Phinlodaのいつか読んだ本

実際に読んでみた本の寸評・奇評(笑)

イワン・イリッチの死

今日はトルストイさんの作品から「イワン・イリッチの死」を紹介します。

この本をなぜ読もうと思ったのか、何かきっかけがあったのですが忘れてしまいました。

どんな話なのか、要約しますと、イワン・イリッチという人が死ぬ話です。

…いやそりゃそうだろと言われそうなので、もう少し詳しく要約すると、この人が梯子から落ちる途中で脇腹をうって、それが原因でじわじわ死ぬのです。内臓をやられたのでしょう。イワンこっちゃない、てな話です【違】。

医学的な詳細は殆ど出てこないので死因はハッキリと分かりません。ストーリーの中心は、イワン・イリッチが死に対してアレコレ考える内容です。途中、今までの人生を振り返ったりしますが、

幼年時代から遠ざかって、現在に近づけば近づくほど、喜びはますますつまらない、疑わしいものになってきた。
(p.88)

人生の楽しかったイベントは歳を取るにつれて減っていった、ということですが、そのような人生を振り返るのは案外怖そうです。個人的に人生を振り返ってみると、一番楽しかったのはいつかというと、やはり若い頃の方が辛いことも楽しいことも多かったような気がします。中にはこれからという勇者もいるのでしょうか。

この作品、イワン・イリッチの体調が悪化して死ぬのではないかと考ええ始めた後の苦悩というかメンタルの描写がキツいです。

肉体上の苦しみよりさらに恐ろしいのは、精神上の苦しみであった。
(p.95)

死ぬのが怖いと思っているから苦しい、という単純な話なのですが、死が怖いというのは単に死ぬという経験がないので未知への恐怖で片付けていい話でしょうか。個人的には、死への恐怖というのは理屈ではなく宗教や信仰で解消するものだと思っていますが。

イワン・イリッチの死
トルストイ
米川 正夫 翻訳
岩波文庫
ISBN: 978-4003261934