今日の本はジョン・ウインダムさんの「呪われた村」。
ミドウィッチという村で、あらゆる生物が眠ってしまうという不思議な現象が発生します。
男も女も馬も牛も羊も豚も鶏も雲雀ももぐらも鼠もみんな寝ていたのだ。
(p.30)
眠れる森の美女のようですが、原因は魔法ではなく、現象発生地域の中心に出現している謎の円盤のせいなのです。もぐらだけ平仮名になっていますが土竜ですよね。
強制睡眠エリアは限定的ですが、とある境界の中に入った瞬間に眠ります。つまり、エリアに向かって歩いて行くと、境界を超えた所でばったり倒れるわけです。しかし、その人をエリア外に引きずり出してやると目を覚まして、何事もなかったかのように正常な状態に戻ります。不可思議です。
一体どういう原理なのか分からないまま24時間が経過すると、いつの間にか円盤の姿はなく、住民は全員、何事もなかったかのように目覚めます。ハッと気付いたら1日経過していた、というような状況。ただし暖炉の火は消えているし、
停電で冷蔵庫が止まったために牛乳が腐敗した
(p.58)
微生物の時間は止まらなかったようですね。
さて、物語はここからが本番です。
その後、村の出産可能な女性が全員妊娠していることが分かります。しかし当の女性には思い当たるコトがない。空白の一日に何かあったとしか思えないわけです。そして、妊娠した女性は、金色の瞳を持つ子供を生みます。
この子供達は、普通の人間にはない二つの特別な能力を持っています。まず、30人の男子と28人の女子は同性の間で共有感覚を持っています。例えばある一人の男子が何か字を覚えたら、他の男子も一斉にそれを覚えた状態になります。しかし女子にはその情報は伝わりません。女子も女子同士で思考を共有しています。
もう一つは、他の人間に強制力を働かせることができるという能力です。他人の意識に干渉して、思ったことをさせるのです。これが後の悲劇の原因になるのですが、後半の急展開はなかなかのものです。
ということで、気に入った一言を。
鳩が鷹を怖れるのは臆病だからではない。賢いからなのだ。
(p.204)
呪われた村
ジョン・ウィンダム 著
林 克己 翻訳
ハヤカワ文庫 SF 286
ISBN: 978-4150102869