Phinlodaのいつか読んだ本

実際に読んでみた本の寸評・奇評(笑)

剣術長屋-はぐれ長屋の用心棒(23)

今日の長屋シリーズ(笑)は、「剣術長屋」。23話目です。ここまでの成り行き上仕方ないという流れで、源九郎と菅井が島田の道場の師範代を押しつけられてしまいます。島田というのは長屋にいた仲間で、今回、道場を新規オープンすることになったのです。流派は「神道無念流」。

神道無念流の祖は、福井兵右衛門だった。江戸に神道無念流をひろめたのは戸賀崎熊太郎で、その弟子の岡田十松、さらに斎藤弥九郎が剣名を高めた。
斎藤弥九郎が九段にひらいた練兵館は、千葉周作玄武館桃井春蔵士学館と並び、江戸の三大道場と謳われて隆盛をみた。
(p.21)

このことは Wikipedia にも出てきます。

てなわけで道場を開いたら、早速来ました。将棋を指している菅井と源九郎のところに伝令が。

「道場破りです!」
(p.31)

(笑)。源九郎と菅井が駆け付けてその場は凌ぐのですが、後でどんどんややこしいことになります。とかやっているうちに、入門したいという武士が四人も現われた。この四人は松浦藩藩士を名乗ります。

まあそこまでは順調ですが、その後、門弟が襲われるという事件が多発します。殺されたわけではなく、真剣で峰打ちです。その道場ヤメロという警告ですね。峰打ちだって骨は折れますから大変です。それで、島田は源九郎達に犯人を突き止めて欲しいと依頼します。源九郎はこれを五両という大サービス価格で請け負います。

探索の結果、相手が河合道場に関わっていることが判明。相手も本気を出してくる。なんと居合の達人の菅井が斬られそうになるのですが、ていうか実際浅手に斬られているのですが、必死で逃げていると、

 ……このままでは、逃げられぬ。
 と菅井が思ったとき、前方に騎馬の武士が見えた。十人ほどの家士と中間などが馬の前後に従っている。
(p.154)

この武士に助けを求めたら助かるのでは。

「お、追剥ぎでござる! 後ろのふたり、追剥ぎでござる」
(p.155)

といって助けを求めます。追剥ぎじゃないんですけどね。こういうのは先に言った者の勝ちです。武士が、

「追剥ぎどもを、討ち取れ!」
(p.155)

何か本物のサムライっぽい。さすがに二人でこんなのに歯向かうバカはいないから、菅井を追ってきた奴等はさくっと逃げてしまいます。で、菅井は低頭して礼を言うと、武士は「気をつけて帰られよ」とか言って去ってゆく。

誰?

まあいいけど…

で、次は源九郎が待ち伏せられてピンチ。

「わしの名は華町源九郎。うぬの名は」
源九郎が中背の武士に向かって誰何した。
「渋川十三郎」
(p.180)

大ピンチなのに、相変わらずプロトコルが細かい。さて、この渋川が向かってくると、源九郎はいきなり別の武士に斬りかかります。しかし浅い。絶対絶命の状況ですが、なんとか長屋の仲間が支援に間に合って投石援護してくれて助かった。しかし源九郎も浅手とはいえ斬られてしまった。そのタイミングで、河合道場から島田道場へ試合の申し込みが。

「分かった! おれたちを狙ったのは、試合に出さぬためだ」
(p.207)

強い奴がいたら試合で負けてしまうので、まず片付けてから正式な試合を申し込んだ訳ですな。試合といっても剣術指南がかかってますから、社運、いや、場運【謎】が勝敗にかかっています。

ところが菅井も源九郎も不死身なので試合に出てしまう。しかもご都合主義なので勝ってしまう。予定が狂った河合道場の面子は、島田道場の道場主、島田を斬るという最後の手段に出ますが、そう来るだろうと読んだ長屋の用心棒たちが、島田道場で毎晩酒盛りをしてから寝泊まりして待ち伏せます。やって来たら返り討ちですね。ついてないですね。百人位連れてくればいいものを、一人相手なら楽勝と踏んでたった三人でやって来る。怖い二人と道場主の島田ではとっても相手が悪い。

これにて一件落着なのですが、その後、松浦藩から源九郎と菅井に、剣術指南をしてくれないかという依頼が来てしまう。この話、次作の「怒り一閃」に続きます。


剣術長屋-はぐれ長屋の用心棒(23)
双葉文庫
鳥羽 亮 著
ISBN: 978-4575665345