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プレジデントFamily 2017年04月号(2017春号:わが子の受験大激変! )

主に小学生のお子様のいる家庭をターゲットにした雑誌です。昔は月刊でしたが、最近は季刊になってしまいました、少子化の影響で部数が伸びないのかな。この本は、たまに東大生特集で小学生時代のアンケートを実施するので、その時だけ買っていたのですが、この号は面白そうな記事が3つあったので買ってしまいました。

1つ目は、「型破りの個性が育った学校選び」です。この記事には3人の凄い人が紹介されています。

まず、牧浦土雅さん(23)

ルワンダで農業事業、タイで医療事業。現在はフィリピンを拠点に「Quipper」という教育事業に取り組んでいる。
(p.26)

小学校が学習院、中学は公立だがその後イギリスに留学して大学は中退という学歴なんですけど、中退といえばホリエモンもそうですね。中退の理由は?

中退の方がカッコいいでしょ? だって能力があれば、学歴なんて必要ないですから。知識を身に付けるだけだったら、家庭教師やオンライン講座で十分です。
(p.27)

確かアハ体験の茂木先生が、インターネットがあれば大学は必要ないという話をしているけど、実力があるだけでなくアピールできる人だからこその選択肢ですね。

次のスゴい人は、

現在、プロのバレエダンサーとして世界中を飛び回りながら、オンラインのハーバード大学リベラルアーツ学部で学ぶ脇田紗也加さん(21歳)。
(p.28)

小学校はインターナショナルスクールだったが、小5で公立小学校に転校してカルチャーショックを受けたそうです。

作文では習っていない漢字を使うと、ペケ。
(p.28)

日本の小学校ってまだこういう教育してるのですかね。こういう育て方をすると日本人になるのかな。まあそれはおいといて、その後、カナダに留学。高校でベルギーに留学。16歳で東京インターハイスクール、その後ハーバード大学リベラルアーツ学部に入学しています。オンラインで学位が取れるそうですが、そういう話と比べると、やはり日本ってIT後進国なんですかね。最高レベルのインフラや通信速度があっても、中身が問題。

しかし何でバレエなのに大学かというと、

勉強を続けることがバレエの表現を豊かにしてくれると信じていました。
(p.29)

これが志ということなんでしょうか。

3人目は角南萌さん、プログラマーさんです。アメリカのボーディングスクールに留学。現在12年生(高3)。

昨年は「女性文学」の授業でロールモデルが少ない女性プログラマーが世界をいかに切り開いてきたのかを考えたり、「仏教」の授業を通じてITで本当に人を幸せにするためのヒントを探りました。
(p.31)

発想が面白いですよね、私も最近、ウソをつくAIはどうすれば作れるのか考えたりしてますけど、だって人間に近付こうとしたらウソくらいつけないとダメだからね(笑)。プログラミングと宗教というと禅が好きなプログラマーは多いみたいだけど、プログラムが悟ったら世界は何か変わるのだろうか、みたいな所まで考えているのかな。

2つ目の記事は「いまどき高校生の超充実ライフ」。時間がない【謎】なので端折って見出しを紹介すると、アプリ甲子園2016優勝(1日7時間、アプリ開発に熱中)、高校生アーティスト(独自のペン画が話題! 個展も開催)、模擬国連世界大会出場(教授、企業トップにも物おじせず会いに行く)、てな感じです。

3つ目の記事は、第2特集「未来を変える天才・奇才大集合」 

いろんな人が出てきます。トップは「見てる、知ってる、考えてる」の著者。中島芭旺さん。11歳です。有名ですよね。

幼児期から『辞書を読んで』とせがむような子で、
(p.78)

何かズレているような気がしないでもないが、子供って辞書は割と好きなのかも。

他にも小2で数検準1級合格とか、2歳で特許取った人とか、4歳で個展を開いたとか、とんでもなさすぎる人達がわんさか出てくるのです。ITによって技術が超高速で進化しているらしいけど、もしかして人類も急速に進化していたりするのかもしれません。



プレジデントFamily(ファミリー)2017年04月号(2017春号:わが子の受験大激変! )
プレジデント社 発行

東大2017 とんがる東大 (現役東大生がつくる東大受験本)

先日、Yahoo!知恵袋の話を書いたけど、この本も回答作成用に買いました。ていうか実はムツゴロウさんのインタビュー記事が出ているから買ったのだけど。この本は毎年出ているので、もうすぐ2018年版が出るのかもしれないから、今のうちに書いておきます。

そのインタビュー記事から。

駒場の2年間では生物学の基礎を学び、命の秘密を見たように思いました。
(p.271)

当時と今ではちょっとカリキュラムとか違うらしい。最近、推薦入学を始めて話題になっていたりするが、東大の入試問題は考えないと解けない問題が出るというのが定説です。自分で考えて解ける力がある人が勝てるわけ。知恵袋では「どの参考書をやればいいですか」みたいな質問がよくあるけど、大学によってこれかな、という参考書があって、どの大学か指定してくれないと回答できないんですよね。まあだいたい学力が想像できればできないこともないけど。

これが、東大の場合は参考書を示す必要がないのです。学力は関係なくて、「自分で考えろ」という回答を書けばいいから。東大はまさにその自分で考えるという力を高めることが一番重要。自分で考えて参考書を選ぶところから勉強なんです。だからこの回答なんですね。質問している人で、そこが分かっている人が何割いるかな。

しかし推薦入試を始めるとか聞くと、東大生ってその考える能力はどの程度あるのかな、とか思ったりするけど。

私は世界中の大学を回って学生と話しましたが、東大生のように自分でよく考えて学んでいた学生はいませんでしたね。
(p.274)

あまり心配いらないってことかな。TVに出てくる東大生とか見てると、大丈夫なのか東大生、みたいな超絶危機感もあるのだけど、ヒトゴトだしどうでもいいか。

この本には必勝勉強法とか、落ちた人の体験記とか、参考になりそうな記事がたくさんあるけど、例えばアンケート。合格に必要なものというのがあって、東大生にアンケートをとっています。

実力以外で東大合格に必要なものを聞くと「周りの環境」が54.5%で最多、「運」が52.5%と続いた。
(p.28)

東大生の半分はで合格していた! 驚愕の事実が(笑)

他にも東大まんがくらぶの描いているマンガに出てくる、大手企業全落ちした保坂くんも気になるけど、この本の最後に出てくる2015年度学部・大学院別就職先データというのも実に興味深い。ちゃんと学部別、企業別にどこに何人、というレベルで紹介しています。法学部から富士通みたいな異種産業(でもないのかな?)に就職している人とかいるし、文学部から漫画家になったり農学部から在宅ライターになるというのはどういう人なんだろうと想像しても微妙にイメージが出てこない。文学部から虹の邑ポパイくん、なんての見るとついググってしまうのです。



東大2017 とんがる東大 (現役東大生がつくる東大受験本)
東京大学出版会
ISBN: 978-4130013000

トンパ文字―生きているもう1つの象形文字

絵文字ってあるでしょ、元はパソコン通信のような世界で、文字を使って顔を作っていました。日本だと (^^) というのが有名かな。欧米は :-) みたいなの。携帯の時代になって、本当に絵の文字が出てきた。絵の文字というよりも文字サイズの絵だね。ITが進化して、字は絵になった。

では昔はどうなの、というと何千年とか前だと象形文字の世界で、エジプトのヒエログリフとか有名ですよね。こういうのを書くのは大変なので最適化された成れの果てが今使われている諸言語です。アルファベットとか、日本語だと仮名とか漢字とか。絵は転じて記号になりました。

ところが今も使われている象形文字があります。雲南省北部にのナシ族の使うトンパ文字です。これは日常的に使われているわけではないのですが、この本の写真を見ると看板などにも使われているようですけど、本来これはトンパと呼ばれる人だけが使う文字で、それ故トンパ文字といわれているそうです。本文ではこんな感じで紹介されています。

トンパとは、ナシ族の原始宗教であるトンパ教の祭司(または、伝教師)のことであり、「智者」を意味する。
(p.62)

日本でいえば、お坊さん、いや宮司さんかな。宗教的に偉い人のようです。具体的なお仕事は、

トンパは厄除け、お祓い、先祖を祭る祭典、死者を鎮める儀式など様々な宗教の儀式を行うが、加えて知識人として占い(占星術、紐占い、骨占いなど)や医療活動なども行う。
(p.63)

紐占いというのがちょっと気になるけど。こういう伝統文化は消滅の危機に…というのがどの世界でも常らしく、トンパの文化もピンチのようですね。

トンパの伝統を受け継ぐ若者は久しく現れない。
(p.80)

そのような文化に関する日本語で書かれた本が手に入るというのはびっくりです。実はこの本、本文は日本語だけでなく英語で併記されています。ときにはトンパ文字も出てきます。

本の前半、第1章がトンパ文字で書かれた物語の紹介、第2章が旅行記になっています。どちらもカラー写真がたくさん出てくるので見ていて楽しいです。そのような異次元世界の人達がどのような生活をしているのかというと、日本に似ているというから驚きです。雲南省のような遠く離れたところに日本に似た世界があるというのは興味津々です。一体どういう必然性があったのでしょう。

町を歩いていると、軒先にトウガラシや柿、カンピョウ、大根などを干している光景をよく見かける。日本の農家と同じ光景である。なかでも、私が一番驚いたのは、そばとうどんである。
(p.50)

そばやうどんの食べ方が日本と同じだというのです。村は高地にあって、わさびの話とか出てくるあたり、信州とかのイメージで何となく想像してしまいます。

p.81から p.171 まではトンパ文字の一覧で、辞書みたいなものですが、絵文字って辞書引くときに困りますよね。いや、手書き認識すれば大丈夫なのかな。どんな字なのか興味があれば、ググれば画像が見つかります。じっと見ていると何となく漢字のように見えてくるのも面白いです。



トンパ文字―生きているもう1つの象形文字
王 超鷹 著
マール社 発行
ISBN: 978-4837304142

偏差値29からの東大合格

いわゆる受験本、それも東大合格のノウハウ本。実は書店に行くと東大合格のために書かれた本がたくさん置いてるのでびっくりするはずです。新宿紀伊国屋書店の8階は参考書コーナーで、南側の窓際にいわゆる受験本が置いてあります。ここの書棚1つ分が全部東大受験本です。

東大を受験する人のための本が何十冊も出版されているということは、もしかして東大を狙っている受験生何十万人もいるのだろうか、と誤解してしまいそうです。売れるのだろうかと心配になりますよね。でも私みたいなのが買うから大丈夫なのでしょう。

私がこの種の本を買うのは理由がありまして、投稿ネタ用です。実はYahoo! 知恵袋というところで長年回答を投稿しているのですが、最近は大学受験カテゴリに居座っています。このカテゴリは簡単な質問がとても多いので、回答が簡単に書けて楽なのです。

例えばこんな質問がFAQです。FAQ どころか VFAQ です。very FAQ です。

偏差値40なんですが、今から死ぬ気で勉強したら東大に受かりますか?

こんな質問、誰でも速攻で「受かりません」と回答できるでしょう。小学生でも回答できます。だから何でわざわざこのような質問を投稿するのか分からない。ちなみに「受かります」というのも正解です。死ぬ気で勉強する人なんか今の日本には一人もいないからです。

さて、回答は簡単に書けますが、自分のルールが1つあります。他の人の意見を引用することです。他の人というのは著名人、オーソリティです。例えば茂木先生はこのように言ってる、だからイケるよ、あるいはだからダメだよ、みたいな文章にします。

何でそんな面倒なことをするか、ネットのような信頼度が低い場所に書いても信頼していいかどうか、見る方も判断に困るから、そのための材料を示すべきである。いや違います。ぶっちゃけそんな真摯な理由ではありません。茂木先生がこう言っている、と書いてあったら、反論は私ではなく茂木先生を相手にしなければならない。知恵袋にそんな面倒なことをする人は、あまりいないですね。つまり、面倒を回避する、それが目的なのです。

1度だけその引用に対して「○○って本当ですか」みたいな質問があったような気がします。確か、他の回答者から本当ですというコメントが付いていたような気がするけど、私は無視しました。本当かどうかは、私には関係ないからです。○○先生は○○と書いている、だから○○という結論になる、それだけ示せば後は当事者でやってくれというスタンスなんです。

そういう時に使うのが、この手の受験本です。本にこう書いてある、というのは説得力があります。それに、この手の本の著者って、東大卒が多いです。もちろん、この本の著者、杉山奈津子さんも東大卒です。東京大学薬学部を卒業しています。

この本には何かすごいことが書いてあるのか、というと、実は珍しい話は殆ど出てきません。むしろ普通の勉強法のオンパレードです。勉強法の見出しをいくつか紹介してみると、

1. まずは、いきなり「過去問」から!」(p.66)
4. 教科書は捨てて、問題集の解説を頼るべし」(p.74)
7. 間違いは、“貴重品”として大切に使う」(p.81)
15. 眠くなったら、即寝るべし」(p.100)

いつも知恵袋の回答に書いているようなことがたくさん出ています。受験本を何冊も読めば分かるのですが、実は大抵の本には同じようなことが書いてあります。つまり、殆どの裏技は、受験勉強的には常識的なことなんですよね。やれば受かる、やらないと落ちる、そういった当たり前の法則がたくさんあって、それが網羅されている感じです。

教科書やらないで問題集とか、普通じゃないだろ、とか思った人、ビリギャル読んでないでしょ。受験勉強は教科書じゃなくて問題ベースでやるというのは、この世界では常識なのです。そういう意味での普通の勉強法なので、ドラゴン桜的な勉強法をあまり知らない人なら、この本に書いてある勉強法はマジで解釈して大丈夫だと思います。

ちょっと面白いと思ったのは、

74. 試験1日目の解答を見てはいけない!」(p.224)

1日で試験が終わらないような大学を受ける人もそんなにいないと思いますけど、この理由が、

2日目の精神状態が、その結果によって揺らぐ場合があるからです。
(p.224)

なるほどと思いました。

もちろん、逆に、これは違うのではというのもあります。細かいところを書いてもアレなので今回は省略します。

ところで、この本は、何度か、この本自体が質問の対象になったことがあります。偏差値29から東大に合格するなんて本当なのか、という質問です。常識的に考えて、

ちなみに、東大の偏差値はだいたい70くらいです。
(p.2)

というような大学に偏差値29からスタートして合格するわけありません。でも本当です。ただし、この数字にはトリックがあります。これは数学1科目だけの偏差値なのです、それもかなり苦手科目。噂ではさらに東大模試の偏差値らしいですが、そこはこの本だけでは分かりませんでした。ただし杉山さんは1浪で理2に受かっているから、1年余りで数学は合格点が取れるレベルになったことになります。これは珍しいケースだと思います。

偏差値29から合格なんてタイトルには、全科目の偏差値が29でも入れると誤解することを期待しているようにも見えるので、個人的には下手なタイトルだと思うのですけどね。詐欺師がよく使う手法です。数学の偏差値29から理2に合格、みたいなタイトルの方が「をっ」と思うのですが。しかしこの本を買う人の99%は、そんなことはどうでもいいのでしょう。

この本で一番面白いと思ったのは、本文じゃなくてあとがきのところです。

東大生が、なぜ就職などで優遇されると思う?
(p.254)

東大薬学部の教授が杉山さんに質問したそうです。この答が、

なぜかというと、あの入試を解いて合格して入ったからだ。それだけだ。入試問題を解いて合格するために、頭を使って頑張った。努力した。東大生は、努力できると思われているからこそ、評価されるんだ
(p.255)

>なるほどという感じもしますが、本当に頑張ったのか、努力したのか、そこは個人的には微妙な感じもするのですが、それはどうあれ「努力できると思われている」というところは本当なのかもしれません。知恵袋を見ていると、努力ではなくて地頭だという人が多いような気もするのですが。

この本は最近マンガも出ています。杉山さんがご自身で描いてます。絵が気にならないのならそちらを読んだ方がいいかもしれません。

偏差値29からの東大合格
杉山 奈津子 著
中央公論新社
ISBN: 978-4120042263


コミック版 偏差値29からの東大合格超勉強法
杉山 奈津子 著
主婦と生活社
ISBN: 978-4391149289

ブラック企業に勤めております

中途採用で入った会社がブラックだった。ということになるとシリアスに超暗い話になるか、ドタバタコメディになるか、どちらかしかなさそうだけど、この話は後者の軽い系ですね。

普通の企業とブラックって何が違うかというと、一つは「できることからやろう」が普通の企業で、ブラックは「できないこともやれ」みたいな。できないんだけど。しかも、できないヤツが集まってくる、それがブラック。

この本はブラックあるあるかなと思ったのだけど、Amazon の書評とか見るとどうも厳しい意見が多いような気がする。個人的には気軽に楽しく面白く読めたような気がしたけど、一体この話のどこが気に入らないのだろうか、よく考えてみると、もしかしたら本物のブラックを知っている人にとっては「こんなのブラックじゃない」ということかな。フィクションなんだからリアルを追求しても仕方ないような気がするけど、本物はこんなものではないというのなら分かるなぁ。

ただ、おそらくブラックにも高いレベルのブラックと低レベルのブラックがあって、レベル高いのって今更会社名出す気にならないから出さないけど東大卒の女子社員が自殺して話題になったアレ。そういう世界は私はよく知らんのでパス。私の知ってるブラックは逆のベクトル。

給料安いし、朝礼長いし、仕事量は多い! その上、パワハラモラハラのオンパレード! 最低だよ! だから、他の新人は辞めちゃったんだ。
(p.161)

啖呵を切っているのは柚木くん。ブラックにいそうな典型的なダメ社員。コンビニ人間にも社会的不適合者が出てきたけど、柚木くんは約束は守らないどころかウソをつくし遅刻するしお客様の訪問はバッくれるし社印を偽造する、しかもそれが先のような理由があるから正当だと主張する。最後はもっとスゴいことになるけどネタばれになるから書かない。

リアルでそんな社員っているのですか、と思う人がいるかもしれない。あなたの人生、幸せだったでしょ。まあ、いますよ普通に。ていうか、最後は会社の金持って逃げるとか、そのあたりまではリアルに知ってる。「あいつ金持って逃げたよ」と言われたときは、ふーん、としか言えなかったけど。そういうの、見た目は分からないですよね、逃げるまで。

私はウソが絶対につけない性格なのでウソがつける人というのは尊敬しているのだけど、仕事してないのならしてないと言えばいいのに、したことにしてややこしくなる程度なら、ブラックじゃなくても普通にありそうな気もするなぁ。いつの間にかできてますみたいなウルトラCがあればいいのだけど、大抵は深みにハマりまくってウルトラQのオープニングのようなぐるぐるした世界になってしまう。

まあ気楽にポテチでも食べながら読めばいいんじゃないの、という感じ。ポテチ業界がピンチらしいけど。結論的には、個人的には、不可でもカフカでもないです。

要はる 著
集英社オレンジ文庫
ISBN 978-4-08-680108-9

その女アレックス

ピエールっていうと「どこでもいっしょ」をふと思い出してしまうのだが、というのはおいといて、これは推理小説ですね。ミステリですね。だから必然、推理しながら読むわけですが、えっ、そうなの、みたいな展開がてんこもりで訳が分からないまま翻弄されて、最後に「そうきたか」というのが素晴らしい。

推理小説だけに、今回はネタバレになりそうなポイントは全部避けますけど、まずタイトルにも出てくるアレックスですね。これは紹介しなければ。ヒロインです。

アレックスはどんなファッションでもだいたい着こなしてしまう。それはアレックスが美人だからだ。
(p.11)

このストーリーはこの美人のアレックスが誘拐されるところから始まります。探偵役はカミーユ。警部だけど。この小説のキーマン、主人公ですね。

カミーユ・ヴェルーヴェンはめったにどならない。いつも毅然としている。背が低く、痩せていて、しかも禿げているが、肝が据わった男だということは誰もが知っている。
(p.23)

痩せてなかったらポワロって感じかな。でもポワロほど明るい感じはしません。基本、暗い。なぜなら、カミーユは懐妊中の妻が誘拐されて殺されたという暗い過去があることになっていますから、そりゃ暗くなりますね。誘拐事件は死んでもイヤと拒絶するのに、なし崩し的に捜査することになる。署内の様子も実に興味深い。パリも日本のドラマの警察も同じドロドロを感じさせるややこしい職場のようで、嫌いな奴が結構出てくる。登場人物も好感度が高いキャラはあまりいなくて、妙にヘンなのが出てくる。これは途中に出てくる夫人なのですが、

それに、あの魔女のような顔も慣れてしまえばなんとか我慢できる。要するに忘れることだ。夫人自身も忘れることにしたに違いない。欠点とはそういうものかもしれない。ある時点から本人は忘れ、気づくのは他人だけになる。
(p.240)

そういうものかと言われたら、まあそうかな。この小説もクライマックスというか読みどころはやはり、尋問ですね。トークバトル。容疑者をネチネチと攻撃して自白させようとする、誘導尋問ですな。

「証拠があるのかと訊くのは……」とカミーユは続けた。「内容そのものを否定できず、あとは逃げ道を探すしかないときですよ」
(p.362)

論理的にはほぼ無茶苦茶ですけどね、証拠があるかなんていつでも気軽にオーダーしてしまうFAQだし、まあでもねちっこいです。容疑者の心理描写もハッとさせてくれます。

個人的に気になったのが、アレックスが読んでいた本で、

危険な関係』、『谷間の百合』、『赤と黒』、『グレート・ギャツビー』、『異邦人』…
(p.294)

どういう選択なのかな、異邦人で死ぬのはママンのはずだけど、そして、この小説は結構死にます。連続殺人事件。ちょっとキツい描写も出てくるので、そういうのはイヤなら避けましょう。好きなら、暗い部屋で一人でこっそり一気に読んでください。

その女アレックス
ピエール・ルメートル著、橘明美訳
文春文庫
ISBN978-4-16-790196-7

もの忘れの脳科学

もの忘れはなぜ起こるのか。現時点の認知心理学では主流になっているワーキングメモリという考え方を使って、もの忘れについて説明した本。全く何も知らないとちょっと難しいかもしれないが、心理学を少しかじった経験がある人なら、満員電車の中で暇つぶしに読めるレベル。

実はこの本、2つ目的があって読んだ。1つ目は、記憶は寝ている間に定着する、という説。これに関しては何も書いてなかった。

もう1つは、短期記憶の時間。とある本に、短期記憶は数時間とか1日程度で消える、みたいなことが書いてあったのだ。そんなに長いわけないだろ、と思ったのである。私が心理学の講義で聞いたときは、たかだか数秒とか、そういうものだったから。この本、最初の方でまず長期記憶について説明した後、次のように書いてあった。

一方、短期記憶は短期間の一時的な情報保持の貯蔵庫であり、保持できる期間には限界がある。そのため、繰り返しその内容を反復する「リハーサル」が行われない場合には、ほぼ20秒間にその90%が忘却されると考えられている。
(p.26)

これは私の記憶に近い内容である。もっとも、これは二重記憶モデルにおける短期記憶の説明で、その後出てくるパドリーのモデルエピソードバッファのようなものが出てくると、どこでどれだけ記憶が維持されるのか、この本だけではハッキリしない。ただ、流れとして数時間というのは有り得ないような気もするが。

この本の前半には、リーディングスパンテストと、リスニングスパンテストという、2種類の実験が出てくる。これは文章をどんどん読ませて、あるいは聞かせて、その中に出てくる単語を答えさせるというものだ。いくつか文を読んでいるうちに、最初に読んだ文の内容を忘れてしまう、というのは読書あるあるですよね。

テレビのクイズのようなテンパった状況だと、2番目にもらったヒントに飛びついた人が最初のヒントを無視して回答することがある。「ヒント1、植物です」「ひまわり?」「違います。ではヒント2、桃色です」「フラミンゴ」みたいな。うっかりというよりも、頭に何も残ってないのではないかと思うけど、ここで最初にもらったヒントがどこかに行ってしまう理由が、ワーキングメモリの容量は少ないので、最初に入れた情報がどんどん上書きされてしまう、というような話なのである。

この本で面白いと思ったのが、読解力。読解力というのはもちろん、本を読んで書いてあることを…というような話はおいといて、

大学生50名のスパン得点と読解力テストの成績とを比較したところ、両者の得点には統計的に有意な相関が認められた。
(p.61)

というから、ワーキングメモリが大きい人の方がいろいろ覚えてられるから読解力も高いのではないか、と思うでしょ?

これが違うのだ。リーディングスパンテストの後、「ところでこの単語はテストの文章にありましたか」といった質問をすると、

実際にあった文や単語を「あった」と正しく答える割合(再認成績)は、低得点群の人たちが高得点群よりも高かった。
(p.65)

というのである。つまり、暗記という点でいえば、リーディングスパンテストの成績が低い人、つまり、読解力がない人の方が、暗記力が優れていたのである。これは次のような解釈になっている。

しかし、低得点群は、内容の理解とは特にかかわりない文章や単語など、多くの内容をそのまま記憶していたようだ。多くの内容を記憶してしまうと、覚えることにワーキングメモリの / 容量を消費することになり、そのため、内容の理解が不十分になってしまうのだろう。
(pp.65-66)

つまり、覚えなくてもいいようなことまで覚えるから理解できなくなる、というのだ。必要なことだけ覚えた方がメモリは少なくて済む。同じメモリ量なら、重要なことだけ覚えた方が読解には有利だ。言われてみたらそんな気がしてくるでしょ。

同様に、老人になるともの忘れする、あるいは覚えられなくなる。これは記憶力が弱くなるためというのが定説なのだが、この本ではもう一歩踏み込んで、

高齢者のワーキングメモリの脆弱化が、もの忘れの頻度を高くしている
(p.119)

と分析している。例えば、最初に覚えたことがワーキングメモリに入ったら、次に覚えるときにこれを上書きしないといけない。ところが、老人の場合、最初に覚えたキーワードがなかなか抜けてくれずに、次に覚えるべきことが頭に入らないというのである。忘れようにも覚えていない!

長くなったので端折るが、後半にはワーキングメモリを強化するアイデアとか、ポジティブな言葉の方がワーキングメモリを活性化するとか、面白い話がいくつも出てくる。ポジティブシンキングという言葉も既にありふれた感じだが、まさかそれが記憶に影響するとは思わなかった。奥が深い。

もの忘れの脳科学
苧阪 満里子 著
講談社ブルーバックス
ISBN: 978-4062578745