Phinlodaのいつか読んだ本

実際に読んでみた本の寸評・奇評(笑)

用心棒たちの危機-はぐれ長屋の用心棒(43)

今日は長屋シリーズから「用心棒たちの危機」。どんな危機かというと、

「安次が、番屋に連れていかれたようだ」
(p.21)

安次というのは長屋の仲間なのですが、盗賊の一味に同名の安次というのがいて、そいつと間違ってしょっ引かれた、というのですね。さらに、一味に居合を遣うのがいるので、菅井まで疑われてしまう。確かにピンチです。しかも、

「押し込みは七人、そのなかに居合を遣う武士がひとり、安次という名の男がひとり、それに武士がふたりなり三人いたとなると、町奉行所の同心や岡っ引きたちは、だれを疑う」
(p.83)

そりゃ、はぐれ長屋全員容疑者ですよね。超ヤバい。

これではたまらんので、源九郎たちは自分たちで盗賊を捕まえてしまおうと、一味の千次を捕らえるのですが、すぐに長屋に仲間が押しかけてきて、口封じのために殺してしまいます。しょうがないので次は伊勢吉というのを拉致しますが、これも斬られてしまって虫の息。仲間の名前を訊いても答えようとしないので、

おい、やつらは、おまえを助けずに、斬って逃げたのだぞ。そんなやつらの肩を持つのか
(p.179)

そう言われてみればそうだと思ったのが、急にべらべらと喋り出す(笑)。でも死んでしまう。

次に捕まえたのは重吉。今度はバレないようにこっそりと拉致して、最初から説得してみる。

しゃべらなければ、権蔵たちが助けに来てくれるとでも思っているのか。来るとすれば、殺すためだ。
(p.194)

権蔵というのは頭目です。今までそうしてきたのを知っているから説得力があります。もうそうなったら喋るしかないか、という気分になるわけです。getした情報は同心の村上どのに提供して、頭目をお縄にしてもらい、ラスボスの凄腕の武士が残っていますが、

古峰と沢村は、わしらにまかせてもらえぬか。
(p.236)

武士として勝負が付いてないから斬らせて欲しいとお願いするわけです。村上は、そんなヤバい奴を捕まえにいくのはやだなぁ、と思っているので、

華町どのたちが、それほど言うならまかせよう
(p.236)

まかせてやると上から言いつつ、実はホッとしているわけで、このあたりのオトナの会話はなかなか面白いですね。身分的には武士の源九郎が上かもしれませんが、どうみても浪人だし、源九郎はいつも村上を立ててやるので、お互い Win-Win のいい関係が保てるのです。結局、沢村は源九郎、居合を遣う古峰は菅井が勝負することになります。結果は書く必要ないですよね。

 

用心棒たちの危機-はぐれ長屋の用心棒(43)
双葉文庫
鳥羽 亮 著
ISBN: 978-4575669008