今日は天冥の標Ⅹ。「青葉よ、豊かなれ」。最終章は PART1 から PART3 までの3分冊です。
フィナーレということで宇宙大戦争。もはや真空の宇宙で大音響立てて戦うガンダムよりも派手な感じで、超新星爆発を避けるというミッションのスケールのデカさも凄い。何がどうなるのか説明するのも面倒なので、ストーリーの書評はギブアップ、パスします。
この作品、時系列順に並んでいない、STAR WARS みたいに行ったり来たりするので、順に一度読んだだけでは何か分かりにくいです。とはいっても何度も読むには長いし、大変ですが。最後の最後で2019年の東京に帰ってくる、というのは、何かほんわかしました。
ということで、いくつか気にいった表現を紹介します。
兵士が目の前の敵に全力を叩き込めるのは、自分の背後に自分より大きなものがあるとわかっているからだ。
(PART1, p.119)
何かを守るために戦うから強い、というのはアニメやラノベで定番の法則ですね。といいつつ、何のために戦っているのか分からない物語も結構あるみたいですが。
戦争からこの方、善意で行動する人物は、しゃべる羊なみに珍しくなってしまった。
(PART1, p.157)
そういえば、この物語にはしゃべる羊が出てくるんですよね。これは、さりげないギャグなのか。
カルミアンの女王、リリーによる進化の定義は、なかなか面白いです。
ただひたすらの数限りない失敗だ
(PART2, p.73)
失敗イコール進化、というのはハッとさせられます。確かに、失敗したものを消していけば最後は正解が残りますね。進化論も、環境に適応するために変化したという考え方だけでなく、適応できなかった種が絶滅して適応できるものだけ残った、という考え方もあるわけです。
最後に、ネットでは、歴史を勉強する意味は何か、というFAQがありますが、この質問に対して、「学問としての歴史」を次のように説明しています。
今あるものはすべて過去に由来をもって成立しており、過去起きたことはすべて未来にその影を投げかけずにはいられないという考え方
(PART3, p.22)
因果関係を紐解いて未来を予言するのが歴史を勉強する目的なのですね。
天冥の標X 青葉よ、豊かなれ PART1
小川 一水 著
ハヤカワ文庫JA
ISBN: 978-4150313555
天冥の標X 青葉よ、豊かなれ PART2
ISBN: 978-4150313593
天冥の標X 青葉よ、豊かなれ PART3
ISBN: 978-4150313623