今日は「殺」という本を少し読んでみました。剣に関する逸話の短編が10編掲載されています。30年前に一度読んでいるような気がするのですが、全然覚えていません。
1編目の「殺」では、穂積孫八という剣の達人がひょんなことで世話になった盗賊の親分に刀を欲しいとねだられます。この刀、孫八が逐電するときに祖母にもらった名刀で、普通なら断るところなのですが、
これは売物ではないので、金銀に換えることはできないが、余人とはちがい、いままでご厄介になったあなた様ですから、それをお望みなら代りの刀を一口頂戴したい
(p.21)
とあっさり承諾するあたりは、武士道のような感覚を垣間見るようで面白いです。
殺
綱淵 謙錠 著
文春文庫
ISBN: 978-4167157050