今日は雑記が続きすぎているので、「小さな黒い箱」から一作紹介します。
11の短編が入っているのですが、今回紹介するのは「ジェイムス・P・クロウ」。ロボットが人間を支配している未来社会が舞台です。クロウは人間で、ちょっとしたチートを使って政治的なトップになることに成功します。そしてロボットを地球外に追い出して、人間による社会を取り戻すのですが、最後にロボットが質問してきたのが、
われわれが去ったあと、誰が政治を担当する? きみも自分の口から言ったじゃないか。ヒトには複雑な現代社会を管理する能力がない、と。
(p.387)
人間が生活するためのあらゆるコントロールをロボットが担当していたので、それを追放した後にどうするんだ、という話です。原始時代に帰るのか、何か新しい社会を目指すのか、それはこの作品には書いてありませんが、かなり困ったことになるのは想像できます。
今の世界でコンピュータが使えなくなった状況を想像してみてください。あるいは、Googleや YouTube だけでも構いません。twitter が1か月使えないと何が起こるでしょうか。知らないうちにインターネットは人間を支配しようとしているのかもしれません。
ちなみに、この作品は黒人差別をモチーフにしているそうです。
小さな黒い箱
ディック短篇傑作選
フィリップ・K・ディック 著
大森望 編集, 翻訳
浅倉久志 翻訳
早川書房
ISBN: 978-4150119676