘蛛がいるんです。ここのワニたちは、ニューヨーカーをふたり足したよりももっと長いし、蚊の平均的なやつは鞍を置けるサイズなんですからね」
(p.346)

この老人、貯金は2000万円どころじゃなさそうですね。冗談はともかく、ライカーも負けてられないので、

「ニューヨークには、ベルモントパークの競馬場を走れるサイズのネズミがいますよ。ハーレムからバッテリーに至る交通渋滞もあるし、死んだ魚と殺された納税者でいっぱいの川も二本流れている」
(p.344)

ハーレムからバッテリーまで渋滞したら15km程度ですかね。川ってどれのことなんでしょうか。1本はハドソン川だと思うのですが。

このオーガスタ、最後のクライマックスのシーン、ライカー刑事が拉致されて生贄にされかかっているシーンで、ガソリンに火をつけてトラックを爆破します。キレッキレにキレまくっています。そして、周囲の家に火を移してどんどん焼いていきます。そんなことをして問題ないのかというと、この辺の土地も家もオーガスタが所有権を持っているので、焚火をする権利もあるわけですね。やはり2000万円どころではないです。多分、少なく見積もっても2000万ドル持ってますね。

マロリー以外に若い女刑事が出てきます。副保安官のリリスです。これが結構マヌケなんですが、なかなかいい味を出してます。一応 FBIのスパイっぽい感じですが。クライマックスのシーンでは重要な役が割り当てられています。このリリスにマロリーがOJT【謎】します。

「言うべきことがないかぎり口を開いちゃいけない。そして口を開いたら、聴く価値のあることだけを言うのよ」
(p.150)

この場面ではマロリーは逮捕されて牢屋に監禁されているのですが、警備がヌルすぎてマロリーはいつでも逃げられるので飄々としているわけですね。

このストーリーのゲスト役かな、新興宗教の教祖である、マルコム・ローリーは奇跡を売っています。もちろん宗教はビジネスなのです。

人はただのものは信用しない。金のかかるもののほうを余計に信じがちですから。この稼業は、信じさせることが仕事の九十パーセントなんですよ。そう、これは稼業なんです。
(p.153)

この後のやりとりもとってもオモチロイのですが、そこは実際に読む人のお楽しみに伏せておきましょう。マルコムは信者に寄付しなさいといいます。当たり前ですよね。金持ちが神の国に入るよりは、ラクダが針の穴を通る方がやさしい。

「金を手放すのです。そうすれば、それは百倍以上になって帰ってくる。あなたは、信仰の光のなかで暮らし、人生に望むすべてを手に入れることでしょう。わたしが保証します。あなたの信仰の強さに応じて、あなたの願いはかなうでしょう」
(p.224)

もちろんマルコムの願いは金なんでしょう。これは唯一、金を手放すことでは得られないリターンですね。いや、投資するというのは金を手放すという意味もあるのか。

オーガスタは、キャスの遺体はどうなったかと訊かれてこう答えます。

あらゆる謎を解くのは無理なのよ
(p.198)

いきなり現実的哲学者です。キャスというのはマロリーの実母で、殺されてしまうのです。ただ、マロリーの関心事は遺体がどうなったかではなく、殺した犯人に報復することみたいですね。

このストーリーの悲喜劇が一段落してカタが付いたところで、もう一度これが出てきます。

オーガスタの言ったとおりだ。あらゆる疑問の答えを得ることなどできはしない。
(p.512)

人間には無理でしょうね。でもコンピューターなら? マロリーならどうなんでしょうね。


天使の帰郷
キャロル オコンネル 著
Carol O'Connell 原著
務台 夏子 翻訳
創元推理文庫
ISBN: 978-4488195090

むかしも今も

今日も疲れたのでパスしたいのですが、雑記ばかり続いているので、この前紹介した山本周五郎さんの本の後半、「むかしも今も」を紹介します。

これもなかなかキツい話です。主人公の直吉は運のない男で、

ごく幼いころ両親に死なれ、九つまで叔父に育てられたのであるが、そのじぶんから気性の強い叔母に、のそのそしているといってはよく折檻された。
(p.223)

今だと虐待とかいって保護されるのでしょうか。しかしこの家もどうにもならなくなって、直吉は記六という指物師に預けられ、職人としての修行を始めることになります。のそのそとした性格はそのままで、なかなか出世できません。ていうかパシリにされてしまいます。

親方には、まきという娘がいます。まきは直吉と一緒に育つのですが、親方が死ぬ直前に、もう一人一緒に育った清次を婿にしてしまいます。この清次が博打好きで、親方が死んだ後、店はほぼ潰れたも同然、清次は逃げ出してしまいます。しかし後に残された直吉とまきは頑張ります。

人間は金持ちでも貧乏人でもみんな悲しい辛いことがあるんだ、昨日までの旦那が今日から駕舁きになるし、飲みたいだけ酒を飲んでぴんぴんしていた者が、急にお粥も喰べられない病人になっちゃうんだ、
(pp.231-232)

生活が貧乏になると、周囲の人も皆貧乏で大変です。近所に住む倉造という男は足を怪我して一年も寝込んでいます。女房のおいとが内職で何とか暮らしていますが、とうとう倉造が死んでしまったときのおいとが、こんなことを言います。

「病人も楽になれたしあたしもこれで息がつけます。薄情なことを云うようだけれど、もうあたしは精も根もつきはてましたからね、本当にこのほうがよかったんですよ」
(pp.287-288)

皆楽になれてよかった、というのです。

そういった生活の中で、まきは目が見えなくなってしまいます。直吉は蜆を取りに行きます。蜆は目の薬になると言われていたらしいです。

「赤羽橋の上にひととこあるんですって、寒のうち、あの川でとれるのは眼の薬だって、昔から云われていたそうよ」
(p.353)

昔は赤羽橋のあたりで蜆が取れたのですかね。貧乏ながらも、助けたり助けられたりして生きていく、そういう物語ですが、貧しいからといって不幸だというのではない。

苦しいときは苦しいようにする、貧乏な者は誰に助けて貰うこともできねえ、みんなそうやって小さいうちから自分で、生きることを覚えてゆくんですよ、聞かないつもりにしていておやんなさい、そのほうが却って人情というもんですよ
(p.356)

そのあたり、奥の深い物語です。店が落ちぶれて食べるものにも困り、目も見えなくなってしまう。どこに幸せがあるのかと思うかもしれませんが、それも人生だというのです。そこに幸せを感じられるかどうかは本人の気持ち次第なのです。

 

柳橋物語・むかしも今も
山本 周五郎 著
新潮文庫
ISBN: 978-4101134864

雑記

今日はいろいろとても疲れたので、帰りの電車でパソコンを開く元気もありませんでした。ということで読んでいたのが、これです。

あと数ページというところで駅に着いてしまったので、コロヨシという感じではなくて、間が悪かったです(笑)。

ところで、コロヨシの書評はどこかに書いたはずなのですが、ググっても出てきません。インターネットから抹殺されたのかもしれません。

 

決起! コロヨシ!! (2)
三崎 亜記 著
角川文庫
ISBN: 978-4041023143

雑記

今日は思わぬトラブルがあったので本はあまり読んでませんが、「アマンダの影」を読み返していました。結局、先日紹介した、マロリー死亡のニュースのあたりが一番面白いかもしれません。

他にもいろいろ読みたい本はあるのですが、最近、本を読むとヘンな夢を見るので疲れます。ちなみに昨日は弁当箱を持って海上の岩山に行き、その先に待ち構えている師匠を倒すという修行をする夢を見ました。弁当箱を持ったまま海に飛び込んでも案外濡れないので感心したのを覚えていますが、何の意味があるのかさっぱりわかりません。ちなみに師匠は倒せませんでした。

 

ビブリア古書堂の事件手帖 ~栞子さんと奇妙な客人たち~

今日は「ビブリア古書堂の事件手帖 ~栞子さんと奇妙な客人たち~」を読みました。もっとも、この本は以前、読んでいるような気がします。

とても有名なので、今更説明しなくてもいいとは思いますが、ざっくり行きますと、古本屋の店長の篠川栞子が病院で推理して難事件を解決、みたいな話です。しおりこ、って凄い名前ですね。主人公の五浦大輔がこの店で働くことになり、事件に巻き込まれてパシリをするパターン。メインで動き回ります。推理小説あるあるですね。


ミステリー的にロジックが論理的なのかというと強引なところもあるような気もしますが、そこは運の良さでカバーしていると理解していいと思います。

個人的には、古書店というのはとても好きなスポットですが、最近は古書は嫌、という人もいるそうですね。誰が触ったか分からないから、というのですが、人類は衰退しました【違】。

ところで、第三話「ヴィノグラードフ・クジミン『論理学入門』(青木文庫)」で、このセリフ。

『今、君は三段論法を使って話をした。バカな人間に三段論法は使えない……君は絶対にバカではない』
(p.197)

これ自体が三段論法になっているのはお洒落です。厳密にいえば「バカな人間に三段論法は使えない」は対偶の「三段論法を使う人はバカな人間ではない」に変形してやる必要がありますが。バカの判定に三段論法を使うというのは確かに一理あるような気がしますが…ちなみに、この判定だと人類のバカ率は何%になるのでしょうか。

 

ビブリア古書堂の事件手帖 ~栞子さんと奇妙な客人たち~
三上 延 著
越島 はぐ イラスト
メディアワークス文庫
ISBN:9784048704694