Phinlodaのいつか読んだ本

実際に読んでみた本の寸評・奇評(笑)

ウィンター家の少女

小出しで読みながら紹介していたが、読破しているので紹介する。キャロル・オコンネルさんのウィンター家の少女。天才ハッカーの女性警官、マロリーが主人公。

ウィンター家で殺人事件が起こる。被害者は保釈中の連続殺人犯でナイフ使いだ。しかし死体の横にはナイフではなくアイスピックが落ちていた。いかにも不自然な現場である。死体の足のホルスターにはナイフが入ったままだ。つまり、この殺人犯は誰かを殺しにウィンター家に忍び込んで返り討ちにあったとマロリーは考える。殺人犯が死んでも困ることはない。むしろ社会のためにはいいかもしれない。しかし、この殺人犯がウィンター家の誰かを殺すために雇われたのなら話は別だ。

あなたが死んで得するのは誰です?
(p.61)

あなたというのはネッダ・ウィンター。この時点で70歳の老婆だ。

ウィンター家は昔、大虐殺事件があった。手口は、

心臓へのひと突きのみ。九人の被害者全員がそうよ
(p.156)

アイスピックで心臓を刺して殺したというのである。未解決事件で犯人は捕まっていない。今回の死体にはハサミで突かれた跡があったが、検査の結果、アイスピックで刺されたのが死因だと分かる。ということは大虐殺事件と同じ犯人が被害者を刺したという可能性が出てくる。、マロリーはそれがネッダではないかと疑っている。

その後は上からの圧力とか弁護士との駆け引きとかいろいろややこしいゴタゴタをやり過ごしながら真相に迫っていくのだが、解決前にネッダは死んでしまう。ネッダが繰り返して書いたという、

狂った人間は正気の人間を狂わせる。
(p.232)

この言葉がリアルに思われる。確かに狂気は伝染するものなのだ。

私はマロリーのシリーズは読んだことがないので、この作品が初めてだった。天才ハッカーということなのだが、この作品だけ読んだ印象にそれはなくて、どちらかというとダーティーハリーのような力技で片付けるような印象を持ってしまった。本作が面白かったので、あと何作か読んでみるつもりである。

最後に、この作品で印象に残った言葉を一つ。

占い師が正直なわけないじゃないか。
(p.223)

 

ウィンター家の少女
キャロル・オコンネル 著
務台 夏子 翻訳
創元推理文庫
ISBN: 978-4488195151