Phinlodaのいつか読んだ本

実際に読んでみた本の寸評・奇評(笑)

数学的思考トレーニング 問題解決力が飛躍的にアップする48問

今日の本は「数学的思考トレーニング 問題解決力が飛躍的にアップする48問」。

一通り読んでみて最も疑問に感じたのは、「これ、数学的思考なの?」という点です。

カレーライスを分解してください。
(p.99)

本の解答をザックリ紹介すると、例として出ているのはスパイスとかたまねぎとか水とか、成分を並べているだけです。それって「分解」なのかな、調理法とか考えなくていいのかな、という点でも疑問がありますが、もっと気になるのが、これが数学的なのかという所です。

「休日」を定義してください、という問題もあるのですが、

もちろんここに絶対の正解はありません。100人いれば100 通りの顔があるように、100通りの答えがあるでしょう。
(p.58)

本当でしょうか?

「幸せ」を定義しろというような問題なら100通りあってもおかしくありません。しかし、休日という概念はかなりの共通認識があるはずです。同じ答を思いつく人が多数いてるのではないでしょうか。

もし私が著者なら、実際に100人調査してみて、全員違った回答でなければ「100通りの答えがあるでしょう」とは書けません。そうでないと数学的思考とは言えないような気がするからです。適当に想像して解答とするのであれば、それは数学ではなく芸術的思考のような感じです。だから著者も実際に調査して100人が違っていたというデータを持っているのかもしれません。それならそれでそう書いて欲しいです。

とはいっても、数学的という枠を無視すれば、この本に出てくる発想のパターンは、ありふれているとはいえ、確かにトレーニングにはなると思います。数学的思考ではなくても、ブレーンストーミングに慣れていない人にとっては、効果的なヒントになるかもしれません。

最も違和感があった問題は、これです。

AIにあなたの信用スコアを判定してもらったところ、「55」という結果が出ました。
 さて、一言お願いします。で、あなたは何をしますか?
(p.125)

55と言われてもなぁ…。私なら、スコアを得た時には、まずスコアの計算式、根拠を求めると思います。それこそが数学的思考ではないでしょうか。しかし著者の意見はこうです。

私ならまずこのスコアに最高値(最低値)があるのかどうかを確認します。
(p.126)

最高値や最低値そのものを確認するのではなく、最高値が「ある」のかどうかを確認するというのは面白いと思いました。ただ、なぜそれを確認するかという理由がコレなのですが。

まさに比較する対象を定めることに他なりません。
(p.126)

ちょっと何言ってるか分かりません。

最後に次の問題を紹介して今回は終わりにします。

2020年8月某日、新型コロナウイルス感染症の感染者数が前日比150%、つまり1.5倍となった。あなたはこの結果をどう評価しますか?
(p.133)

今日の感染者数が1.5人は有り得ないので、前日が1人でないことは明白ですね。3人もなさそうです。

てな話ではなくて、ポイントは「新規感染者数」ではなく「感染者数」というところでしょう。

例えば前日の感染者数が1万人なら、今日の新規感染者数は少なくとも5000人ということになります。前日の新規感染者数が分かりませんが、感染したら治癒まで10日かかると想定して、感染した人が1日平均1000人程度が10日の合計で1万人と想像すれば、激増という感じです。

感染者数を前日と比較することにどれほどの意味があるのでしょう。
(p.133)

数学的には差分ですね。増加しつつあるのか、減少しつつあるのか。治癒した人数も分かれば新規感染者数が分かります。

ていうか、何となく話がズレているような気がするのですが、著者は本当に「感染者数」の話をしたいのでしょうか。日本でニュースになっているのは殆どが「新規感染者数」です。現時点の感染者数は殆どニュースには出てきません。

前日との比較で一喜一憂するのではなく、長期的視点での比較が妥当ではないでしょうか。
(p.134)

それはそうかもしれませんが、個人的には新規感染者が前日の感染者数の半数に相当するというのは、何か短期的な異常が発生していると考えてもいいと思います。新規感染者数が前日の1.5倍や2倍なら一喜一憂する必要はありませんが、5倍、10倍となるとくると話が別です。


数学的思考トレーニング 問題解決力が飛躍的にアップする48問
深沢 真太郎 著
PHPビジネス新書
ISBN: 978-4569848358