Phinlodaのいつか読んだ本

実際に読んでみた本の寸評・奇評(笑)

勉強できる子は○○がすごい

今日の本は「勉強できる子は〇〇がすごい」。

メタ認知の話です。要するに「勉強にはメタ認知が必要」という内容。ところでメタ認知とは何ぞや。

メタ認知とは、自分の認知について客観的に俯瞰し、現状を評価し、さらには必要に応じて修正するなど、認知活動をモニターしたりコントロールしたりすることを指す。
(p.18)

自分を客観的に評価し、その結果に対応してレベルアップしていけばいい。例えば何かうまくいかない時にどうすればいいかというと、

自分をしっかり振り返り、自分の現状に問題があり、改善する必要があるということに気づくこと
(p.28)

個人的には割と当たり前のことのような気もするのですが、これができない人がいる、という話もそれなりに心当たりがあったりします。例えば Yahoo!知恵袋で FAQ なのが、勉強しているけど身に付いた気がしない、というもの。何で身に付いたかどうかを確かめようとしないのか、と思うわけです。

メタ認知に重要なのは、自分を客観視することですが、そのためには「他人の気持ちになる」というスキルが必要になります。この「他人」として「自分」を割り当てるとメタ認知ができる、という仕組みです。

読書が知識を得たり読解力を向上させることは常識的に知られていますが、

読書を通して、作者や登場人物のありとあらゆる視点に触れることができる。それによって自分の視点を相対化することができる。
(p.34)

読書がメタ認知の能力向上に役立つという指摘ですね、言われてみれば確かにそうだと思います。感情移入スキルですね。

勉強ができない人がメタ認知できない件について、ダニング=クルーガー効果の話題が出てきます。

ダニングとクルーガーは、能力の低い人ほど自分の能力を著しく過大評価する傾向があると結論づけた。さらには、能力の低い人は、ただ何かをする能力が低いというだけでなく、自分の能力の低さに気づく能力も低いとした。
(p.55)

なるほど、つまり、君子泰而不驕。小人驕而不泰。論語に出てくる言葉です。

君子(能力の高い人)は他人を見下さないが、小人(能力の低い人)は他人を見下す、つまりレベルの低い人ほど自分を過大評価するという話になりそうです。ダニングとクルーガー以前に、孔子が同じことを指摘していたわけです。

%が分からない大学生の話題も出てきます。

分数の計算ができない大学生とか、九九が言えない大学生、という話題は有名ですが、最近は「%が分からない」ということが問題になっていたのですね。

さまざまな大学の教員から「比と割合の問題で信じられない間違いをする学生がいて困る」というような声を聞くようになった
(p.86)

これはよく分かります。例えば、次はYahoo!知恵袋の大学受験カテゴリに投稿された質問の一部です。

「ある授業が16回分あるとしてその6割って何回分ですか」
「350の6割を教えてください」
「20問中6割正解で合格だと、何問解ければいいのでしょうか」
「80点満点で69点は合格80%に入っていますか」
「100点満点で200点換算する時、何点取れば150点なんですか」
「334日の8割と言うと何日ですか」
「700点満点で7割って何点ですか」
「300点の77%は何点になりますか」

これが中学受験ではなくて、大学受験、大学を受験する人の質問なのです。最初は小学生がカテゴリを間違えて投稿しているのかと思ったのですが、大学受験生のガチの質問なのですね。

ちなみに、高校数学に関しては、社会に出たら使わない、必要ないという意見も定番なのですが、今日の一言はこれで。

理解しようとすることで論理的思考能力が鍛えられるところに算数・数学を学ぶ意味がある
(p.87)

江川達也さんの「東京大学物語」では、矢野先生が「本当に人生に役立つ学問は、数学だけである」と仰ってました。

(つづく)


勉強できる子は○○がすごい
榎本博明 著
日経プレミア
ISBN: 978-4296114320