Phinlodaのいつか読んだ本

実際に読んでみた本の寸評・奇評(笑)

今日は「殺」という本を少し読んでみました。剣に関する逸話の短編が10編掲載されています。30年前に一度読んでいるような気がするのですが、全然覚えていません。

1編目の「殺」では、穂積孫八という剣の達人がひょんなことで世話になった盗賊の親分に刀を欲しいとねだられます。この刀、孫八が逐電するときに祖母にもらった名刀で、普通なら断るところなのですが、

これは売物ではないので、金銀に換えることはできないが、余人とはちがい、いままでご厄介になったあなた様ですから、それをお望みなら代りの刀を一口頂戴したい
(p.21)

とあっさり承諾するあたりは、武士道のような感覚を垣間見るようで面白いです。

 


綱淵 謙錠 著
文春文庫
ISBN: 978-4167157050

 

魔法科高校の劣等生 四葉継承編

16巻は四葉継承編。ザックリあらすじを紹介すると、四葉の当主の真夜が深雪を次期当主に指名する話です。

当主の指名は四葉家の新年の集会である慶春会で行われるので、それに出席するのを阻止しようと無駄な抵抗を試みる無謀な人達をチャチャッと片付けて、司波兄妹は四葉家の一員として魔法師の世界で認知されることになります。本編は特に深雪の心的葛藤がわちゃわちゃしていて面白いです。

妨害工作のところはバトルシーンもありますが、敵側の戦力があまりに貧弱貧弱ゥ、で話にならない。達也の方はあまりおおっぴらにできない必殺技を封印して戦わないといけないので、面倒な戦いになってしまいます。後先考えずに勝てばいいのなら相手を全滅させれば一瞬で終わる話なんですが、相手は身内だし、そのような能力者と戦っていることを知らないでケンカを売ってくるわけですから面倒すぎます。

この大きすぎる能力はいろんな意味で問題になっていて、

大きすぎる力は世界の安定を損なう。
(16巻、p.77)

一強の世界よりは複数でバランスを取った状態の方が安定するというのは一理あると思います。特に、一強の場合はその支配者が破綻したら世界全体が混乱しますから致命的という論理もあります。ただ、本当に一強は安定を損なうのかというと、そこは微妙な話かもしれません。未だ人類は本当の一強の時代を経験していないので、案外安定する可能性はあるでしょう。日本という狭い範囲でいえば、江戸時代は徳川一強と考えてよいと思いますが、日本は安定してなかったでしょうか。じゃあ安定していたかといわれると、そうでもないような気もしますが。あるいは、徳川の中でも勢力争いがあったりとか、そういう所でのバランスがとれていたのかもしれません。

魔法の使い方に関しては、執事の葉山のこの言葉がいい。

ただ私は自分の能力を自分の選んだ仕事に使っているだけでございますよ
(16巻、p226)

葉山は登場人物紹介のところに「真夜に仕える老齢の執事」とただ1行だけしか書いてありません。挿絵にも出てこないから顔も分からない状態です。謎の執事です。このセリフはコーヒーを入れるときに魔法を使ってうまく入れたという説明です。能力は使わないともったいないですよね。

ということで、今日の一言は、

恋は素直になった方が負け
(16巻、p.245)

これ、個人的には聞いたことがないのですが。しかも、本編では素直になった方が例外的に勝つ話になっているし。


魔法科高校の劣等生 (16) 四葉継承編
佐島勤
石田可奈 イラスト
電撃文庫
ISBN: 978-4048651165

魔法科高校の劣等生 古都内乱編

今日は魔法科高校の劣等生「古都内乱編」、小ネタ的な名言はいくつか紹介しましたが、ストーリーに関しては触れていなかったので、そちらを中心に少し書いておきます。

まずこの編、ストーリーを超要約すると、周公瑾という敵を片付ける話です。周公瑾は鬼門遁甲という逃げ技を持っているため、なかなか片付けることができません。この技の論理的詳細はストーリーからはよく分からない(分からないように書かれている)のですが、ザックリいえば感覚を改変して錯覚させる系の技のようです。

季節的には論文コンペと重なっています。前回の論文コンペは発表の途中で乱入事件が発生して市街戦になってしまいましたから、結果が一体どうなったのか謎でしたが、今回は前回のような襲撃があると想定して警備を厳重にするという前提で話が進んで行きます。

本編を支えているテーマは「伝統派」というグループを中心とした思想です。この流派、設定上は古式魔法師の一大派閥ということになっていますが、これが科学的な技術を融合して魔法を使う現代魔法のグループと対立関係、という構図になります。

この話に限らず、一般的に、対立する集団と集団の争いというのは、どんなストーリーでも基本中の基本になる構造であり、特に新派と旧派というのはありがちなパターンでしょう。そして、各派閥はさらに細分化されたグループとなり、同じ派閥の中でも対立関係が生まれてフラクタルのような構造を持つことになります。

彼らは伝統派と名乗っていますが、本物の伝統を継承する術者から見れば、『異端派』と言うべきです。
(14巻、p.166)

本編では古術魔法を使うグループの中にも派閥があって、互いに反発するわけです。対立といってもいきなり戦闘を始めるようなものではないのですが、伝統と呼べるような歴史があればあるほど、いろいろドロドロとした確執があるのは確かです。周公瑾は主流の魔法師の対抗勢力であるという共通点を利用して伝統派の協力を得ようとしますが、もともと対立している構造の中に割り込んできますから、ちょっとしたトリガーでバトルは勃発します。

本編は九島光宣が高レベル魔法師として登場しますが、近接した遺伝子の組み合わせで高い魔法力をgetすると同時に副作用として欠陥を持ち合わせる、というルールも一般的によく見られるものです。

魔法ではありませんが、高い能力の代償として欠陥を抱える、という定番のパターンはマンガ「地球へ」でも見られます。「地球へ」は超能力を持っているミュウという人類が代償としていろいろ欠陥を持ち合わせる役でした。RPGでいえば、スタート時の能力の合計が決まっていて、特定の能力に値を集中させると他の能力が低下してしまうわけで、そのようなイメージで説明ができる現象です。

光宣の場合、魔法力は最強だが体力がない、というキャラになっています。体力といっても、ストーリーの中では、魔力が強すぎてそれを維持するだけのフィジカルがない、というような理屈になっています。


魔法科高校の劣等生 (14) 古都内乱編 (上)
電撃文庫
佐島勤
石田可奈 イラスト
ISBN: 978-4048668606

魔法科高校の劣等生 (15) 古都内乱編 (下)
ISBN: 978-4048691673

雑記

何か評すると宣言しながら書いていないのが蓄積しまくっていますが、今日もアレコレ書くパワーがないので雑記です。ということで、今日の一言。魔法科高校の劣等生、師族会議編(中)、18巻から。

既に起こってしまったことをあれこれ悩んでも、詮無いことかと存じます。
(p.72)

 反省は重要なんですけど、後悔はだいたい役に立たないですね。しかし実際は反省ではなく後悔することの方が多いようです。後悔後を絶たず。

雑記

今日もちょっと修羅場なので書評はパスさせていただきます。これから大修羅場が来るような気がしてなりません。ペンギンハイウェイも途中しか読んでないし、大変です。

魔法科高校の劣等生、師族会議編から、今日の一言(笑)

危険な状態が続くと、人間はそれに慣れてしまうものだ。
(19巻、p.309)

まさにその状態のような気がしてきました。

雑記

ちょっとここのところ修羅場なので、このブログを書くのが結構辛いんですけど、400日以上続いているようなので、これをリセットするのが勿体無いというくだらない理由で止められない状況です。こういうくだらない理由が結構モチベーション高いんですよね。

毎日書くブログが5つと twitter、少し減らせばいいだけの話なのですが。ちなみに、今日は魔法科高校の劣等生、20巻を読んでいます。